私がみた2018年上半期の映画、極私的絶対評価と寸評。じっくりと触れたいものは別にしてその④

 朝から激しい雨。高知、京都では自衛隊災害派遣要請が出ている。高知・馬路村魚梁瀬では900ミリを超える雨量。京都では桂川が増水。渡月橋の水位も上がっている。  長良川の鵜飼いの船が避難している様子がテレビに映ったが、そこが川なのか道路なのかわからないほど。

 

 文科省前科学技術・学術政策局長が東京医科大からの受託収賄で逮捕。次官候補だったとか。

 ついこの間、次官がセクハラで辞めた。

 3月だったか人事異動案が省内に一斉メールで配信されるというのもあった。

 現大臣が公用車で個室ヨガに通っていたというのも。

 元高等教育局長の早稲田への天下り、それにともなう前川次官の辞任・・・。もうボロボロだ。

 

 文科省交渉に行くと、最近は若い官僚らが「文科省も頑張っています。応援してください!」なんてあっけらかんと言う。財務省との予算折衝ではいつも軽くみられ、値切られるのが文科省。このところ森友問題で財務省も評判がた落ちなので、どっちもどっち・・・。そんな時にまた文科省がポイントをあげてしまった。

 若い官僚は上層部のこういう問題をどう見ているのだろうか。省内には語り継がれるさまざまな伝説があるというが、この一年でどれほど伝説が増え、消えたか。
それにしても贈収賄というのは昔から構造は簡単。

 息子の入試に下駄をはかせてもらう代わりに、自分の仕事で便宜をはかる。汚職は人のふんどしを自分のものと思い込んで着けてしまうところから始まる。2月にうちの近くの横浜・青葉郵便局の郵便部長が郵便代行業者の発送部数を少なく見積もり、その見返りに接待を受けていたのもまさに卑近な例。

 日大の学長は、自民党の副幹事長のようなものだったが、東京医科大学では理事長と学長二人がタッグを組んで収賄=点数のかさ上げを行ったとか。これも古臭い。こういうことができないようリスク管理がなされているのが普通だと思っていたが。 

 

 権力は腐る。もっているだけで腐る。
 

 やっている本人たちは、みなバレないと思っている。そこがおかしい。麻痺してくるのだろうか。寝覚めが悪いということはないのであろうか。

 息子の出来が多少悪くても、自分が収賄で逮捕されるより、次官になった方がいいに決まっている。いや捕まらなければ10年後には息子は医者、父親は次官を終えて2度目の天下りの時期に。その方がいいか。

 ありきたりだが、天網恢恢疎にして漏らさず、意外なところから漏れるのが悪事である。

 

 前川喜平元文部事務次官広島市で9月に講演会。広島市教育委員会広島県教育委員会ともに後援を断ったという。県教委の理由は、前川氏の発言が政権批判が中心だからとのこと。講演会の地元廿日市市は後援を受託。3者で判断が分かれているからというのが広島市教委の理由。

 広島県教委の教育長は、横浜の元民間人校長の平川理恵氏。


㊲ 消された女(2017年・韓国・91分・原題:Insane・監督イ・チョルハ)★★
 時々韓国映画には、どこに向かっているのかよくわからないものがある。この映画もつくりがよくわからなくて困った。私の読み取る能力が低いのか。謎解きがむずかしい。

㊳ 北の桜守(2018年・日本・126分・吉永小百合・監督滝田洋二郎)★★
 期待はしていなかった。吉永小百合の映画はつまらないというのが、私の中での定説だ。『キューポラのある街』(1962年浦山桐雄)が最高傑作だなんて言ったら怒られるかもしれないが、実際、年齢を経れば経るほど彼女の映画はつまらなくなるような気がする。今度のこの映画も、2世代を演じ分けるのだが、若い方には当然にも無理があり、老いの方には、老いにまとわりつくような臭い、匂いが全く感じられない。美しさを保とうとするあまり、当たり前の人の存在のリアリティが失われているのだ。

 『ニューヨーク眺めのいい部屋』や『ルージュの手紙』のダイアン・キートンカトリーヌ・ドヌーヴ、『さざなみ』『ベロニカとの記憶』のシャーロット・ランプリングのような好悪入り混じった老いの味わいのようなものを彼女に期待するのは無理なことなのだろうか。彼女自身、「吉永小百合」をこわしてみたいと思うことはないのだろうか。
 映画は、「桜守」という発想に現実味が感じられなし、息子役の堺雅人が人物造形を意識しすぎて不自然、篠原涼子に至っては浮いているようにしか見えなかった。その父親役の中村雅俊も。

