なぜ「入籍」が根付いてしまったのか。Aさんからのメールと王貞治さんの再婚、NHKだけが「婚姻届けの提出」と報道。

    西日本豪雨の被害が広がっている。今朝の報道では死者162人、安否不明が57人。

 家が流され避難所生活に入らざるをえない人たち。ライフラインが止まっている地域や断水が続いているところも。

 豪雨のあとに梅雨明けとなった愛媛の映像では、猛暑の中、片づけをしている人たちが、「水がないから片付けが進まない」と汗を拭きながら話している。

 肉親を亡くした人たちへのインタビューは相変わらずだ。訊かれれば応えてしまう良い人たち。気の毒である。

 

 西日本の大きな都市の教員となって帰っていった同僚だったAさんから「ブログ、読んでます。それと今度入籍しました」とのメール。

 彼が新任の教員として私が勤めていた中学にやってきたのは、今から8年ほど前か。Aさんは、今どきの若い教員のような“はじけぶり”がない穏やかな人。

 私は初任者指導担当教員としてAさんを担当。と言っても教科も学年も違うので、話せるのは授業番号17番(スライド式授業配当)の時だけ。初任者研修の時間として確保した。

 とはいえ、私と二人だけで話すのも気詰まりだろうと、二十代前半の保健体育の非常勤講師Bさんと、技術科の臨時的任用教員をしていたCさんの二人に声をかけて、3人の初任者指導としたのだった。二人には迷惑な話だったかもしれないが。

 学校の中に一般的な初任者指導というものが確立しているわけではなく(確立しているのかもしれないが、私は知らなかった)、たいていは先輩教員の経験主義的な講義を拝聴することになるのがこの時間の通例。

 そこで「今学校に流れている時間をとりあえずいったん止めて少し原理的なものに戻ります」と言ったかどうか忘れたが、広田照幸の『ヒューマニティーズ教育学』をテキストにして、週一時間やっていくことにした。

 年間の授業数は通常35回ほど、この17番の授業、20回ぐらいはできただろうか。

 私自身、面白いと思うところがある反面、難しくてよく理解できないようなところもあるテキストだった。3人は交替でレポートして、よく付き合ってくれた。

 いったん教員になってしまえば、新人教員と言えどもまず目の前の子ども、そして今日の授業、慣れない部活に委員会指導、日々勃発する生活指導、親の年代に近い保護者対応など、土日もなく働かされるのが今どきの新人教員だ。スピードに慣れなければついていけない、考え込んでいるとどやされる、ひまな教員が少ないからわからないことも聞きづらい、やりながら考えるんだよ、なんて言われる。

 そんな殺人的な日常に、40歳近くも年の離れた教員と過ごす週一度の50分。

 小さな会議室に4人が集まる。疲れた顔が3つ。あ、私もか、4つだ。

 雑談はするけれど、それほど盛り上がらない。テキストのレポート。あれ、今日は誰だっけ?「できてません」。なかなか続かない。盛り上がらない雑談がつづく。

 学校の中の時間から少しだけ降りていた。そんな時間だったような気がする。私も。

 

 入籍じゃなくて婚姻届けの提出だよね、と私。
6月1日にソフトバンク王貞治さんの再婚が報道された。ほとんどのマスコミが「入籍」としたのに対し、NHKだけが「婚姻届けを提出しました」と報道した。正確だと思った。
入籍には違和感がある。誰が誰の戸籍に入るのか。
戸籍上の結婚は、親の戸籍から抜けて(除籍)二人で新たな戸籍をつくること(それが必要かどうか、住民票で十分とも思うが)であって、入籍とは言わない。
入籍というのは、再婚時に女性の連れ子の戸籍を筆頭者である男性の戸籍に変更する場合、離婚後に子どもの氏を父親から母親の氏へ変更する場合、をいうのだそうだ。

これからは婚姻届けを出しましたと言います、との返信があった。披露宴は身内で小さくやりますとのこと。Aさんらしい。

f:id:keisuke42001:20180711095012j:plain庭のくちなし

 

服部桜、通算2勝目をあげたこと,朝刊の県版で知る。負ければ90連敗となるところだった。茅ヶ崎市出身。今月二十歳になる。

死刑容認8割というこの国、犯罪抑制効果はほんとうにあるのか。

 大雨が続いている。正午段階で12人の方が亡くなっているとの報道。54人が安否不明だ。自衛隊の災害出動があちこちで始まっている。避難所生活を余儀なくされている人たちも多い。

 横浜は風が強いが、雨はほとんど降っていない。曇天で気温も高くない。
 

   今朝も境川河畔を散歩。
  

   カワウの単独行動に遭遇。
   カワウは群れて飛んでいることが多いので、珍しい。「羽色は全身褐色がかった黒色」などとものの本には書かれているが、ほぼ黒である。目元から下が黄色い。
   水面を進んでいくときは首をひょこひょこと突き出していく。なんともユーモラスな感じ。
 カワウは朝の2時間ほどの間に魚を食べるのだという。今日はちょうどその時間にあたった。
   川下に向かう私たちの歩くスピードとほぼ同じスピードで潜る。この潜水力がすごい。20秒以上潜る。個体によっては70秒も潜るつわものがいるのだとか。このあたりに顔を出すだろうと見定めていると、それよりずっと先の方で顔を出す。
 顔を出したとたん、口にくわえてぴちぴちと跳ねている魚を呑み込む。また潜る。顔を出す。魚を呑み込む。3度繰り返した。
「よく食べるねえ」などと感心していたが、カワウは体重1㎏当たり262gも食べるのだとか。ごく普通のカワウが体重2㎏ぐらいだとすると、一日に500gの魚を食べることになる。

