漁業者の了解がない限り、処理水放出はしないという約束を破り、政府は24日、薄めた汚染水(ALPS水と名付けられている。なんの略かは知らないが、アルプスという言葉のイメージの悪用という他ない)を太平洋に流出させた。
汚染水流出(その危険性が完全に払拭されていないのだから、正確にはこう表現するのが妥当だと思う)は、3・11以来の大きな動きだと思うのだが、反対の声はさほど大きくない。人々の関心は驚くほど低い。
一方、中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止、香港なども厳しい対応となっている。韓国国内は、尹政権が必死で砂をかけて沈静化を図っているが、反対運動は止んではいない。
風評被害に対しては、どこまでの政府が責任を持って・・・・などと岸田はいうが、
国際的に問題が発生した場合、どこまで責任がもているのか。
すでに取引停止などという事態が出ている卸業者に対してさえ、すぐに対応したという話は聞かない。この12年間の避難者に対する東電の対応を考えれば、お寒いという他ない。なのにすでに「風評被害」については東電が判断して、賠償するという報道がなされている。
そもそも、これから出てくる汚染水によるさまざまな影響が「風評」なのかどうかわからない。メディアも一貫して「風評被害」を連発しているが、流出による実害が一切ないと、誰が保証しているのだろうか。
3・11後に「放射能は多少浴びても体に影響はありません」などと言い回っていた学者が多数いたわけで、その伝からすると、今回も「大本営」である可能性は否定できない。何しろ流出はこれから30年間続くのだ。たとえわずかな汚染でも30年間続くことでどんな事態が出来するのか誰にもわからない。
タンクが足りないとか土地が足りないというが、本当に足りないのか?土地は十分にあると言われているし、今まで通りタンクで備蓄することにそれほど問題はないはずだ。テレビに見える12年で溜まった汚染水のタンク群が3倍になるだけだ。危険を冒してまで海に流出させる必要はないのではないか。
中国や韓国で原発事故が起き、処理水を日本海に流すという事態となったら、日本に住む人々や政府はどう反応するのだろうか。
今度の放出よりはるかに大きな反対があるのではないだろうか。
海は日本だけのものでないことは自明だからこそ、遠く太平洋の小国も強い危惧を持っている。それは、かつて自分達の住む海を実験場として際限のない汚染を撒き散らした大国への強い不信があるからだ。
22日、「放射線被曝を学習する会」がオンラインでプレスリリースをするというので、2時間ほどパソコンの前でお話を伺った。
その時の様子が、以下のメールで公表されている。
日本政府の「背任」が、ここではしっかり立証されている。ぜひ、読んでいただきたい。
皆さま
22日のオンライン記者会見は、24日からの海洋放出決定を受けた東電記者会見と重なり、報道関係の参加は少なかったものの、80人にご参加いただきました。
ライターの石田雅彦さんが、記者発表の内容を詳しく紹介してくれました。
「ALPS処理水の海洋放出は「正当化」されていないという主張!」
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e1bef97a341e7f781db5a47e344968b851eafbd9
官房長官記者会見にも参加できるフランス人記者・西村カリンさんも参加され、今後の展開が楽しみです。
害を上回る益がある(「正当化」)場合にのみ、被ばく作業などが許されるというのが
海洋放出が「正当化」されているかどうか、IAEAは検証しておらず、日本政府の責任だと言っています。
それなのに、日本政府は「正当化」できないまま、海洋放出強行を決定しました。
経産省がこっそりと英語でネットに掲載した「報告書」では、
海洋放出の「正当化」を放棄し、廃炉全体が「正当化」されると称しています。
しかし、その中身はなんと! 廃炉の益と海洋放出の害、それも被ばくによる害だけと比べています!
こんなインチキをする政府なんて、とても許せません!
黒川さんは、政府が海洋放出の益を説明するために「廃炉に不可欠」と強弁し、
首脳声明・日本語訳の改ざんに至ったこと、
日本政府はIAEAが求める「正当化」を果たしていないので、
IAEA規則順守をうたうG7首脳声明に違反していることを明らかにされました。
汚染水の海洋放出が始められようとしていますが、何十年かかるか分かりません。
今後も粘り強く反対していきたいと思います。
記者発表の動画、スライド資料、岸田首相への申し入れ書などの資料は
当会の下記ウェブページで公開しています。
http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com/blog/2023/08/post-c87d32.html
放射線被ばくを学習する会