北の三部作と銘打って戦争体験がテーマとなっているのだろうが、どうにも伝わってくるものが弱い。小笠原丸事件も含めて歴史的な面が後景に引っ込み、吉永小百合演じるてつさんだけ不自然に前に出てくる。演技は上手なのだから、使う方がもっと大胆になったらいいと思う。

 吉永小百合という女優をいつまでも箱入り娘にしたまま年を重ねさせるのは気の毒だ。

㊴ バケツと僕!(2017年・日本・106分・里谷和人・神島大吾・監督石田和彦)★★ 
 知的障害で盗癖をもつバケツというあだ名の少年と、バケツが暮らす養護施設で働くことになった神島という青年のかかわりだが、あまり面白くない。いろいろなテーマが中途半端なままで響いてこない。バケツ役の里谷和人という演歌歌手の演技が自然でよいが、生かされていないと感じた。
 
㊵ 万引き家族(2018年・日本・120分・リリー・フランキー安藤サクラ・監督是枝裕和)★★★★★
 別途


㊶ 焼き肉ドラゴン(2018年・日本・127分・キム・サンホ/イ・ジョンウン・鄭義信監督)★★★★
 別途


㊷ ニホン国VS泉南石渡村(2017年・日本・215分・原一男監督)★★★★★
 別途


㊸ RAILWAY(2010年・日本・130分・中井貴一錦織良成監督)★★
 中井貴一一畑電車など島根のローカルの雰囲気は良いが、それによりかかりすぎていて、ただただ長く感じてしまう。脚本が通俗的


㊹ オケ老人(2016年・日本・119分・杏/笹野高史細川徹監督)★★
 町のダメオーケストラが、偶然若い女性(杏)の指揮を迎えて成長するというありがちな話。役者がみな達者なので見入ってしまうが、アテレコ演奏の場面が残念。音楽映画は難しい。西田敏行の『マエストロ!』(2015年)もつまらなかった。『オーケストラ!』(2009年)は、面白かった。

 

㊺ 大阪バイオレンス3番勝負外道(2012年・日本・81分・石原貴洋監督)★★★
 偶然見たAmazonプレミアムビデオ。カメラに不思議な魅力がある。脚本も独特。

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㊻ 特別捜査 ある死刑囚の慟哭(2016年・韓国・121分・原題:PROOF OF INNOCENCE・キム・サンホ・チョン・ユンス監督)★★★
 レンタル。最後までみたけれど、今一つパッとしない。「ある死刑囚の慟哭」というサブタイトルもいただけない。ただ、無実の罪で死刑囚とされるタクシー運転手の役のキム・サンホは、あまり気にもならなかったのだが、この間封切られた『焼き肉ドラゴン』で戦争で片腕を失った在日の焼き肉店店主を重厚に演じていたのに驚いた。魅力的な俳優だと思う。

㊼ アウトオブレイジビヨンド(2012年・日本・112分・三浦友和北野武監督)★★ 

 レンタル。趣味の問題というか、以前から北野武の映画は好きではない。これも同様。ただでかい声で脅しつけるうシーンがやたらに多い。

㊽ 光(2017年・日本・137分・井浦新・三浦しおん原作・大森立嗣監督)★★
 137分、長かった。つらい。

㊾ お父さんと伊藤さん(2016年・日本・119分・リリー・フランキー/藤竜也/上野樹里タナダユキ監督)★★★
 Amazonプライムビデオ。暇つぶしにみた映画。力が抜けていて、気が利いていて、おもしろかった。リリー・フランキー、どんな形にも変わりうる人、変わらない人。藤竜也の元教員の父親役も好対照でよかった。タナダユキという監督は面白い映画をつくる人。
 
㊿ 続・深夜食堂(2016年・日本・108分・小林薫松岡錠司監督)★★★
 Amazonプライムビデオ。私は2007年にビッグコミックオリジナルで連載が始まってからの読者だが、短編の読み切り漫画としてほとんど毎回「いいなあ」と思う。テレビドラマもよかった。そして映画もよい。それぞれ技法としては全く違うのに、原作の良さがよく出ている。作者の名前がよい。安倍夜郎

 

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時々会いに行きたくなる万治の石仏