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 そう考えると、素早く潜って何度も採食を繰り返すのも納得できる。ちなみにウミウはカワウより一回り大きい。
 ウミウというと、丸木美術館の丸木位里『ウミウ』の小さな絵を思いだす。荒波が打ち寄せる岩の上に小さなウミウが一羽。水墨画である。『原爆の図』の美術館であるが、こうした小品に何とも言えない味わいがある。写真で紹介できないのが残念だが。

 

 昨日は、友人のお見舞いに千葉の検見川浜まで出かけた。駅に着いた時には気温が20℃くらいだったろうか。少し肌寒い。思わず長袖のシャツの袖のボタンをしっかりしめてしまった。
待ち合わせた友人とともに、迎えに出てくださったお連れ合いと合流。車で病院まで送っていただいた。当の病人は、術後、順調に回復。小一時間ほど雑談をして辞去。
このまま帰るのも‥ということで、二人で京葉線を新木場で有楽町線に乗り換え、月島で降りる。佃島の方へ5分ほど歩く。あてのない呑み屋さがし。

 あるものである。一間ほどの間口の二階建て、小体なしもた屋。屋号は江戸家。口開けのようだ。今日は燗酒。ぬる燗である。 

そう伝えると、はいとすぐに返事がくる。

 来ない場合がある。あれはいつだったか某チェーン店で「ぬる燗をお願いします」と言ったら、若い男の店員が「熱燗じゃないんですか」。「いや、熱くしないでちょっとだけ温めるの」というと、ひとしきり考えている。「ぬる燗」というものにいまだ遭遇したことがないようである。

 そこで彼は考えた。自分の理解できる範囲でこの注文に応えようと。そうして出た結論が
「熱燗のぬるめ一本!ご注文いただきました!」。
 それでは燗冷まし寸前、酒がかわいそうだ。

 この店で美味しかったのは、スズキや地だこだけではなく、いかの丸焼き。かなり大ぶりのするめが姿で焼かれ、ワタに少し味付けしたソースにつけて食べる。
もんじゃばかりがもてはやされる月島になかなか良い店がある。
しもた屋の路地には黒猫が一匹歩いていた。

 

 昨日、オウム真理教の死刑が執行された。7人。テレビでは執行が確認されるとその都度死刑囚の写真に「執行」というカードを貼っている。選挙の特番か?賢い人たちが   テレビをつくっているのだろうに、酷いものだ。
 今なぜこれほど大量の死刑を執行しなければならなかったのか。


 死刑というと、吉村昭原作の『休暇』(2007年・日本・115分・小林薫主演、門井肇監督)という映画を思い出す。原作は短いのだが、緊張感のある佳作だった。

 遺体を支えた手の感触を感じさせる映画だった。

 死刑の実態を刑務官の側からとらえたものはほかにないのではないか。死刑のシーンで印象に残っているのは、『グリーンマイル』の電気椅子、歌手ビヨークを主役にした『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年・デンマーク/ドイツ・140分)の絞首刑か。後者はつらい映画だった。

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 死刑が犯罪を抑制する効果がないことは、学問的にも証明されている。この国では、死刑はやむを得ないと考える人が8割とか(2014年政府調べ)。

私がみた2018年上半期の映画、極私的絶対評価と寸評。じっくりと触れたいものは別にしてその④

 朝から激しい雨。高知、京都では自衛隊災害派遣要請が出ている。高知・馬路村魚梁瀬では900ミリを超える雨量。京都では桂川が増水。渡月橋の水位も上がっている。  長良川の鵜飼いの船が避難している様子がテレビに映ったが、そこが川なのか道路なのかわからないほど。

 

 文科省前科学技術・学術政策局長が東京医科大からの受託収賄で逮捕。次官候補だったとか。

 ついこの間、次官がセクハラで辞めた。

 3月だったか人事異動案が省内に一斉メールで配信されるというのもあった。

 現大臣が公用車で個室ヨガに通っていたというのも。

 元高等教育局長の早稲田への天下り、それにともなう前川次官の辞任・・・。もうボロボロだ。

 

 文科省交渉に行くと、最近は若い官僚らが「文科省も頑張っています。応援してください!」なんてあっけらかんと言う。財務省との予算折衝ではいつも軽くみられ、値切られるのが文科省。このところ森友問題で財務省も評判がた落ちなので、どっちもどっち・・・。そんな時にまた文科省がポイントをあげてしまった。

 若い官僚は上層部のこういう問題をどう見ているのだろうか。省内には語り継がれるさまざまな伝説があるというが、この一年でどれほど伝説が増え、消えたか。
それにしても贈収賄というのは昔から構造は簡単。

