『ケイコ、目を澄ませて』『デリシュ』『小さき麦の花少女は卒業しない』『茶飲友達』『赦し』『未来は裏切りの彼方に』『妖怪の孫』

1月に『週末の探偵』のことを書いて以来、映画のことを書いていなかった。

タイトルとひとことだけでも書いておこう。

 

2月20日(月)

『ケイコ、目を澄ませて』(日本/2022年/99分/原案:小笠原恵子/監督・脚本:三宅唱/出演:岸井ゆきの 三浦友和 公開2022年12月16日)

*久しぶりに充実した邦画を見た思い。削ぎ落とされた台詞と映像。岸井ゆきのの演技が素晴らしいし、脚本・監督の三宅唱の才能。『君の鳥は歌える』も良かった。

 

『デリシュ』(フランス・ベルギー合作/2020年/112分/監督:エリック・ベナール/キャスト:グレゴリー・ガドゥボワ イザベル・カレ 日本公開2022年9月2日)      

*レストランという形式の発祥。王室に使える料理人から民衆の料理人へ。クラシックの宮廷音楽家が、ベートーベンの頃からコンサートホールに活路を見出すのと似ている。丁寧につくられていて面白かった。

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3月31日

『小さき麦の花』(中国/2022年/133分/監督:リー・ルイジュン/キャスト:ウー・レンリン ハイ・チン/日本公開2023年2月10日)

*傑作と言っていいと思う。作品に主張があるわけではないのに、作品そのものが現在の中国の政治、社会を痛烈に批判している。公開、配信が中止になっているのもうなづける。これだけのリアリティは稀有。引き込まれた。

 

『少女は卒業しない』(2023年/日本/120分/原作:朝井リョウ/脚本・監督:中川駿・キャストキャスト:河合優実 小野莉奈/公開2023年2月23日)

*前半は退屈。後半になって構造がわかってくると面白みが出てくる。原作がしっかりしているからそれなりにいいのだが、なぜかハイティーンのむせかえるような欲望が感じられないのはどうしてだろうか。男女を問わずスクリーンからオスとメスの匂いがしないのだ。原作はこれから読むが、なんだか勿体無い感じがした。

 

4月18日

『茶飲友達』(2022年/日本/135分/脚本・監督/外山文治/キャスト:岡本玲 磯西真喜他/公開2023年2月4日)

*高齢者を対象にした売春の話。言いたいことはよくわかるし、よくまとまっていて最後まで飽きずに見られたが、どこか作りものっぽさが目につく。手広く商売として成功しているかのような描き方だが、そんなにすんなりいくはずもない。それから高齢者像に深みがない。一面的。皆いい人すぎる?

『赦し』(2022年/日本/98分・脚本:ランド・コルター/監督:アンシュル・チョウハン/キャスト:尚玄 MEGUMI  松浦りょう/公開2023年3月18日)

*いいのは松浦りょう。なんともすごい存在感。裁判シーンは脚本がダメ。裁判を通じてストーリーを浮かび上がらそうとしているのだが、無理がある。ドラマでありがちな証人が勝手に喋りすぎる。裁判長も感情が入りすぎ。普通の裁判なら「証人は聞かれたことだけに答えなさい」と連呼されても仕方がないシーンがほとんど。基本的な設定が脆弱。7年も酒を飲み続けた被害者の父親である小説家、というのも???。

 

4月27日

『未来は裏切りの彼方に』(2020年/スロバキア/98分/監督:ペテル・マガートガート/キャスト:アリシア・アグネソン ブライアン・カスベほか/日本公開2023年4月14日)

スロバキア映画。昨年見た『アウシュビッツ・レポート』は良かった。ナチスの侵攻を前に我が身を守るためにそれぞれが「裏切り」続ける。そうだろうなあと思いながら、その通りになるので、なんだかなあ、だった。

 

『妖怪の孫』(2023年/日本/115分/企画:河村光庸・古賀茂明/監督:内山雄人/公開2023年3月17日)

*珍しく観客が多かった。ほとんどが私と同じような高齢者。安倍嫌いの、安倍許さないの人たちが、溜飲を下げる映画。ほらね、やっぱり、安倍ってひどいやつだよねとお互いに確認し合うことに、私はあまり意義を感じない。どうして安倍的なものに絡みとられて長期政権を許してきたのかをしっかりと批判する映画があってもいいのに。共産党もダメ、立憲はもちろんダメ、維新や国民は言うまでもない。何度選挙をやっても自民党が勝ってしまう構造を、選挙制度のおかしさや獲得票数では勝ってるんだけど的なところではなく、なぜ票が皆死に票になってしまうのか、死に票を生きた票にするにはどうすればいいのかを考えるべきなのだろうけれど。