広島市、子ども図書館現在地建て替えとバーターに中央図書館他を広島の商業施設エールエールA館(築23年の中古物件)への移転を提案。

広島の子ども図書館の移転問題、広島市が方針転換し、現在地での改築に変更された。

しかし、問題はそこで終わっていない。

この12月、広島市は検討中としてきた図書館移転問題」について、子ども図書館を残す代わりに、中央図書館他を、広島駅の築23年にもなる中古物件の商業施設エールエールA館を買い取り、そこに移転する案を突然出してきた。

子ども図書館は残すから、他はなんとかエールエールA館へといういわばバーターのようなひどい案。

 

いままでも被爆遺跡関連の保存でも、保存価値がないとか簡便な保存で済ますなど、平和文化都市の名にふさわしくない行状を続けてきているが、ここにきてそのでたらめさも極まっている。市議会の委員会などでの市の説明はあまりに稚拙。

政治的な仕掛けだけは上手で、議会に出す前に平気でマスコミにリークする。

 

それにしても、行政にとってはなぜかこれだけは譲れない事情があるらしく、こすからいやり方で移転が既定方針のようにふるまっている。カネにまつわるなんらかの政治的な駆け引きがあるような気がしてならない。

 

ただ少しずつだが、市民運動の力もあって風向きが変わってきているところもある。

 

そのあたりの経過がわかるものを載せる。

 

資料①12月6日、広島市は議会に提案する資料をマスコミに先行して配布。

広島市、中央図書館のエールエールA館への移転方針を維持 再整備計画で3案比較し判断|中国新聞デジタル https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/245807

 

広島市が中央図書館など再整備で複数案比較 「エールエールA館」を再整備地と結論(RCC中国放送)

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rcc/222392?display=1

 

中央図書館「エールエールA館移転」と結論付け 広島市(テレビ新広島)

https://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000017414.html

 

資料② 12月14日総務委員会に提案された市の方針







資料③ 市民の会の反論書

 

                           2022.12.22

中央図書館等再整備地候補 3案比較の問題点

                こども図書館移転問題を考える市民の会

 

先日12月14日、広島市議会総務委員会において、広島市から中央図書館の再整備地候補の比較検討について説明がなされ、「再整備地はエールエールA館とする」との報告がありました。委員会では、長時間にわたり議員から多くの問題点が指摘されましたが、それらに対し市担当者からは納得できる説明があったとは言い難く、それについて、メディア各社もさほどの疑義も問題提起もない報道を行いました。

 3案比較とうたった配付資料では、実際には3案ではなく、「現在地で建て替える案」と「エールエールA館に移転する案」の2案のみが示されており、これについて、今回策定した再整備方針に掲げる機能発揮、利便性、財政面などについて広島市が比較検討し「再整備地はエールエールA館とする」と結論づけています。

(資料は、広島市のHPや市内各図書館で入手可。「中央図書館の再整備候補地の比較検討について(案)」https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/199127.pdf

しかしながら、私たちは、エールエールA館への中央図書館移転には、依然として多くの問題点があると考えます。

広島市に向けては、すでに市議会から「3案を比較検討できる詳細な資料を作り、関係者に丁寧に説明し、理解してもらった上で、移転先などを決定する」という付帯決議が出されています。この付帯決議の重さを踏まえ、今後、予算等の審議がなされる市議会においては、より深い議論がなされることが重要と考えます。以下、私たちの考える問題点を共有していただき、今後ともご支援くださいますよう、お願いいたします。

 

■ 問題点1)閉架書庫設置の場所について

 図書館をエールエールA館の8・9・10階に移転することは明らかになっているが、大きな荷重がかかる閉架書庫については「他階」としか示されていない。これについて市は、「書庫の場所は、ほぼ決まっており、荷重については問題ないが、現在入っているテナントに影響が出るため、公表することは出来ない。「他階」の取得費も「概算整備費」に含まれている」と説明した。

 中央図書館にとって、資料の収集保存は重要な機能である。書庫の場所は、本来の機能が発揮できるのか、建物の補強が必要か否かを判断するため、検討事項の最重要課題と考える。また、閉架書庫の場所は、「書庫から本をとり出し、利用者に提供するまでの時間」にも関係し、たとえ専用エレベーターの設置を考えたとしても、遠方となれば、職員への負担も大きい。

 