 息子の入試に下駄をはかせてもらう代わりに、自分の仕事で便宜をはかる。汚職は人のふんどしを自分のものと思い込んで着けてしまうところから始まる。2月にうちの近くの横浜・青葉郵便局の郵便部長が郵便代行業者の発送部数を少なく見積もり、その見返りに接待を受けていたのもまさに卑近な例。

 日大の学長は、自民党の副幹事長のようなものだったが、東京医科大学では理事長と学長二人がタッグを組んで収賄=点数のかさ上げを行ったとか。これも古臭い。こういうことができないようリスク管理がなされているのが普通だと思っていたが。 

 

 権力は腐る。もっているだけで腐る。
 

 やっている本人たちは、みなバレないと思っている。そこがおかしい。麻痺してくるのだろうか。寝覚めが悪いということはないのであろうか。

 息子の出来が多少悪くても、自分が収賄で逮捕されるより、次官になった方がいいに決まっている。いや捕まらなければ10年後には息子は医者、父親は次官を終えて2度目の天下りの時期に。その方がいいか。

 ありきたりだが、天網恢恢疎にして漏らさず、意外なところから漏れるのが悪事である。

 

 前川喜平元文部事務次官広島市で9月に講演会。広島市教育委員会広島県教育委員会ともに後援を断ったという。県教委の理由は、前川氏の発言が政権批判が中心だからとのこと。講演会の地元廿日市市は後援を受託。3者で判断が分かれているからというのが広島市教委の理由。

 広島県教委の教育長は、横浜の元民間人校長の平川理恵氏。


㊲ 消された女(2017年・韓国・91分・原題:Insane・監督イ・チョルハ)★★
 時々韓国映画には、どこに向かっているのかよくわからないものがある。この映画もつくりがよくわからなくて困った。私の読み取る能力が低いのか。謎解きがむずかしい。

㊳ 北の桜守(2018年・日本・126分・吉永小百合・監督滝田洋二郎)★★
 期待はしていなかった。吉永小百合の映画はつまらないというのが、私の中での定説だ。『キューポラのある街』(1962年浦山桐雄)が最高傑作だなんて言ったら怒られるかもしれないが、実際、年齢を経れば経るほど彼女の映画はつまらなくなるような気がする。今度のこの映画も、2世代を演じ分けるのだが、若い方には当然にも無理があり、老いの方には、老いにまとわりつくような臭い、匂いが全く感じられない。美しさを保とうとするあまり、当たり前の人の存在のリアリティが失われているのだ。

 『ニューヨーク眺めのいい部屋』や『ルージュの手紙』のダイアン・キートンカトリーヌ・ドヌーヴ、『さざなみ』『ベロニカとの記憶』のシャーロット・ランプリングのような好悪入り混じった老いの味わいのようなものを彼女に期待するのは無理なことなのだろうか。彼女自身、「吉永小百合」をこわしてみたいと思うことはないのだろうか。
 映画は、「桜守」という発想に現実味が感じられなし、息子役の堺雅人が人物造形を意識しすぎて不自然、篠原涼子に至っては浮いているようにしか見えなかった。その父親役の中村雅俊も。

北の三部作と銘打って戦争体験がテーマとなっているのだろうが、どうにも伝わってくるものが弱い。小笠原丸事件も含めて歴史的な面が後景に引っ込み、吉永小百合演じるてつさんだけ不自然に前に出てくる。演技は上手なのだから、使う方がもっと大胆になったらいいと思う。

 吉永小百合という女優をいつまでも箱入り娘にしたまま年を重ねさせるのは気の毒だ。

㊴ バケツと僕!(2017年・日本・106分・里谷和人・神島大吾・監督石田和彦)★★ 
 知的障害で盗癖をもつバケツというあだ名の少年と、バケツが暮らす養護施設で働くことになった神島という青年のかかわりだが、あまり面白くない。いろいろなテーマが中途半端なままで響いてこない。バケツ役の里谷和人という演歌歌手の演技が自然でよいが、生かされていないと感じた。
 
㊵ 万引き家族(2018年・日本・120分・リリー・フランキー安藤サクラ・監督是枝裕和)★★★★★
 別途


㊶ 焼き肉ドラゴン(2018年・日本・127分・キム・サンホ/イ・ジョンウン・鄭義信監督)★★★★
 別途


㊷ ニホン国VS泉南石渡村(2017年・日本・215分・原一男監督)★★★★★
 別途


㊸ RAILWAY(2010年・日本・130分・中井貴一錦織良成監督)★★
 中井貴一一畑電車など島根のローカルの雰囲気は良いが、それによりかかりすぎていて、ただただ長く感じてしまう。脚本が通俗的


㊹ オケ老人(2016年・日本・119分・杏/笹野高史細川徹監督)★★
 町のダメオーケストラが、偶然若い女性(杏)の指揮を迎えて成長するというありがちな話。役者がみな達者なので見入ってしまうが、アテレコ演奏の場面が残念。音楽映画は難しい。西田敏行の『マエストロ!』(2015年)もつまらなかった。『オーケストラ!』(2009年)は、面白かった。

 

