9月29日から授業が始まった。在宅での授業である。
Zoomというweb会議用のソフトを使う。「双方向型授業」というのだそうだ。
この3カ月、準備はしてきたが、どうにもいつもと気分が違う。
気が重いのである。
16人もの人間の平面的な顔がディスプレイに映し出される。
はたしてどんなふうにコミュニケーションがとれるものか。気の重さはその一点。
時間が来て三々五々?学生が入ってくる。
誰一人一度も会ったことはないのに、声を聴くとなぜか少し安心する。画面にじゃないのか?と自分で少し驚く。
オンラインの場合、画面の情報より音声の情報の方が情報量が多いからだろうか。
ただ、明らかに違うなあと思うのは、自分の声が、自分の話が画面の中の学生にどう伝わっているかがわからないことだ。
物理的に?私が感じるのは、私の声は私の部屋の中だけで響いているようにしか感じられない。画面の中の学生はみな無表情。
電話ならば相槌を打ってもらえる。
つい「聞こえていますか?聞こえていたら手を上げてください」というと、皆ほんとうにおもむろに手を挙げる。恐る恐るという感じ。まるで教室で周りの様子をうかがっているよう。それでも「挙手」というzoom上のシステムを使うよりはいい。
20分ほど一人で話し続ける。「画面共有」というシステムを使って文書を出し、それを動かしながら…と思ったら、これがうまくいかない。3つの文書を用意しておいたのだが、一つ目が出ない。理由はわからない。二つ目は出たが。
こちらの声は「届いていない感じ」が強くなるせいか、だんだん声が大きくなりがちと聞いたので、アドバイスどおりヘッドセットを購入して話している。ところが老眼鏡を外そうとすると、ヘッドセットのコードと老眼鏡の首掛けようのひもが絡んでしまう。
予想もしていなかった。自分でも笑ってしまう。
いつもよりのどが渇くのも予想外。
学生の自己紹介。短いものだが、こちらか質問をしてみる。たわいのないものだが、少し対話が生まれる。
まるまる90分というのは、学生のネット環境の問題から避けるようにとの注意があったので、60分で終える。あとは課題。
課題については、専用のblackboardという掲示板がある。そこに文書や動画を載せる。
提出はすべてメール。
こんなことを全国の学校でやっていたのか?
いつもだと終わるのが16時10分。2時間近くかかって帰宅する。途中下車をして一人酒もありだ。
それが全くない。
「ああ、疲れた!」というと、Mさんの「お疲れさま」の声、首をかしげてじいっと見上げているライの視線。
早めにウイスキーに手を伸ばしてしまう。「今日だけね」。