2019豪オープン女子準決勝大坂なおみ選手勝利、日本や日本のテニス界をあげて大坂選手を育ててきたような言い方

 午後、大坂なおみ選手が出場する全豪オープン準決勝を見ていた。
 

   昼間からテレビでテニス観戦ができるのは、昼酒同様、退職者、それも仕事をしていないおっさんの特権だ。2時間近く楽しんだ。

 

 

 対戦相手はチェコのカロリナ・プリスコバ。昨年世界ランク1位だった人。接戦だったが、大坂選手が6-2、4-6、6-4で勝利した。

 

 サーブ一本、レシーブ一本間違えばどっちにもころぶ、面白いゲームだった。堪能。テニスは40代に10年ほど熱中した。もちろんへぼだったが。

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 メルボルンは今日気温40度だとか。会場となったナショナルテニスセンターのセンターコートロッドレーバーアリーナ。屋根は開閉式。15000人収容の施設。今日は暑さのため屋根は閉められていた。

 


 その観客席に「必勝」と毛筆体で染め抜いた日の丸の鉢巻をしている人、頬に日の丸を貼り付けた人、大きな日の丸を振っている人が時々映し出される。いつものことだが、ああいうことだけは一生したくないなと思う。

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 テレビでは「グランドスラムで日本人初の決勝進出」「世界ランク3位は日本人で初めて」。アナウンサーは何度も絶叫する。解説の女性は感極まって涙ですぐに言葉が出ず、絞り出すように「日本のテニスがこんなところまで来るなんて」話した。

 

 なんだか日本のテニス界をあげて大坂選手を育ててきたような言い方だ。

 

 

 Wikipedeiaによると、大坂選手はテニス経験のない父親がウイリアムズ姉妹を観て一念発起、姉とともになおみさんが3歳の時に練習を開始、4歳の時に一家でアメリカに移住。親子でテニスのキャリアを積んできたということだ。

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 大坂選手は二重国籍だ。日本国籍とともにアメリカ国籍ももっている。父親はハイチ系アメリカ人で母親が根室出身の日本人。姉妹にテニスを続けさせるために苦労されたようだ。

 

 今では熱狂的なファンが大勢いるようだが、2年前まで私は大坂選手のことを知らなかった。誰か知ってた?昔からの仲間のように言わない方がいい。彼らは家族で信じられないような努力を積み重ねてここまで来たのだと思う。

 

 日本テニス界が彼女を育てたなんて事実はない。

 

 

 彼女のインタビューはどこか力が抜けていて、かわいらしい。日本語はへたくそだけれど、不思議なユーモアがある。

 

 今日のゲームを決めた第3セット10ゲームの最後のポイント、ラインズマンのおじさんはセンターラインのサーブをアウトと宣告。これがアウトだとプリスコバがブレイクして試合の行方は分からなくなる。大坂選手はここでチャレンジを選択。大画面に映し出されるのをラケットを両手で挟んで仏教式に拝んでいた。子どもっぽさが出ていてかわらしかった。

 

 

 話を戻そう。

 

 すごいことを成し遂げたからと言って、「日本」という枠組みに囲いたがるのは感じが悪い。まるで旧知の知り合いのように無理やり仲間内に入れたがっているようだ。

 すごい選手が出てきた、ユーモアがあって可愛いぞ、でいいし、二重国籍なんだって。何?二重国籍って?そういうの、ありなんだ。私たちと同じじゃあないんだね。

 そう、そういう人って世界にはたくさんいるよね・・・・。

 


 だいたい「純粋に日本人」なんていない。みな○○系日本人のはず。島国って言ったって、大昔は国境もなく自由に行き来していたわけで、「純粋」はありない。天皇家の人たちだってそうだ。現天皇だって自ら朝鮮系であると述べている。

 


 えー、そんなこと言ったって日本人の顔はやっぱり日本的でしょという人がいる。そんなことはない。髪型の特徴や独特の挙措で区別されることはあるけれど、写真だけ見たらモンゴロイドはみなよく似ている。

 


 四半世紀も前になるけれど、夜間中学を担当していたころ、アジア系の生徒たちが夕食を一緒に食べながらよく「あの先生はなに人に似ている」と話をしていたことがあった。彼らによれば、日本の人たちもみな「アジアの○○系」と顔で区別できるというのだ。

 

 「じゃあ、おれは?」と私が訊いてみた。ベトナム人のグエン何とか君という生徒が
「先生はラオス系ですね」と云うではないか。

ラオス人の知り合いは、隣に坐っているアヌシット君だけ。彼も私を見ながら「そういえば」といった表情。各教科の先生、それぞれアジア各地に出自をもっていた。

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 1985年、在日の人たちの指紋押捺拒否運動に関わった。

 

 3世4世の人たちが「犬の鑑札」外国人登録証への指紋押捺を拒否した運動だ。彼らの多くは日本で生まれ、日本語を母語として育ってきた人たちだった。その意味で朝鮮系日本人なのだが、そのころそういう言い方はかなり珍しかったし、日本国籍を取得する条件もかなり厳しかった。差別のために本名を名のることすらできず、外国人登録証の常時携帯義務を負わされる存在、自分はいったい何者なのかを問い直す大きなきっかけとなったのが、彼らの指紋押捺拒否だった。

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 優れた人をみな日本人にしたがるわけではない。朝鮮系の、たとえば優れた歌手などの芸能人に対しては隠然とした「区別」や「差別」がある。その根拠が近代日本のアジアの植民地政策、アジア蔑視の歴史的な経緯から来ているにも拘らず、いまだに根拠もなく「日本人でないこと」が大変なマイナスであるかのような言説がまかり通っている。

一方で大坂選手の騒ぎである。

 

東京オリンピックがまた一日近づく。気が重い話ではある。