日大汚職。学生と保護者には損害賠償を請求する権利が十分にある。 請求相手は、理事長をはじめとする大学私物化組だけではない。90億円以上の補助金を出しながら、放恣な経営を許してきた監督官庁の文科省もそれにあたるのではないか。

また日大が揺れている。

 

大学の私物化。公金に群がる亡者たち。

 

日大事業部という珍妙な名前の子会社をつくり、田中理事長最側近の井ノ口理事が取締役として付き勝手に采配を振るう。日大関係の備品から消耗品までほとんどの物品を扱い業績を上げる。さらに日大から日大板橋病院の建て替え工事を請け負い、手ごまの設計事務所に落札情報を流し24億2000万円で落札させ、日大から振り込ませた7億円のうち2億2000万円をコンサルタント会社を通じて大阪の医療法人錦秀会藪本雅巳前理事長に還流させたという。

このコンサル会社は藪本前理事長が全株を保有するペーパーカンパニー。経営の実態はないという。こうして彼らは日大から出た設計費の上前をはねポケットに入れた。逮捕容疑は背任。任意で事情聴取を受け、二度も自宅の家宅捜索を受けた田中理事長の関与も報道されている。本人は金銭の授受を否定しているというが、3000万円が田中理事長にわたっているという報道もある。逮捕はまぬかれないだろう。

 

「おぬしもワルよのう」と3人で言い募っている図が思い浮かぶ。

 

22億円という高額の設計料もおかしいし(一般的には設計料は工事費の2~5%、2%ならば工事費は1000億にもなるが…。)、実体のないコンサル会社への高額コンサル料も異様だ。

 

要するに寄ってたかって日本最大の大学を食い物にしたということではないか。

 

2018年にはアメリカンフットボール部の不祥事があった。今回の中心人物井ノ口理事は、この時、内田正人監督に不正を指示された学生とその保護者の口封じに走った男。その件が世間から指弾され理事を解任されるが、いつの間にか元のさやに。田中理事長の鶴の一声でと言われている。日大フットボール部出身。息子がフットボール部に入部したころから田中理事長に接近。

 

2008年に理事長に就任した田中理事長の権限は絶大だそうで、井ノ口は理事長の子飼いの人物。藪本は田中理事長の相撲のお友達。安倍や自民党議員と親しい関係。

井ノ口の姉が関西で広告会社を経営。ヤリ手だそうで、ちゃんこ屋を営む田中理事長の妻に取り入り、今では日大の広告関連を一気に引き受けているのだとか。

 

今、私が授業を担当している学生はフットボール問題の年に入学。2年間のコロナ禍でまともに授業を受けられずに、卒業間際に幹部の汚職問題。

 

なんとも気の毒である。

 

全国の特別付属校、付属校、準付属校などから日大に入学する学生も多い。

その格付けに鼻持ちならないものを感じないわけではないが、中3の進路指導の中でも、これらの高校に成績が届かずあきらめる生徒もいる。多くは専願第一志望で入学する。そこから他大学を目指す生徒もいるだろうが、プライドをもって日大に入学してくる学生も少なくないと思う。

 

もちろんそれ以外に、日大にはたくさんの学生がいる。さまざまな分野で秀でた能力をもち、オリンピックに出場したり、大相撲やゴルフ界に行く選手もいる。なかには授業には出ずに競技生活にまい進する学生もいるのだろう。

 

しかし多くの学生はごく当たり前の大学生である。私が授業をもつようになって6年目になるが、10に近い学科の学生が一緒の教室で学ぶ中、授業に対しいい加減な態度を示す学生は今まで一人もみたことがない。全国レベルの競技部活に入っている学生もいたが、欠席も少なく、みな課題を遅れずきちんと提出し、授業にも前向きに取り組む。大学生時代のいい加減この上ない私など、かれらの足元にも及ばない。

 

かれらのこの生真面目さは素敵なことだと私は考えてきた。

だからというわけではないが、あれもやりたい、これもやらせたいと、今でもついつい授業が盛りだくさんになってしまいがちだ。

 

そんなかれらが、卒業間際にこの恥ずかしいことこの上ない不祥事。大の大人が公けの金に群がって食い散らかす。

フットボール汚職、そしてコロナ・・・の4年間。

安くない学費を負担してきた保護者も忸怩たる思いだろう。  

「おたくのお子さん、たしか日大でしたね。今回は大変でしたね」

大変なことなど何もない。あるのは、自浄作用も民主的統治能力もない大学患部(幹部)をもつ大学に子どもを入学させてしまったことの無念さばかりだろう。

 

フットボール問題で膿を出すことなく済ませてしまったことが、大学の私物化を許し、

結果的に大変な汚職事件を産み出した。何とかまともな運営ができるような大学にしてほしい。

 

それにしても、コロナ禍は別として、学生と保護者には、大学幹部の不祥事によって精神的な打撃を受けたとして損害賠償を請求する権利が十分にある。

請求相手は、理事長をはじめとする大学を私物化してきた人たちだけではない。90億円以上の補助金を出しながら、放恣な経営を許してきた監督官庁文科省もそれにあたるのではないか。

 

明後日、逮捕報道から初めての授業がある。

22人の顔がzoomの画面に並ぶ。はて何と言って授業を始めるか。

 

 

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