㊺ 大阪バイオレンス3番勝負外道(2012年・日本・81分・石原貴洋監督)★★★
 偶然見たAmazonプレミアムビデオ。カメラに不思議な魅力がある。脚本も独特。

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㊻ 特別捜査 ある死刑囚の慟哭(2016年・韓国・121分・原題:PROOF OF INNOCENCE・キム・サンホ・チョン・ユンス監督)★★★
 レンタル。最後までみたけれど、今一つパッとしない。「ある死刑囚の慟哭」というサブタイトルもいただけない。ただ、無実の罪で死刑囚とされるタクシー運転手の役のキム・サンホは、あまり気にもならなかったのだが、この間封切られた『焼き肉ドラゴン』で戦争で片腕を失った在日の焼き肉店店主を重厚に演じていたのに驚いた。魅力的な俳優だと思う。

㊼ アウトオブレイジビヨンド(2012年・日本・112分・三浦友和北野武監督)★★ 

 レンタル。趣味の問題というか、以前から北野武の映画は好きではない。これも同様。ただでかい声で脅しつけるうシーンがやたらに多い。

㊽ 光(2017年・日本・137分・井浦新・三浦しおん原作・大森立嗣監督)★★
 137分、長かった。つらい。

㊾ お父さんと伊藤さん(2016年・日本・119分・リリー・フランキー/藤竜也/上野樹里タナダユキ監督)★★★
 Amazonプライムビデオ。暇つぶしにみた映画。力が抜けていて、気が利いていて、おもしろかった。リリー・フランキー、どんな形にも変わりうる人、変わらない人。藤竜也の元教員の父親役も好対照でよかった。タナダユキという監督は面白い映画をつくる人。
 
㊿ 続・深夜食堂(2016年・日本・108分・小林薫松岡錠司監督)★★★
 Amazonプライムビデオ。私は2007年にビッグコミックオリジナルで連載が始まってからの読者だが、短編の読み切り漫画としてほとんど毎回「いいなあ」と思う。テレビドラマもよかった。そして映画もよい。それぞれ技法としては全く違うのに、原作の良さがよく出ている。作者の名前がよい。安倍夜郎

 

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時々会いに行きたくなる万治の石仏

 

私がみた2018年上半期の映画、極私的絶対評価と寸評。じっくりと触れたいものは別にしてその③

    今朝も明け方から風が強い。締め切ったテラスの外からかすかに風の音が聞こえて目が覚めた。カーテンを開けると庭木がひどく揺れている。

 梅雨明け宣言以降、毎日のように強風が吹いて雨が降る。台風の影響とはいうけれど、この不安定さに梅雨明け宣言はなじまないような気がする。

 

 早朝、境川河畔。このところ鳥の数が減っているように思う。そういう時期なのだろうか。今朝はツバメをみた。親子だ。春に産まれて巣立ちを迎え、少し大人になったくらい。春に母はツバメがしきりに水面を切るように飛んでいたのだが。

 大ぶりのアオサギ。久しぶりに見た。強風の中、いつもならじっと動かず川の中に立っているのだが、今朝は首を振っている。よく見ると口元に15cmほどの魚。黄色味を帯びた斑紋様が見える。色からすると、私にはアユのように見えた。

 気になって今ネットで境川水系調査を見てみたら、大和橋付近でアユがとれるとある。大和橋はここから1㎞もない。

 鳥は魚を呑み込むときに、ウロコがのどに引っかからないように頭の方から呑み込む。どの鳥もそうだ。ペンギンも。アオサギはくちばしが長いから、この「持ち替え」が大変なようだ。

 何度も首を振っているうちに、ようやくアユの頭のほうを長いくちばしでとらえたようで、顔をあげてグイっと(そんな音は聞こえないが)呑み込む。30cmほどもある細いのどをアユのふくらみが下っていくのが見える。

 

 こういうシーンに遭遇すると、得をしたような気分になるが、小動物たちにとってはこの穏やかな二級河川境川も激しい争闘の場、人間だけが風流を気取っている。
同居犬らいと同種の犬を見かける。
 
さて下半期の映画寸評の3回目。★には次のような意味がある。一般の映評を無視した極私的絶対評価、何の参考にもならないかもしれないが。

★★★★★・・・こういう映画は年4~5本かな。おすすめ!
★★★★・・・・アタマとココロを十分に刺激された。
★★★・・・・・最後まで飽きずに映画を楽しめた。ギリギリセーフ!もうひとつ何か      欲しい。
★★・・・・・・なんだかなあ、こんなんでいいのか?後悔寸前!!
★・・・・・・・見たことを忘れてしまいたい。

 
㉚ スリービルボード(2017年・イギリス・116分・原題:Three Billboards Outside・    フランシス・マクドーマンド・監督マーティン・マクドナー)★★★★ 

 アメリミズーリ州の田舎町、娘を殺された母親が、道路に3枚の看板を立て警察に抗議する。それが発端となり、母親と警察、住民の間に大きな溝ができていき、トラブルが頻発していく。犯人捜しという一面もあるが、母親、保安官、保安官の妻、レイシストの警官、住民などとの心理的な葛藤がみもの。ほとんど笑うシーンのない母親役のフランシス・マクドーマンドがいい。勧善懲悪の西部劇とは真逆の人間模様。登場人物にそれぞれ深みがある。

