NHKBS時代劇『小吉の女房』江波杏子さん追悼。

 今朝の気温4℃。快晴。啓蟄を過ぎてもこんな日がある。というより、南関東の3月は意外に寒い日が多い。

 海軍道路の広大な畑のあちこち、作物が植わっていないところに霜柱が広がっていて見事。

 畑のそこここに収穫されなかった大根、ブロッコリーなどが放置されている。そこにヒヨドリの群れ、ヒヨドリは雑食だがブロッコリーが好物とのこと。からだが大きい分、腹を満たすのが大変なのだろう。庭に来るヒヨドリも大食漢である。

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今朝のヒヨドリ


 横浜の田舎、瀬谷区には随所に無人有人の野菜販売所があるのだが、このところ開いていないところが多い。

 ちょうど行きあった野菜作りの名人と云われる農家のOさんに声をかける。

 「4月半ばまで売るものがない」そうだ。野菜の端境期なのだろう。秋から冬には「買うものがない」とはあまり感じなかったのだが。


 西にみえる富士山(静岡県)とその前の丹沢山塊(神奈川県)に新たに降雪。思わず写真を撮りたくなり、エレベーターに乗る。8階の廊下を吹き抜ける風は1階のそれとは違ってかなり冷たいが、高いところは気持ちがいい。安全な高所は恐怖を感じない。写真は相変わらずへたくそで恐縮なのだが、実際はもっとずっと秀麗である。

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マンション8階から西の方向をのぞむ。富士山の手前がうっすらと雪をかぶった丹沢山塊。このまま視線を右に動かすと北岳を中心とする南アルプスが見えてくるのだが。

 

 

 NHKBSプレミアムのBS時代劇に『小吉の女房』という番組がある。録画してみていたのだが、昨日最終回を見た。連続ドラマを最終回までしっかりみることは多くない。この作品は最後まで愉しめた。


 幼少時代の勝海舟の父親小吉とその家族を主人公とした物語。

 原作は山本むつみさんのオリジナル脚本。『ゲゲゲの女房』や『八重の桜』などを書いた方。時代考証もちゃんとなされていると思われるが、登場人物の配役を自在に動かすお手並みは絶妙だと思う。

 

 江戸時代、幕末間近の天保期。貧乏旗本・勝家の女房・お信は、毎日お金の苦労をしながらも、無邪気な笑顔も絶やさない。身分にとらわれず、人に分け隔てがなく、度胸の良さも満点だ。
夫は、勝小吉。生来の無鉄砲。腕はめっぽう強く、頼まれたら嫌とは言えない。
お信は、そんな小吉が愛おしくてたまらない。お信の明るさとのんきさ、知恵や機転が、トラブル続きの小吉を支える。そして両親を冷静に見守るのが、跡取り息子の麟太郎。利発で聡明。母から身分を超えた博愛を、父から義侠心をもらい受け、やがて「勝 海舟」として江戸の人々を救うことに…。(HPから)

 

という設定。どうということのない物語ではあるのだが、小吉の古田新太とお信の沢口靖子の息の合った演技がとってもよい。沢口靖子の若々しい清新さは信じられないほど。彼女が古田新太と同年齢の53歳とは思われない。


 それに加えて荻野清子さんという作曲家の方の音楽がなんとも軽妙でコミカル、垢ぬけていて、刀を差して走りまわる時代劇とのミスマッチがとっても良い。映画やドラマの音楽を多く手掛けるよく知られた方らしいが、この時代劇を品の良いしゃれたものにしている。

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見た目よりも、演技の清新さうぶさがいい。


 そして忘れてはならないのが、昨年10月に亡くなった江波杏子。お信の祖母登勢の役。沢口靖子は劇中で「おばば様」と呼んでいる。麟太郎はひ孫にあたる。


 娘夫婦に早く先立たれて、孫娘のお信に勝小吉という婿養子をとったものの、この婿と登勢は折り合いが悪い。無鉄砲で上昇志向の全くない小吉に対して登勢は容赦ない。小吉もまたぶつぶつと「反抗」にいとまがない。

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入ります。


 大姑(おおじゅうとめ)として登勢は家名を汚さぬよう、秀才の誉れ高いひ孫の麟太郎をまっすぐ育てたいと願っているから、いちいち小吉のやることが気に食わない。

 登勢と小吉の間に入る天真爛漫なお信と父親が大好きな麟太郎、そこをベースに毎回いろいろな事件が起きる。


 きりっと背筋が伸びて、周りの空気を冷やしてしまうような迫力。

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 18本の映画がつくられたという『登り龍のお銀姐さん』の頃のあだな艶っぽさとは違って、気丈な立ち居振る舞いと鋭い眼光、『仕事人』の姑、菅井きんとはちょっと違う。強気なのだがどこかに人生の黄昏を見つめている風情がある。随所に味わいのある演技が見られて、何度も唸ってしまった。
 

 最終回で登勢は亡くなるのだが、急逝したことと重ねてみてしまう。亡くなったのは昨年の10月だが撮影をすべて終えてからのことだったという。最後の仕事はラジオドラマの収録だったとか。

 享年76歳。またひとりいい役者をなくした、と思う。