「魅惑のギター&ヴァイオリン』(10月1日フィリアホール)

10月がやってきた。

麻の気温は20度を下回るが、秋冷というにはまだ少し早い。

仲秋の候という時候の挨拶のことばがある。

昨日がその仲秋の名月だった。久しぶりの夜の外出だったから、よく晴れた空にきれいな月を眺めることができた。今夜が満月だとか。今日も穏やかな晴れ日。どんな月になるだろうか。

 

 

青葉台フィリアホールで「魅惑のギター&ヴァイオリン」というコンサート。

出演は卒業生でヴァイオリニストの松本紘佳と岡本拓也。ウイーン留学の時期が重なっていたようだ。

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5月28日のこのブログに、二人の「グノーのアベマリア」のyoutubeの動画を載せた。

 

昨夜は、アンコールの1曲がこの曲。

 

岡本拓也のギター、調弦を聞いただけでその繊細さに驚かされた。バッハの前奏曲とフーガBWV998からプレリュード(前奏曲)で開演。

ピアノやチェンバロで演奏される曲だが、ギターでもよく演奏されるようだ。youtbeにいくつかアップされている。

3分かからない短い曲。しかしインパクトは強い。それも耳をそばだてさせられるような。

 

2曲目はヴァイオリンが入り、エルガーの『愛の挨拶』、ヴァイオリンの小曲の定番。

合奏のときには、ギターはうっすらとPAを入れているとのこと。ヴァイオリンは1挺でオケと対峙するが、ギターはそもそもそんな大きな音が出ない楽器。

このアンサンブル、心地よい。

続いてファリャ:7つのスペイン民謡よりムーア人の布、ナナ(子守歌)、ポロ。

ファリャと言えばバレエ音楽「三角帽子」ぐらいしか知らない。

スペインの民族音楽がベースになっている。ギター独奏から声楽までさまざまな組み合わせで演奏される曲。2重奏というよりギターが伴奏ヴァイオリンが主役。でもバランスがとって良い。

 

テレガの「アルハンブラの思い出」。

CDや放送で数えきれないほど聴いた曲だが、ナマでそれも数㍍のところで聴くのは初めて。

震えた。素晴らしい弾き手だと思う。トレモロの一つひとつの音が粒だって、さざ波が寄せては返す繰り返し。鳥肌がたった。

 

つづいてフエリシダーヂ、映画「黒いオルフェ」から。前の曲で酔ってちょっと記憶がとんでいる。

 

ヴァイオリンのメインはエルンストの『「夏の名残の薔薇」の主題による変奏曲』

エルンストはオーストリア(現チェコ)の19世紀半ばのヴァイオリニスト、作曲家。パガニーニの後継者と目されていたほどの技巧の持ち主だったようで、この曲もすさまじい難曲。紙の上で書いたのではなく、指が動いてつくられた曲なのだろう。『シューベルト「魔王」の主題による変奏曲」など、幾つも技巧を凝らした変奏曲がある(とりわけ「魔王」はヴァイオリン1挺の音と首をかしげたくなるほどすごい)。

 

「夏の名残り・・・」は、途中からアイルランド民謡の「庭の千草」のメロディーが出てきて、これが幾何学的に変化を繰り返す。パガニーニの「24のカプリス」をほうふつとさせる。

右手の弓でメロディを弾きながら左手の指4本がピチカートでメロディを弾くところも。大変な技巧。このソロの曲を松本は難なくゆとりすら感じさせながら弾く。素人は瞠目するしかない。

最後はギターとヴァイオリンでバルトーク ルーマニア民族舞曲集。軽快な楽しい曲集。

 

そしてアンコール。1曲が超絶技巧の「チャールダーシュ」。ロマの音楽をイタリアの作曲家モンティが残した。

松本のこの曲の演奏は中学生のころから何度も聴いているが、頑張って難しい曲弾いてますという感じがどんどんなくなってきた。信じられないようなスピードで弾いているのに、排気量の大きいクルマが余裕をもって走っているような余裕すら感じさせる音色はもちろん音量もすごい。音量の大きさは、楽器と弾き手の相乗。

さらにギターが一歩も引かぬ超絶アンサンブル、

 

 

そして最後に、グノーのアベマリア。しっとりと。

 

コンサートは本当に久しぶり。ナマの楽器の音を聴くのも。

十分に堪能した。

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