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㉛ ブランク13(2017年・日本・70分・高橋一生松岡茉優・監督斎藤工)★★ 

 役者が達者だし、脚本も面白い。でもなんだか独りよがりに見えてしまう。伝えたいと思うことと伝わることの間はけっこう距離がある。70分と短い映画なのに気持ちがつながっていかない、ついていかない感じがした。

㉜ 長江愛の詩(2016年・中国・115分・原題:長江図 Crosscurrent・監督ヤン・チャオ)★★
 既述

㉝ シェイプオブウオーター(2017年・アメリカ・114分・原題:The Shape of  Water・サリー・ホーキンス・監督ギレルモ・デル・トロ)★★★★
 映画のなかにありえない世界をリアルにつくりだしてしまう。そんな映画いくらだってあるのだけれど、これは群を抜いていると思う。資料を見ると1962年冷戦下のアメリカが舞台。政府の極秘の研究所で働く聾者のイライザ(サリー・ホーキンス)が主人公。ある時運び込まれてきた不思議な生き物。イライザはこの生き物と恋に落ちていく。全くほころびの見えない映画に最後まで惹きこまれた。美術と音楽が素晴らしい。

㉞ 苦い銭(2016年・フランス香港・163分・原題:苦銭/BITTER MONEY/ARGENT AMER・監督ワン・ビン)★★★★
 既述

㉟ 軍中楽園(2014年・台湾・133分・原題:軍中樂園 Paradise in Service・監督ニウ・チェンザー)★★★

 この映画、2014年につくられながら今まで日本では公開されなかった。中台の台湾側の前線である金門島につくられた831部隊の特約茶室。いわゆる慰安所。1950年から90年代まで実際にあったという。台湾政府からすれば、世界の人権状況に比して隠しておきたい事実であることから、公開が延びたのかもしれない。その意味でも貴重な映画。

 ただ、物語としては私には平板に思えた。それと、そこで働く女性たちのある意味の自由さ、経営する部隊との良好な関係など、作中の男女の物語が先行するぶん、どれだけ当時の雰囲気を映し出しているのかと気にかかった。やや期待外れ。

㊱ タクシー運転手 約束は海を越えて(2017年・韓国・137分・原題:A Taxi Driver・ソン・ガンホ・監督チャン・フン)★★★★

 光州事件を扱った商業映画『光州5・18』は、武器庫から武器を奪った市民と軍との銃撃戦までを描いているが、本作はそこに至る光州9日間の前半部分が舞台となっている。

 1980年のソウル。一人で子育てをするタクシー運転手マンソプは、海外から初めて光州に入るドイツ人記者ピーターを乗せて光州に入る。お金が欲しいがため他のタクシー運転手から強引に奪った仕事である。

 137分、とにかく飽きさせない。はからずも渦中の人となってしまった市井の人々の、学生への親近感、軍への憎悪、怒り、弱さ、ずるさ、そして闘うことで取り返す人としてのプライドのようなものが、ソン・ガンホの庶民的な風貌とセリフを中心に語られる。

 脇役もいい。記者役のトーマス・クレッチマン、光州の運転手役のユ・ヘジン。 

 80年当時の光州の雰囲気がよく伝わってくる。

 私が初めて韓国に行ったのは88年のことだが、ソウルは発展途上。まだ荒涼としているところがあった。プサンなどの田舎は、日本の昭和30年代のようでこの映画の中の光州に近く、人が住む田舎の穏やか雰囲気があった。画面のあちこちにそれが感じられるぶん、軍の酷薄な動きが対照的に映った。

 国家にとっては恥部ともいえる光州事件を、37年経って商業映画として市民の側から描くことは、それほどたやすいこととは思われない。悲壮感もあるが、ユーモアがあるのがいい。何よりそこに生きていた人たちへの敬意が伝わってくる。

 そういえば2014年の韓国映画『明日へ』もよかった(この邦題にはがっかり。原題は『CART』スーパーマーケットのカートのこと)。こちらは、スーパーのパートタイムの主婦たちが解雇撤回を求めて闘う、実話に基づいた映画だが、声高に理屈や正義を叫ぶのではなく、生活している者の視点から権力に立ち向かう自然な情念が描かれていた。日本では抵抗の歴史や労働運動はなかなか商業映画にならない。ダルデンヌ兄弟の『サンドラの週末』(2014年・ベルギー)などもヨーロッパの労働現場を舞台にしているのだが。

「2018上半期にみた映画」は次回まで。f:id:keisuke42001:20180705145732j:plain

本文とは何の関係もありません。佐野ラーメンの日向屋。かなりいいです。
  

私がみた2018年上半期の映画、極私的絶対評価と寸評。じっくりと触れたいものは別にしてその②

「2018年上半期に封切られた映画」ではなく、2018年の1月~6月の間にみた映画のまとめ。

 

⑰ モラトリアムたま子(2013年・日本・監督山下敦弘前田敦子・78分)★★★ 

 前田敦子という人は独特の存在感がある。父親役の康すおんという役者も。地方都   市のスポーツ用品店を営む離婚した父親とモラトリアムのたま子の日常を淡々と丁寧に描く。こういう親子っているというリアリティ。出ていってほしいけどそういえない父親。出ていきたくないけれどそう言ってほしい娘。何も起きない映画だけど、だからいい。


