今朝の新聞に音楽学者の皆川達夫さんが19日亡くなったとの記事。92歳。先月までNHKラジオ第一の「音楽の泉」に出演していたとのこと。死因は「老衰で」。先月まで元気に働いていた方が老衰で亡くなる。他人が云うことではないが、大往生である。

アメリカの原油が、初のマイナス価格に。

先物取引で買い手がつかない状態。1㍑換算で20円台で投げ売り。ダウ工業平均は500㌦超の下げだという。

大統領選挙どころではない。世界的な景気悪化が目の前に。

 

横浜では現在ガソリンは113円~116円。しかし出かける予定もない。買いだめの必要もない。

いままで経験したことのないことが、方々で起きている。

 

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今朝の新聞に音楽学者の皆川達夫さんが19日亡くなったとの記事。92歳。先月までNHKラジオ第一の「音楽の泉」に出演していたとのこと。死因は「老衰で」。先月まで元気に働いていた方が老衰で亡くなる。他人が云うことではないが、大往生である。

 

面識などあるはずもないが、皆川達夫さんと云えば、忘れられない思い出がある。少しだけ昔話を。

 

私とMさんは大学で合唱をしていたのだが、1974年に上野の東京文化会館小ホールで開催された『知られざる名曲コンサート』に都留文科大学室内合唱団の一員として出場したことがある。

 

このコンサートは日本合唱指揮者協会が主催し、各地から推薦された合唱団が、日本では知られていない合唱曲を演奏するもの。1970年ごろから始まったようだ。ネットで見ると、1990年にはサントリーホールで開催されている。


私たちが歌ったのは、その頃の日本ではまだあまり知られていなかったマドリガル(イタリアのマドリガーレの影響のもとにエリザベス朝のイギリスその他の国で成立した歌曲の総称)。作曲者は、トーマス・モーリーとかウイリアム・バードなど。今ではCDなどもたくさん出ていて、よく歌われるようだが、その頃は楽譜も日本では出ていなかった。

 

基本的にすべてア・カペラ。私はバスパート二人のうちの一人だった。緊張したのを憶えている。

 

東京文化会館小ホールは、灰色の屏風を横にしてうえから吊ったような反響板が特徴のホール。当時も今も変わっていない。まだ音楽ホールがあちこちにない時代、「上野の文化会館」は大・小ホールとも、クラシックを聴くホールとしては都内でも有数のホールだった。

 

その時の講師が皆川達夫さんだったのは、中世・ルネサンスの音楽がテーマだったからか。そのあたりは、ほとんど憶えていないが。

 

7~8団体が次々に歌うのだが、一団体が歌い終わると、合唱団をステージにおいて講師の皆川さんが、マイクをもってその場で感想を述べられる。その時のひとことは忘れもしない。

 

「イギリスの音が聴こえました」

 

その時指揮をされたのは、イギリス留学から戻ったばかりのカウンターテナーの有村祐輔さんだ。大学の助教授ではなかったか。

 

有村さんは当時まだ40歳そこそこ。今でこそ「日本古楽界の第一人者」と云われているが、当時はまだ若手の歌い手、指揮者、研究者。

 

今にして思えば、中世・ルネサンスバロック期の研究の専門家として一人気を吐いていた皆川さんには、有村さんを日本の古楽界で活躍させたいという思いがあっての高い評価だったのではないか。

 

そんなことは想像すらせず、NHKFMの朝の番組『バロック音楽の愉しみ』の司会をしていた皆川さん(「おはようございます、皆川達夫です」というハスキーな声だった)に褒められたと有頂天になっていたものだ。

 

その有村祐輔さんは現在87歳。現役の音楽家である。皆川さんとは5歳しか違わないことに驚く。

それほど皆川さんは早くそして長く音楽評論の世界で活躍されていたということだ。

 

皆川さんは、長崎の隠れキリシタンオラショと西洋の教会の聖歌との関連や、筝曲「六段」とグレグリオ聖歌との関連など、斬新で独特の研究を続けてこられた。

 

袖振り合うも他生の縁、である。ご冥福を祈りたい。

 

下は椅子に坐って指揮をする皆川達夫さん。このとき90歳。 逝去されたことからどなたかがアップしたのだろう。素敵な演奏である。

2020/04/21 に公開

2018年7月 立教大学グリークラブ第39回グリーフェスティバル(かつしか

シンフォニーヒルズ・モーツァル トホール)

再生時間:4:44


指揮:皆川達夫