先程、参議院で変形労働時間制導入を含む改正給特法が、与党などの賛成多数で可決されたとのニュースをネットで見た。
web版時事通信は、夏休みに休日のまとめ取りができるようになるとの解説。
残業を減らす工夫をしていない、そして残業手当の支払いのない変形労働時間制は、実質的な勤務時間の延長と残業隠しになるのではないか。
昨日、学生たちに「変形労働時間制のレポート」をブログに載せていいかと訊いたところ、みなOKとのこと。
教員の働き方については、今年は福井テレビの『聖職のゆくえ』をみて討議するという授業をした。たった3週間ではあっても教育実習で教員の目から見た現場を知っている彼らは、それなりに教員の働き方に関して厳しい見方をしている。
その追加のレポートとして、自分で変形労働時間制について調べて、それについての考えを述べるという課題を出した。私が事前にいろいろと情報を与えるよりもサラで考えられていいのではないかということだ。
以下彼らのレポートからの主要な主張部分の抜粋したものを貼り付ける。学生に配ったプリントそのものである。
2019年11月5日提出(教職実践演習)
給特法改正案(教員変形労働時間制導入)に対する私の考え
*全文は掲載できないので、一部を赤田の判断で抜粋しています。
・教員に変形労働時間制を入れるのは、違うと思います。教員には繁忙期も閑散期もないと私は思います。なぜなら生徒という人を相手にしているからです。教員の日々は常に重労働であるために過労死やうつ病の人が現在でも増加しています。夏休みという長期休みがあるではないか、そういう人もいるかもしれません。しかし、夏休みはほんとうに長期休みにできていると思いますか? と皆に問いたいです。生徒のために部活動に時間を割く先生を自分が中学、高校生の時に何人も見ました。どんなに部活動の時間は減っても、これが現状です。/・・変形労働時間制を誤った認識をして導入している事業所も多いという記事を見ました。謝った認識とは、この制度を導入すれば時間を増やしても一定以上の残業代は出さなくてもよい、人件費削減だと思っていることです。苗そのような認識が生まれてしまうのか疑問です。( Y.S )
・教員の働き方改革として、(変形労働時間制が)改善策に出されているようですが、この制度を導入したからといって、教員の負担軽減や勤務時間の短縮になるわけではないと思います。また、週や月によって勤務時間が異なってしまうと、休めるときは休めますが、長時間にわたって仕事をするとなると心身に影響が出てしまうのではないかと思います。難しい課題ではあると思いますが、極端な勤務時間は良くないと思います。
( M )
・(変形労働時間制)は多くの記事でも書かれているように、残業時間を分かりにくくするためにしているように見える。そもそもだが、過労死ラインというもの自体の引き下げも検討されている中で、この法案はまやかしに過ぎない。・・・/自分はスーパーで働いているが、年末はおせちの準備もあり、年末商戦が行われるのが昨年は12月27日から31日まで5日間で44時間働いた。年末で込んでいるのもあり、疲労感は普段と比べて大変疲れた。その時は夜は酒を飲んで寝て明日に備える以外何もしなかったし、何もできなかった。これ以上に教員は働いていると思うと大変だと思う。倒れるのも無理はないと思う。それなのにもかかわらず、変形労働時間制をすることにより、それが皇帝化され、見かけ上も夏休みに休めるようになるから大丈夫でしょとなる。・・・/残業している時間を労働時間として肯定されたらどうなるのだろう。・・・/まず先の労働時間の改善に努めるべきではないだろうか。(すべてがEになる)
・一定期間を単位としてその期間中であれば1日8時間を超えても塹壕代を追加して支払わない。この説明を見ても給特法の改正案にはならないなと思いました。最後に支払わないとあるのに、どこに快晴の要素があるのかなと思ったとともに、ほんとうに改正する気がこの案を見て、あるのかなと思いました。繁忙期や閑散期に合わせて労働時間を変えることは意味が合えると思いますが、。残業代が出ないということについて変わらないのであれば、この制度には意味がないと思います。( C )
・変形労働時間制については疑問しか浮かびません。なぜそのような形になったのか正直よく分からないのが率直な感想です。一般的に考えてもともとの(残業?)時間を減らして教員の負担を減らすのが目的にもかかわらず、むしろ強制力を持って労働時間を増やすという決断に到った事実がよく理解できません。労働基準法という視点からもおかしいのは明白なはずですが。/私は来年から教員となります。正直不安な気持ちでしかありません。他の職種に比べ圧倒的に労働時間が長いという現状を受け入れることは難しいです。夢であた仕事に就職できるにもかかわらず、なぜこんな気持ちにならなければいけないのか不思議です。教員の働き方改革として出されたものが働き方をむしろ悪い方向に、教員を痛めつける方向へと舵を切り出したように感じます。/教員になりたいと強く思う子どもたちに胸を張って、教員という仕事はいい仕事だといえる日が来るのでしょうか。私の友人に、今年卒業して教員になった人がいます。7:30~21:30まで働き、4月から現在まで来ています。体力的に非常に厳しい様子です。同じ夢をもつ者が苦しんでいる姿を近くで見て、来年は自分もあのようになるのかと思うと、辛い思いがあります。そして今回変形労働時間制、もはや追い打ちでしかありません。何のための教員なのでしょうか。何のために働くのでしょうか。来年からも教員になりたいと思う人は減っていくでしょう。日本の教育はどんどん質を落としていくことは目に見えています。現場に目を向けず、データと金でみている国を動かす人々はどこに向かうつもりなのでしょうか。私にはわかりません。希望がない教員という仕事が夢を伝えられるのでしょうか。(あああ)
・朝日新聞デジタルに同改善策に関する記事が出ていたが、私はその中で気味の悪い一文を見つけてしまった。
