レコードを買ったのはいつ以来のことだろうか。
80年代後半にはレコードは退潮しほとんどがCDとなっていたはずだから、30数年ぶりということになる。
3月8日の新聞の「この人」欄で、ジャズ登竜門ちぐさ賞のサックス奏者として中根佑紀さんという大学生が紹介されていた。22歳。
ずいぶん昔のことになるが、野毛のジャズ喫茶ちぐさには、まだ店主の吉田衛さんが健在のころ、足を運んでいたことがあった。
たいていは呑む約束の前に寄って、コーヒーを飲みながら30分ほどレコードを聴くだけだったが。
紫煙たゆたう狭い店内に、ずしんずしんと響くジャズが心地よかった。
最終選考会が10月に行われ、中根さんがちぐさ賞を獲得。優勝者には記念としてCDとLP作成というご褒美があるという。
へえと思いながら、Youtubeで選考会の様子を見てみた。
43分ごろから
5人が最終選考に残り、それぞれが自分のグループを率いて演奏している。
中根さんの演奏は、おお、ソニー・ロリンズを思わせる懐かしい感じのテナーサックス。ピアノもベースもドラムも若い人たちがプレイしているとは思えない。みなアドリブが格好いい。熟達しているように聴こえた。
録音は野毛のジャズスポット、ドルフィーで行われたという。
ドルフィーにもなんどか通った。ここでは酒を吞んだ。90年代半ばごろまでか。一番好きなジャズプレーヤー、エリック・ドルフィーからとった店名。
ライブ録音には、ちぐさ賞の審査員で山下洋介(P)や坂田明(AS)などと組んでいた田中村誠一(TS)も参加したという。
この時の雰囲気もYoutube で見ることができたので、思い切って注文することに。
CDでもよかったのだが、最近流行し始めているレコードがどんなものか聴いてみたかったので注文。
一昨日届いた。CDの2420年に対して、レコードは3300円(税別)。
初回プレス200枚。私の購入したものには054/200という番号がついていた。みな売れればいいけれど。
この絵ではわからないが、やっぱりレコードのジャケットはいい。
針を落とす。
何ともやわらかいサックスの音。ベースも響くし、ドラムの音もよい。ピアノも良く鳴る。
雑音、全くなし。
CDの音とは違う温かみがある。
「中根佑紀のゴリゴリした厚みのあるプレイが連続して出てくるのには相当驚いた。ソニーロリンズ以来の伝統的なテナーとジョンコルトレーンから現代につながるコンテンポラリーなアドリブがひんぱんに出てくるのだ」
(審査委員長瀬川昌久氏:2021年12月死去)