全学労組の文科省交渉に出席。今年も、教員には労基法36条は適用除外されていないことについて質問。回答にキレる。

8月21日、ひさしぶりの外出。

永田町、参議院議員会館。全学労組の文科省交渉に出席。

文科省側は5名、全学労組は40名ほど。紹介議員の福島瑞穂さんは、昨年同様2時間以上もの間、その場に同席。問題の勘所をしっかりつかまえて整理、追及する。やはり只者ではない。

 

私は、全学労組の世話人ではないのだが、昨年も出席して労基法36条適用の問題について質問した。若い官僚が明確に答えられなかったので、今年もこの1点についてのみ質問するつもりで出かけた。

 

昨年のことについては、

「・・・・労基法32条は教員にも適用されているのだから、所定労働時間を超える時間外労働については労基法上の時間外労働時間と捉えるべきであるのに、改正給特法の「指針」は、限定4項目以外の超過勤務はないという立場から、「時間外在校等時間」という概念をつくり出した。この概念はかなり無理があるのではないか。給特法は労基法37条を適用除外しながら36条を除外していない。これは教員にも労基法上の時間外労働が存在するという証しであり、36協定は教員にも締結可能だと捉えられるが、こうした問題を文科省としてどう整理しているのか、明らかにしてほしいと追及。若い官僚は狼狽するだけでまともな回答はなかった。次回、再度回答を求めることになった。」

    (『現代思想』2023年4月号「給特法の「禅問答」に終止符を」拙稿から)

                                

今回はこの「次回」にあたる。

同様の質問をしたところ、大坪 彩子 初等中等教育局 初等中等企画課教育公務員係 専門職(写真右側)は、私の質問に対して狼狽することなく、

「教員の勤務は、勤務時間の内外を包括して評価しているため」つまり、教員の給与というのは、勤務時間内だけでなく、「外」も含めて評価され給与の4%が支給されているため、時間外手当は支給されないし、従って労基法36条も適用されないというのだ。カッと血がアタマに上った。

若い官僚が、給特法が50年抱え続けてきた宿痾を全く理解せずに、机上の古びた論理をかざすのにキレたのだ。

5分ほど(たぶんかなり早口で)その不勉強を逐一責め、出直しなさいと締めた。

 

 この回答は、72年の法制定当時に、超過勤務手当を支給せずに教職調整額としてまとめて4%で手を打つという、その根拠としてしばしば用いられたが、そのころの「内外」の「外」は、せいぜいが4%に充当する8時間を超える数時間程度のものでしかなかった。それに対し今はどうか。

 昨年からの教員勤務実態調査の速報値では、改正給特法が定めた時間外在校等時間45時間を小学校で64.5%、中学校で77.1%の教員が超えているという事実がある(現場にいた私の実感としては80年代初頭においてすでに「内外合わせて包括」などできる状況ではなくなってきていたと思われる。それほど教員の時間外勤務は増大し始めていた)。

「教員の働き方改革」の議論の出発点であるこうした状況を踏まえずに、いまだに「内外包括」論を持ち出すのは、行政マンとして現状認識があまりにずれすぎていて、こうした話し合いの場をナメているとしか思えない。40歳ほども年下の官僚を罵倒するのは心苦しいものがあるが、私も38年間、給特法の下、理不尽な勤務を長年続けてきたのだから、出直してこいくらいのことは言ってもバチは当たらないと思った。

 

 かつても今も、教員には他の労働者同様、週、あるいは1日の労働時間を定めた労基法の基幹条項である32条が適用されている。

 だから「内外を包括的に評価する」という表現は、たとえ法制定当時であっても、基本的に労基法の精神を逸脱した甚だしく乱暴な表現であったことは間違いない。

 さらに言えば、長らくの間、教員の超過勤務は限定4項目以外はなく、勤務時間を超えて行われた勤務については自主的自発的なものととして、労基法上の労働時間にはあたらないとされてきたが、今回の大坪専門職の「限定4項目以外の時間外在校等時間の中には自発的なものも含まれる」という発言にもあるように、さらにさいたま地裁判決が認定した原告の時間外の勤務についての労働時間該当性の認定も含めて、現在では限定4項目以外の時間外在校等時間が、必ずしも自主的自発的なものとばかりは言えないという捉え方が主流になっている。

 そうしたことから、大坪専門職の今に至っての発言は、時間外在校等時間が全て労働時間に該当するかは別としても、教員の働き方改革の観点から勤務時間規制を厳密に行い、教員の在校等時間の削減を進めようとする流れの中にあっては、議論を根底からひっくり返すことになりかねない。大坪専門職の捉え方は、現在の教員の働き方改革の流れに逆行するものであり、認められない。

 

 あと少し。

 教員には、原則的に超過勤務を命じないこととして、緊急やむを得ない場合に限る4項目のみを対象と定めた文部訓令によって、限定4項目以外の教員の時間外勤務は全て自主的自発的なものとされてきたが、80年代の将棋部の引率業務をめぐる愛知松陰高校事件判決や、さらには管理職に対し部活動顧問業務についての安全配慮義務を求めた大阪地裁の判決(2022年)は、原告の主張を全面的に認め、部活動指導業務も労働時間に該当すると認定している。自治体によっては、部活動顧問業務を校務分掌に位置付けているところもあり、特殊勤務手当や旅費、あるいは部活動手当支給の対象、さらには人事評価の対象としていることからすれば、限定4項目以外の部活動指導が労働時間に該当すると考えるのは見当違いとは言えない。

 教員にも労基法36条が適用除外とされていないことからすれば、こうした教職調整額支給の対象である限定4項目以外の時間外労働時間、とりわけ部活動業務については労基法36条を適用、36協定を締結すべきと考えるのが妥当であり、部活動に関わらず他の業務も校長の明示的黙示的命令がはたらいてる限りにおいて、労基法条の時間外労働と認めるべきである。

 

だいたい、50年以上もの間、教員だけが労基法36条から見放されてきたことが問題なのだ。

今に至る教員不足や採用試験の倍率低下など、教員という仕事に魅力がなくなったとされる状況は全てこの問題に収斂されている。

自民党は、教職調整額10%に引き上げ、時間外在校等時間は20時間程度になどと主張。つまりは給特法維持という方針だ。しかもこの案は財務省の前に通る可能性はかなり低い。

抜本的に教員政策を転じるならば、給特法撤廃しかない。

そうなった時、初めて教員の時間外勤務は緊張感をもって見直されるはず。