⑱ リピーテッド(2014年・英米仏・ローワン・ジョフイ監督・ニコールキッドマン・      

 92分)★★★

 事故の後遺症で一日しか記憶のもたないクリスティーン。毎朝夫に起こされると、そこから新たに記憶を再生する。クリスティーンは夫のことも覚えていない。はたしてこの夫は…。面白いのだけれど、今一つキレがない感じ。


あゝ、荒野(前編)(2017年・日本・岸善幸・寺山修司原作・菅田将暉・157分・監 督岸善幸)★★
 あゝ、荒野(後編)(2017年・日本・岸善幸・寺山修司原作・菅田将暉・147分・同 上)★★

 菅田将暉日本アカデミー賞新人賞を前編で受賞。後編を入れないのは何か意味があるのだろうか。
さすがに監督賞にも作品賞にも入っていない。合計200分以上で、通俗的で冗長。人物像も類型的。寺山修司原作という触れ込みもあまり生きていない。


㉑ ルアーブル靴みがき(2011年・フィンランド・ドイツ・フランス・93分・原題: 

  LE HAVRE・監督カウリスマキ)★★★★
  既述


㉒ ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命(2017年・チェコ・イギリス・ アメリカ・127分・原題:The Zookeeper's Wife・ニキ・カーロ)★★★★
  別途


㉓ ベロニカとの記憶(2017年・イギリス・108分・原題:The Sense of an Ending(終わりの感覚)・シャーロット・ランプリング・監督リテーシュ・バトラ)★★★★
  既述


㉔ 希望のかなた(2017年・フィンランド・98分・原題:Toivon tuolla puolen(フィン   

  ランド語で「私はそれを超えて願う」・監督カウリスマキ)★★★★
  既述

 
㉕ 永遠のジャンゴ(2017年・フランス・117分・原題:Django・監督エチエンヌ・コマール)★★★★ 別途


㉖ ルージュの手紙(2017年・フランス・117分・原題:The Midwife(助産師)カトリーヌ・ドヌーブマルタン・プロボ監督)★★★★

 時間調整に見たのだが、カトリーヌ・ドヌーヴ(ベアトリス)のわがままで図々しくかつ繊細で心優しい老女ぶりが秀逸。つい惹きこまれてしまった。カトリーヌ・フロ演じる血のつながらない娘クレールとのやり取りがいい。パリで単身で働く助産師クレールの生活にリアリティがある。


㉗ ゴーギャンタヒチの旅(2017年・フランス・102分・原題:Gauguin - Voyage de Tahiti・監督エドゥアルト・テルック)★★★ 

 ゴーギャンタヒチへのあこがれと失意、タヒチの娘テフラとの出会いと心離れ。絵にかける気概と生活のリアリティの中で負け続けるゴーギャン。しかし映画としてはピンとこなかった。
  
㉘ デトロイト(2017年・アメリカ・142分・原題:Detroit・監督キャスリン・ビグロー)★★★ 

 1967年のデトロイト暴動を再現。白人警官による不当な取り調べを克明に描く。死者43名、負傷者1000人以上にのぼる暴動の中で起きたでっち上げ。黒人の若者たちを心理的に追い詰める警官役のウイル・ポールターの演技が凄みがある。監督は、キャスリン・ビグロー、「ハートロッカー」をつくった監督である。トランプ政権下でこそつくられた価値がある一編。ただ、まとまりという点で今一つ。

f:id:keisuke42001:20180704164903j:plainデトロイト」から


㉙ はじめてのおもてなし(2016年・ドイツ・116分・原題:Willkommen bei den(ようこそ)・監督サイモン・バーホーベン)★★★★
  既述

 

f:id:keisuke42001:20180704165411j:plain横浜に戦後まもなくできた「市民酒場」が、現在3軒残っている。これはみのかん。

『美しい顔』HP上で無料公開。これはまっとうな反撃かそれとも強気の逆切れか。私は作品のもつ力を信じている。

 6月21日に、群像新人賞を受賞した北条裕子氏の「美しい顔」について、私なりの視点から触れた。

   6月29日に講談社は、当該作品は複数のノンフィクション作品を参考にしていたにも関わらず、参考文献として掲載していなかったとして著者らに謝罪したとの報道があった。なんだかすっきりしない説明だなと思った。

   その後、講談社は新潮社やノンフィクション作家らと協議を続けているとのことだったが、今朝7月4日の朝刊では、講談社が(今回の問題が)「作品の根幹にかかわるものではなく、著作権法に関わる盗用や剽窃などには一切当たらない」として、「評価を広く読者と社会に問う」として近日中に当該作品をホームページ上で無料公開することを決定したことが報じられた。

   私は、「美しい顔」の単行本化が遅れるか取りやめの可能性もあるし、日本文学振興会芥川賞候補作から外すかもしれない、そうすると作品が読めなくなるかもしれないと思い、6月30日返却予定の「群像6月号」を数部コピー、友人らへ郵送した。 

