映画の話なのにラーメン屋の合理性とはの話に。

 先週、高校時代の友人二人としまなみ海道の旅に出かけた。帰って一週間が経つが、朝の散歩や図書館、簡単な買い物以外はほとんど外出をしていない。いくらなんでもこのまま閉門蟄居は気詰まりなので、気になっていた映画を見に行くことに。今回も本厚木の映画ドットコムシネマへ。

 気がつけば出不精、やはり歳をとって気力が落ちてきているのだろうか。若いころは、冬休みなどに2,3日自宅にいると、どうしようもなく、どこでもいいどこかに出かけたくなったものだが。 

 犬も歩けば棒に当たると言うが、家の中にいて「棒にあたる」こともないわけではない。いろいろな気づきはあるものの、それほどドラスティックな「棒」には当たらない。外に出れば、人同士がぶつかりあって、なにがしかの化学反応があるわけで、ビール同様「とりあえず」外に出てみるということも、リタイア―組には必要なことかもしれない。

 しまなみ海道の旅、とりわけ尾道では、二つの、いや三つほどの「棒」に当たった。どうでもいい話だが、書いておこう。 

 5月終わりの月曜日、田園都市線南町田駅から羽田行きの高速バスに乗る。昨年開通したばかりなので、初めての乗車である。 

 このバス、待っていて「はい、どうぞ」と乗れるわけではない。始発が相模大野駅、JR町田駅を経てここを最後の通過点にして羽田や成田に向かうため、人数超過で乗れないということもある。そのためあらかじめ予約が必要となる。面倒だがネットで予約。支払いは引き落としではなくsuicaでOKとのこと。

 南町田を6時25分に出て、羽田第一ターミナルには7時半の到着予定。ほぼ7割の込み具合。みなビジネスマン。観光客らしいのは私のほかに2,3人。走り出していきなり保土ヶ谷バイパスで渋滞。20分ほどで抜け首都高湾岸線へ。定時に着くよと友人にメールを入れるも、ベイブリッジを前に再び渋滞。30分ほどの遅延を覚悟。しかしこれもベイブリッジを抜けたら徐々に解消。着いてみれば定時。よく出きている。

 羽田を8時半過ぎに出て、予定通り広島空港に10時過ぎに到着。レンタカー屋さんまでワゴン車で運ばれていくと「運転は任せて」と言っていた薬剤師のH君、カウンターで書類を書きながら、徐ろにこちらを振り返って「免許証、忘れたみたい」。慌てているふうはない。普段からこの人はマイペースである。

 私は悪法この上ない免許更新の必要のない教員免許(1954年以前に生まれている人は更新の義務はない)以外はもっていないから、残るは老人施設職員のM君。彼も慌てず「ああ、おれ持っているから」。これでレンタカーを「借りる」という点ではことなきを得たが、もしM 君ももっていなかったら、と考えるとちょっと怖い。

 で、運転は…。M君は「そろそろ運転やめようかなあ、めんどうなんだよなあ」と飛行機の中でつぶやいていた。それでもクルマは借りてしまった。借りたのだからなんとかしなければならないのだが・・・。

 気がつけば、クルマは尾道に向かってすきすきの中国道をひた走っていた。自動運転?まあそのようなものはある。棒に当たればなんとかなるものである。

 自動なのになぜか回り道をして尾道到着。時間はお昼に差し掛かっている。アタマに浮かぶのは尾道ラーメン。神奈川区に組合の事務所があるのだが、その近くに尾道ラーメンという大きな看板を出している店がある。京浜東北線東神奈川駅からよく見える。何十年も通っている事務所だが、この店に入ったのは一度だけ。そういう店である。説明はいらないだろう。

 街並みが見えてすぐ、道路右側に7~8人の行列を発見。尾道ラーメンの老舗S華園。まだ昼前なのに恐るべし、有名店。元祖尾道ラーメンだとか。2台しかない駐車場に車を入れて、行列の最後尾に並ぶ。やけに客の回転が速い。店の中に入って店内を見渡してその理由が分かった。完全分担制なのだ。食券を売る帳場の年配の女性、ガラスのコップを運ぶ若い女性、ラーメンを運び片付ける女性。30人も入るだろう店内をみなきびきびと動いている。

 食券を買って案内されたテーブルにつくとすぐ餃子が運ばれてくる。食券を買ってものの1分である。えっと思ってテーブルの上にラー油に醤油に酢という当たり前の3点セットを探す。ない。あるのは餃子のたれと書かれた小さなビン。悪い予感。小皿にそのたれを入れ、一口。温かい。熱くない。間違いなく作り置きの餃子。たれはみそが入っているのか、なんだかはっきりしない味。互いに「なに?」という顔。間髪を入れずラーメンが運ばれてくる。

 見ためは悪くない。写真を撮って連れ合いに送る。しかしこれも温かいだけ。熱くないのである。スープ、特徴なし、私の味覚が貧しいのか。麺、

普通。喜多方ラーメンのスタンダードに及ばない。焼き豚、大きい。背油、ゴロゴロ。しかし

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全体の量少なめ。はあ、なんだかなあ、と思いながらすぐに食べ終わる。ぼそぼそと批判がましいことを述べあっていると「次の客さんがいますから」とスパッと言い切る女性店員に退場を促さられた。

 ラーメンと言えば、喜多方ラーメン会津ラーメンを小さいころから食べてきた3人、不満である。お冷はセルフサービス、食券を買わせ、作り置きの餃子にコクのない温かいラーメン、この合理性は何だろうと思う。誰にとっての合理性だろうか。客を待たせず満足してもらうためとお店側は言うだろうが、客が求めているものはまた別のものではないか。

 客のためと言いながら、この合理性、つまるところお店にとっての合理性にすぎない。稼げるときにできる限り稼いでしまいたいという利益優先の経営というしかない。
パイの規模は別としても、都会にはもっと合理的に経営すれば儲かるだろうにと思うお店はいくつもある。客の利便性や要望を鑑みながら、お店のサービスの質を落とさないために客に不興を買っても、かたくなにお店のやり方を崩さないお店はいくつもある。都会はパイが大きいからだらだと言われればそれまでなのだが。

 今日の分は今日で終わり、それ以上欲をかかない。こういう考え方は、資源を大切にしようとする漁師にも通じる。

 クルマに戻ったところで、つれあいから返信のメール。
「おいしそうだね」。味は写真に写らない。(続く)