今朝起きた時の外気温、2.4℃。その日の気温によって床暖房か石油ストーブかを決める。エアコンは朝はつけない。気温が低いときは、火が見える石油ストーブがいい。乗せたやかんのお湯が、いつのまにか沸いているのもいい。
早すぎるかもしれないが、朝食は5時15分ごろから。2時間ほどすると散歩に出かける。今日の天気は晴れ。ほとんど境川の遊歩道を歩くのだが、今日は海軍道路方面。野菜の無人産直を物色するためだ。昨日もそうだったが、風が冷たい。海軍道路に広がる広大な畑には、今はほとんど作物がない。取り残された太い大根が一本、畑の真ん中に屹立している。野菜の端境期に当たるのだろうか。
森さんのところの販売所で、ほうれん草と白菜を買う。1時間ほど、8時ごろには家に帰りつく。
今夕は、フィリアホールでのコンサート。緊急事態宣言中ではあるが、ささやかな楽しみ。
書こうと思いながらパソコンの不具合で書けなかった前回のコンサートについて書いておきたい。
2月23日。この日のコンサートは3つに分けられる。プログラムにそう書いてあるわけではないが、第一部 二つのヴァイオリンによるヘンデルとバルトーク。ヴァイオリンは松本紘佳と大江馨。
大江は経歴を見ると、2013年の日本音楽コンクールで第1位、2019年のレオポルドモーツアルト国際ヴァイオリンコンクールで第3位、桐朋学園大学のソリストディプロマコースに学び同時に慶応大学法学部で学び卒業とある。
松本紘佳もウイーンに学び、帰国して慶大の総合政策学部で学んでいる。
音楽一筋、ヴァイオリン一筋の生き方にとどまらない幅のある関心の向かい方は、音楽の表現の幅にも影響を与えているのだろう。
冒頭、「ヘンデル=ハルヴォルセン:パッサカリア」から始まった。
ハルヴォルセンは19世紀のノルウエーの作曲家。クラシック音楽に造詣の深い人にはよく知られた作曲家のようだが、私は初めて耳にする作曲家。
ヘンデルのハープシコード組曲7曲の中の最後の1曲。パッサカリアは舞曲の一種。原曲はヴァイオリンとヴィオラで演奏されるようだ。youtubeでいくつも演奏を聴くことができる。
ヘンデルのつやのあるリリックなメロディーラインが現代風にアレンジされ、思いがけない瀬の深みをのぞき込むような曲。19世紀ヨーロッパの混沌とした様子をイメージさせるよう。二人とも力みとは無縁で、互いに闊達に弾き合いながら全く破綻することなく絶妙なアンサンブルを保ちながらハルヴォルセンの世界を表現する。互いへの信頼感が感じられて心地よかった。
続いてバルトークの44のヴァイオリン二重奏曲から8曲。小曲が並ぶが、いずれもトリッキーで軽快なのは、バルトークがハンガリーの各地で採譜した民衆の踊りがもとになっているからか。バルトークと言えば私などは弦楽四重奏曲のような重厚で難解な曲を思い浮かべてしまうが、これはそうしたものとは無縁。楽しめた。
第二部。徳備康純:無伴奏ヴァイオリンのための三章。この曲を委嘱された演奏家の方が手を故障、その後亡くなられたとのこと。直後に松本紘佳に会い、彼女のために全面的に書き直した曲。本邦初演。
現代曲にも意欲を燃やす松本の力のこもった好演、これはyoutubeに演奏があるのでぜひ聴いてみてほしい。独特の世界が表現されている。
第三部。
これもまた新たな試み。
佐藤卓史の縦横無尽のバルトークのピアノソナタとミクロコスモス・ブルガリアンリズムのダンスの2つの曲をバックに、舞踊家藤間蘭黄がカフカの「変身」を踊るという前代未聞の試み。元々は2020年5月にハンガリー、チェコ、スロバキアで世界初演が計画されていたという。さらに2021年3月にドイツ・ケルンでも公演が予定されていたというが、世界的な新型ウイルスの流行によってすべてキャンセルとなった作品。
日本舞踊をまともに見たのは初めて。
しかもカフカの「変身」をバルトークの曲で踊るという想像もつかない試み。
結論から言うと、素晴らしい表現だった。まるでオーケストラを聞いているような佐藤のピアノと一寸の乱れもない緊張感あふれる藤間の踊りは、バルトークと日本舞踊という全く文化のよって立つところの違うものなのに、とてつもないイメージの広がりを見せてくれた。「変身」のもつ不条理さと悲しみのようなものがステージ上にまぎれもなく現出したことに本当に驚かされた。
フュージョンという言葉は最近あまり使われないが、異質なものがぶつかり合いながら融合する面白さ、バルトーク、カフカ、藤間、佐藤が見事に見せてくれた。
正直時間を忘れて見入ってしまった。
世界初演が二つ。会場は座席を一つずつ空けた緊急事態モードであったが、拍手は万雷のものと変わらなかった。