   今朝、その友人から「美しい顔」がHP上に公開されるそうだというメールが届いた。コピーは無駄になったが、HP上でたくさんの方にこの作品が読んでもらえるのはうれしいことだ。

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   ネット上では、すでに北条氏のプライベートなことにまで、話題が広げられている。こういうのを炎上というのだろうか。作品に対しても「盗用」「剽窃」「コピペ」だと攻撃する向きが多い。新聞報道レベルでの酷似部分を考えると、ほとんど作品を読んでいない人たちだとわかるいちゃもんだと私は思う。報道されている類似点だけを見れば、たしかに似ているけれど「盗用」「剽窃」といわれまでのことはないのではないかと私には思われた。

 ただ 受賞作を確定する段階で、内容の点検や作家本人との面談がきちんと行われなかったのは、明らかに群像編集部のミス。それも初歩的なミス。これはどこまでいっても言い訳のできないミスだと思う。

   そのミスを承知で今日の声明は、新潮社の「単に参考文献として記載して解決する問題ではない」とする見解に対して「…小説という表現形態そのものを否定するかのようなコメント」と批判、「…著者北条氏は大きな衝撃と悲しみを覚え、編集部は強い憤りを抱いております」としている。 

    ミスはしたけれど、そちらのその言い方はないだろうと剣突を食わせている。これを強気の逆切れとみるか、まっとうな反撃とみるか、悩ましいところだ。なぜなら、これは群像新人賞作品の問題というより、以前なら実より名だった芥川賞の、今ではビッグマネーが動くビジネスの話でもあるからである。

   講談社側がHP上に作品を無料で公開すれば、単行本はつくったとしても売れない。それを覚悟でまず多くの人たちに作品を読んでもらい、これがどれほどの盗用問題なのか判断してほしいということなのだろう。

    7月18日に選考会が開かれる芥川賞選考会でこの作品が選ばれなければ、講談社は商機をすべて失うことになる。素人目からすれば、これは大博打のようだ。これで新潮社との間、ノンフィクション作家との軋轢が消えるわけでもない。争いはすでに感情的になってきており、泥沼化していく予感がする。 

   それでも、私はどんな形であれ、「美しい顔」をたくさんの人たちに読んでほしいと思う。私自身、この作品から並々ならぬ力を感じたからだ。そのうえで盗用問題がどれほどの意味をもつのか、考えてほしい。これは現代の文学をめぐる、とりわけ3・11以後の文学の重要な問題である。

f:id:keisuke42001:20180704152553j:plain同居犬”らい” 桜の木の下で。現在夏毛に変身中。


 

私がみた2018年上半期の映画、極私的絶対評価と寸評。じっくりと触れたいものは別にしてその① 

   7月になった。暑い。もう梅雨明けだって。
   このブログ、始めて1か月。使い方もよくわかっていないが、文章を書いてアップすることだけはなんとか出来ている(と思う)。写真の使い方やカテゴリーなどよくわからないのだけれど。

   ブログの目的の一つは映画を記録すること。私はレンタルも含めて月に7~8本の映画をみる。映画は本と違ってなかなかみなおすことはできないしやらない。
とんでもないときに映画のシーンがふとよみがえるときがある。風呂に入っているときとか。そんなに前に見た映画ではない。最近だから思い出すのだ。

   おいおい、これって何の映画だっけ?

   いい映画とは限らない。前後の脈絡もなく突然よみがえるのだ。私だけではないと思うのだが。

  「そうそうそうだったあれはね」と視線を虚空にさまよわせ自問、時間はかかるけれど、たいていは思い出せる。1~2か月以内にみた映画だからだ。ほっとする。まだボケていない、と思う。  

 が、そうもいかないときもある。シーンもセリフのようなものも浮かぶのに、どうしても思い出せないのだ。たしかにみた映画なのに、特定同定できない・・・。悲しい。

 2018年になって見た映画ぐらい基本的な記録と寸評程度は残しておかないと、どんどん闇のかなたへ消えていってしまう。そこでブログ。ブログが衆人環視?かどうかはわからないけれど、書くには緊張もする。一人だと長続きしない。

 記録しておくのは、タイトル、制作年、分、出演、監督、わかれば原作、海外作品については原題をいれる。2018年上半期で見たものを印象をはっきりさせるために★評価をしてみることにした。極私的絶対評価(笑)。巷間の評価とは分かれるところも多々あるはず。
 それではその①。
 
 ★★★★★・・・こういう映画は年4~5本かな。おすすめ!
 ★★★★・・・・アタマとココロを十分に刺激された。
 ★★★・・・・・最後まで飽きずに映画を楽しめた。もうひとつ何か欲しいけど。
 ★★・・・・・・なんだかなあ、こんなんでいいのか?後悔寸前!!
 ★・・・・・・・見たことを忘れてしまいたい。 
 
① We Love Television(2017年・日本・110分・萩本欣一・監督土谷敏男)★★★
76歳(当時)になる欽ちゃんのドキュメント。TVディレクターの土屋がある日、「また視聴率30%の番組を作りましょう」と欽ちゃんのところへ。その番組制作過程を欽ちゃんの生活にひたすら張り付いて追い続ける。番組は成功したのか。一人暮らしのように見える欽ちゃんのところどころににじむ老い。カメラは結構容赦ない。若者や出演者との気持ちのずれ、コントのすれ違い。あえてTVカメラの前に立って自分をさらけ出そうとするサービス精神が、見ていて少し辛い。

② ナミヤ雑貨店の奇跡(2017年・日本・129分・監督廣木隆一東野圭吾原作)★★
全体に冗漫な感じ。時代考証など凝っているのはわかるけれど、はなから設定に無理があるように感じてしまうのは、私がひねているから?