「勤務時間の上限を守らない者への罰則の導入は慎重であるべきだ」という。これは、極私的意見を言わせてもらうと、今の段階でも必ず決めておかなければならないことである。教員がどれだけ理想に忠実か知ってほしい。明確な罰則を規定しないとどのようなことが起こるか、それは時間上限を無視した秘密の労働である。地震を帰宅したことにして学校に残っての残業などそうしたものがはびこるに違いない。/ほとんど学校ではまともに(変形労働時間制などの)改善策が機能するとは思えない。(藤子・LDS・打ち夫)
・安倍首相は「企業が世界でいちばん働きやすい国をつくる」といって国を運営しているようで、その結果が変形労働時間制の導入だと思う。労働者より企業の力を優先している。派遣労働もOKで変形労働もOKと毎年毎年どんどん国民の感覚がばかになっているように思う。/教員の先輩が「ボランティアありきの働き方はつらい」と言っていた。変形労働も「ボランティアありき」な働き方だと思う。昔から日本の風習、「お国のため」「会社のため」という雰囲気をぞんぶんに利用した結果ではないでしょうか。(バイアスマン)
・変形労働時間制を導入するには、、厳しい条件をいくつもクリアしていなければならないことが調べていてわかった。そのなかでも、いちばんクリアできなさそうなのが、一年を通しての週平均労働時間を40時間以内にすることである。これは、変形労働時間制を捻じ曲げるか、教員の仕事量をもっと減らしてから出ないと到底クリアできるとは思えない。ここで私の意見としては、残業代のことや勤務時間のことを考えるのではなく、どうすれば教員がやらなくてもいいような仕事を減らしていけるか考えてほしいと心から思った。/今のままこの制度が導入されれば、まず間違いなく教員の勤務時間は増えると考えられる。理由としては、会議などの教員間での話し合いの時間が制度上の勤務時間まで遠慮なく入ることが挙げられる。今までは、少しは遠慮や早く終わらせようとしてきたものが延びる。その後に自分の仕事や授業準備をすることになることを考えると、勤務時間は確実に延びるだろう。(ガンタンク)
・今回の学習で変形労働時間制のことについて調べましたが、この制度というのは、一般企業において繁忙期によって勤務時間が増加しても時間外労働としての取り扱いを不要とするための制度であり、要するに残業手当としてかかる費用の削減を目指す取り組みです。しかし公立教員には給特法があり、そもそも論として残業代が出ないので、このメリットに関しては全く意味がないといえます。/先行例として、三重大学付属小学校などで授業のない8月の夏休み期間に土日以外に13~14日間の休日を確保する代わりに、授業のある日は勤務時間を9時間45分に延ばすことを実施しています。これにより会議の時間が遅くなったことが確認されており、教員の一日の労働時間が長いことが世間に容認されていくのではないかと私は考えます。この制度に対して中教審は勤務時間圧縮が目的ではなく、長期休業期間中にまとまった休みを確保できる方策、としています。私は今考えなければいけないのは、夏休みの確保ではなく、勤務時間の長さであり、給特法の問題から目を逸らし、変形労働時間制を導入することで教員の多忙さを容認させることが目的としか考えられません。
( IS )
・今回、私なりに変形労働時間制について調べてみました。「分かりにくい。イメージが一切わかない」というのが正直な感想です。あまり深く理解できていない状態、教育の現場で働いてすらいない私からしても、「これで本当に大丈夫なのか? これでは根本的な解決にならないんじゃないか? メリットはあるのか? 」というマイナスな印象ばかり浮かんできました。机上での残業時間は減っても、実際の残業は減られないのではないでしょうか? ( T )
・第一の論点として/この「改革」が成就するには、今日まで増え続けてきた事務や部活動の負担が軽減されていることが前提となるはずだ。しかしながら改革案では労働の形態論が先走りしており、負担軽減の方策は詰め切れていない。/第二に、このような政策が実施された公教育に従事したいとは思えないということである。もともと、改革を受け入れるには軟弱な地盤に対して荒削りな家を建てようとすれば学校事故という地震でもろく崩れるのみである。・教育に無批判であり、行政を過信するタイプの教職学生こそが、その無批判ゆえに事件を起こすのではあるまいか?(たくみ)
・・・ただし変形労働制とフレックスタイム制の両方をすべて否定するわけではない。変形労働時間制では確実に残業代を出す、過労死ラインを超えない労働時間にしたうえで年間のバランスをとる。フレックスタイム制では、これを導入しても問題ないよう仕事量、収入になるようにしなければ現場の教員は納得しないと思う。教育政策を考えるのは文部科学省だが、実行するのは教員だ。教員=聖職者の考えは古く、教員=人間なんだと広く認知してもらうことこそ、教員を助けることになり、仕事に質も向上すると思う。(クマ)
・・・・確かに夏休みなどの長期休みやテスト期間などで授業数が減ることのある教職員にとってこの制度は、比較的良いものであると思った。しかし、普段の労働時間があやふやになったり/デメリットとなる要素も多いと感じた。・まずすべきことは、業務内容を軽くしたり教員のやる必要のない仕事をさせないなど、働く時間を柔軟にすることよりも、働く内容を見直す動きを強くしてほしいと思った。(FRISK)
・まず感想として本当にこれを教員に当てはめたとして、この時間内に当てはまるのだろうか? と思いました。おそらく教員に当てはめる場合は夏休みなどの長期休暇があるので、年単位での申請になると思いますが、この場合、授業のある時期は朝8時に学校に来て夜18時19時に帰る。夏は午前中だけとなりそうだが、実際年間の勤務日数や夏休みの部活動、また普段であっても土日休みではない現状から言って長期休暇だけでは調整できないと思います。(suge)