先週、暇に飽かせて4日間の全英女子オープンを見通した。深夜の放送だから録画をして早朝に見た。
20歳の渋野日向子の一挙手一投足にギャラリーの視線が集まり、緊張に負けずにのびのびとプレイする姿が、緑の中に際立って映えて、見ていてとっても面白かった。
胃が痛くなるような心理戦がゴルフの醍醐味なのだろうが、自分のペースをしっかり守り、ここぞと決めた時には迷わずクラブを振り切る渋野は、ゴルフの神様が憑依でもしているようだった。
父親がつくったという白いおにぎりをほおばり、「たらたらしてんじゃねーよ」というよっちゃん食品のお酒のつまみを、カメラを気にすることなくかじりつく姿も、初めて見た。みているこっちがついニヤついてしまうほどのマイペース。キャディの青木コーチとのやり取りまで聞こえてきそうな明るいプレーだった。
そして帰国。今度は北海道での明治カップ。マスコミは「渋子フィーバー」を引き起こし、予定のなかったテレビ放送も決まった。現地のギャラリーは沸騰した。
万全でない体調で3日間を闘い、-4の9位タイ。発熱や頭痛に悩まされながらの3日間54ホールをオーバーパーなしで回ったのは、先週優勝した成田美寿々や原絵梨花、比嘉真美子、笠律子、宮里美香、イ。ボミなど有力選手が予選落ちしているのをみると、注目されながら3日間闘い続け9位となったのは大変な健闘と云える。
ひとつ気になることがあった。テレビのアナウンサーの渋野選手への枕詞(まくらことば)「樋口久子さん以来の42年ぶりの日本人の男女通じてのメジャー優勝」だ。
たしかに男子ツアーで活躍する松山選手もメジャーは勝っていない。
日本人で二人目、42年ぶり、紛れもない事実。
奇しくも樋口久子プロがイギリス現地で解説をしていたこともあって、優勝は「偉業」とまで表現された。
気になって、メジャーの優勝者一覧を検索してみた。
樋口久子プロが全米女子プロで優勝したのは1977年。1973年~2019年まで、当初は4つ、現在は5つの大会がメジャーとされている。
テニスで言えば、ウインブルドン、全米オープン、全豪、全仏、がそれにあたる。
さて1973年から現在まで、日本人の優勝者は2人だが、韓国人優勝者はなんと延べ30人いる。
朴セリ選手は5回、朴仁妃選手(パク・インビ)に至っては7回優勝している。複数回優勝者が何人もいるので、優勝者の数は12人(手で数えたので間違っているかもしれない)にのぼる。
「偉業」も30回となると、それほど騒がれない。現在の女子ゴルフの世界ランクをみると、韓国のコ・ジンヨン選手が1位で10位までに4人の韓国人選手が入っている。20位までには8人。
いまや世界の女子ゴルフは、人口が日本の半分にも満たない韓国人選手が中心、韓国人選手がメジャーで勝っていない年は、この10年、ない。
なにゆえ韓国人選手はゴルフが強いのか。なぜ日本人選手は「2人目」なのか。
日本のマスコミは、こうしたことをひとことも言わない。ただただ「偉業達成!」である。
渋野選手は素晴らしかった。それは間違いない。
しかし、日本人で二人目、42年ぶり、偉業達成、と繰り返すだけでなく、もっと周りをフェアーに、そして謙虚に見なくちゃと思う。
まさか元徴用工問題や輸出規制問題があったから韓国に触れなかったとは思わないが。
全英で渋野の後塵を拝して3位となったコ・ジンヨンさん、今年54つのうち2つのメジャーを制している。