嘘八百(2018年・日本・105分・中井貴一・監督武正晴)★★★
中井貴一が出る映画はつい見てしまう。詐欺の話。うらぶれた詐欺まがいの骨董屋を演じる中井は、前日の酒が残る演技がいい。眼が濁り、ほっぺたが垂れ下がり…もしかして本当に深酒か?と思わせるほど。ストーリーには無理があるが、最後まで楽しませてもらった。

④ ニューヨーク眺めのいい部屋売ります(2014年・アメリカ・92分・モーガン・フリーマン/ダイアンキートン・監督リチャード・ロンクレイン・原題:5 FLIGHTS UP)★★★★
モーガン・フリーマンとダイアンキートンの会話がどこまでも自然でリアル。ストーリーもよくできていて、最後まで楽しめる。無理に長くしておらず、とにかくキレがある。モーガン・フリーマン、先月セクハラの告発を受けた。#metooだ。最近の映画『ジーサンズはじめての強盗』や『グランドイリュージョン』の撮影の時のことだとか。80歳のモーガン、性的ないたずらではなく場を盛り上げるための冗談だったというが、あとになっての申し開きには効果はない。

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三里塚イカロス(2017年・日本・138分・監督代島治彦)★★★★
これについては別途。

婚約者の友人(2016年・フランス/ドイツ・113分・原題:FRANZ・監督フランソワ・オゾン)★★★★
第一次大戦後のドイツ。戦死したドイツ兵と友人だったと名乗るフランスの青年が、ドイツを訪れる。仏独の戦後の憎悪渦巻くの空気のなかで、寡婦となった女性と青年が・・・。と書くとありきたりだが、ちょっと違う。とにかく画面がすごい。スクリーンからさまざまな匂いがしてくるような。名作だと思う。

⑦ 日曜日の散歩者~忘れられた台湾詩人たち(2015年・台湾・監督ホワン・ヤ―リー・162分) ★★★★★
162分、楽しくみたというわけではない。参ったという感じ。1933年日本統治の台湾でモダニズム詩人団体が結成される。日本人も台湾人もともに学ぶ。日本を経由して入ってくる当時のシュルレアリスムジャン・コクトー西脇順三郎など、これらを日本語で学び表現するしかなかった台湾の詩人たち。彼らの思いが、ほとんど説明もなくかなり大胆だけど、透明感をもって表現されていると思った。
ギリギリのところで「難しい映画」を回避しているように思われた。

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⑧ 52Hzのラヴソング(2017年・台湾・監督ウエイ・ダーション・109分)★★
ミュージカル映画は嫌いではないが、ついていけなかった。

⑨ 羊の木(2017年・日本・監督吉田大八・126分)★★
これはがっかり。原作を引っ張り出して読みなおしてから行ったのだが、漫画である原作に引きずられすぎていて、よくわからないものになってしまった。『ジニよさらば』と同じ轍。ともに印象に残るセリフやシーンはあるのだけれど。

⑩ Every Day (2015年・日本・監督手塚悟・95分)★★
思いがこもっているのは感じるけれど、それ以上でも以下でも。

マンハント(2018年・中国・監督ジョン・ウー・110分)★★★
文句なしに楽しめた。一時代前のアクション映画。独特の日中の文化のまじりあい。リズム、スピード、アクションの迫力、ジョン・ウー監督の面目躍如。

超高速!参勤交代リターンズ(2016年・日本・佐々木蔵之介・119分・監督本木克英)★★★
前作も面白かったが今作もダレずにおもしろかった。松竹喜劇映画の遺伝子が確実に伝わっている。

否定と肯定(2016年・アメリカ/イギリス・監督ミック・ジャクソン・110分)★★★★
これは別途。

⑭ インサイダーズ 内部者たち(2015年・韓国・130分・ウ・ミンホ監督)★★★
どんでん返しまで行きつぐ暇なく惹きこまれた。政治家と検察とマスコミ、三つ巴の金をめぐる争い。ペク・ユンシクという老練な役者がいい味を出している。この人、韓流ドラマのホジュンで、父親役をやっていた人。善人役が多いようだが、ここではすさまじい悪役ぶり。

⑮ わたしたち(2016年・韓国・94分・原題:The World of Us・監督ユン・ガウン)★★★★★
別途。

南極料理人(2009年・日本・監督沖田修一・125分)★★★
こういう映画、嫌いではない。達者な役者が集まって、広がりのない(ただただ広がっていく南極の平原が舞台だが)変わり映えのしない極限の状況、そうかもしれないと思わせられるところが随所に。

 

f:id:keisuke42001:20180703170524j:plain本文とは関係ありませんが…本物です。