■ 問題点2)トラックヤード、荷さばき場について

 移動図書館車「ともはと号」1台、各区の図書館を結ぶメール便(配送車、大型ワゴン車)3台、公民館への配本用1台が、ほぼ毎日稼働している。広いスペースが必要であるのは言うまでもない。。議員から、「広島駅南口開発株式会社は、実際に現在の中央図書館の荷さばき場を視察したのか」との質問があったが、これに対し市は、「荷さばき場は、一般テナントと共用し、運行スケジュールを示して、南口開発から『調整可能』との回答を得ている。実際に見たかどうかはわからないが、施設管理者から回答を得ているので信頼できる」と答弁した。しかしながら、それについての詳しいデータ、回答書は示されず、きわめて不誠実な対応と言わざるを得ない。中央図書館は、「市内図書館などへの図書流通センター」の役割を担っており、この問題は重要であり、看過できない。

 

■ 問題点3)火災、水漏れの危険性について

 図書館を配置するとされる10階の真上、11階には飲食店街が入っており、調理等に火を扱うことから、火災はもとより、火災時のスプリンクラー作動、その他排水管等要因による水漏れの危険性を考慮に入れねばならない。また、閉架書庫の場所を明らかにしていないが、荷重の問題を解決するために地下2階に置くとするならば、地下1階の食品売り場が近く、同様に火災、水漏れのほか、食品売り場特有の問題(恒常的なネズミ、その他の害虫の発生・棲息)、さらには自然災害による浸水の恐れも否定できない。市は、火災対策について「ガス式の消火装置」としか回答していない。これは、あまりにリスク軽視ではないか。国会図書館の書庫は、地下にあるが、壁を二重にして湿気の進入を防ぎ、水漏れを回避するため、トイレなど水回り設備を設置していない。このような例があるにもかかわらず、今回の市の方針は、「図書館にとって資料と保管環境は、たいへん重要な問題」と考えているようには思えない。これこそが、問題ではないか。

 

■ 問題点4)「浅野文庫」について

 市は、「浅野文庫は、別途検討する」としているが、何ら具体策が示されていない。仮に浅野文庫のために「別の施設」を作るとするならば、そのための費用が上乗せになるのは自明の理である。また、中央図書館の前身は「浅野図書館」であり、浅野文庫のない中央図書館は、その価値が低減する、と危惧される。いずれにしても、税金の使途として、明確に提示されるべきことと考える。

 

■ 問題点5)「広島文学資料」について

 「広島文学資料」については、当面、「広島を知るエリア」に「専用コーナー」を作って対応すると述べている。現在の「文学資料室」から「専用コーナー」へと、扱いにあきらかな後退が見られる。市民局長は、文学館を設置するとの先日の新聞報道については、「広島市は承知していない」と述べた。また、資料の保存管理状態については、「『広島文学資料保全の会』の方に見てもらい、評価をいただいている」と答弁したが、当事者によると「見せてもらい、今の状態を確認しただけで、評価した覚えはない」とのこと。これらが何を意味するのか。日本の原爆文学の根幹をなす、広島ならではの文学資料の取り扱いにしては、これまでの保存管理・資料収集状況と併せ、お粗末すぎると言わざるを得ない。

 

■ 問題6)建物の強度について

 「建築基準法」で必要とされる積載荷重は、「百貨店2,900ニュートン/㎡、図書館閲覧室5,900ニュートン/㎡、一般書庫7,800ニュートン/㎡、集密書架(閉架書庫)11,800ニュートン/㎡」となっている。市は、エールエールA館は4,900ニュートン/㎡を越える耐力を有しており、試算では閉架書庫でも、これを越えないとみている。また、明らかにしていない集密書架(閉架書庫)設置予定箇所では、9,800ニュートン/㎡を越える耐力を有しており、床や柱の補強は全く必要ないと主張した。しかし、閉架書庫の場所も明らかにせず、根拠となるデータも開示していない。補強費用は全く計上していないとのことであるが、築23年、本来の使用目的と異なる使い方をした場合、補強の必要は本当に生じないのだろうか。あとになって、高速5号線・二葉山トンネル(多額の追加費用が生じている)の二の舞になるのでは、と危惧するところである。根拠となるデータの開示は必須であり、市民はそれを知る権利を有する。

 

■ 問題6)駐輪場について

 現在、中央図書館には51台分の無料駐輪場がある。しかし、エールエールA館に移転した場合、現在同様のスペース確保は、著しく困難であり、有料駐輪場は常に混みあっており、移動距離もばかにならず、来館意欲の減退にもつながる。自習室、ヤングアダルトコーナーについては、学生・青少年の利用を見込んでいるようであるが、有料駐輪場の利用は、学生にとっては大きな負担となる。

 

■ 問題7)自然環境について

 屋外環境も視野に入れた読書空間については、明らかに中央公園内のほうが優れている。窓から見える四季折々の自然、ゆたかな緑は何物にも代えがたい癒しをもたらしている。市は、移転先のエールエールA館を取り巻く環境について、「屋上からの二葉山の眺望と猿候川の河岸緑地」に言及した。屋上からの眺望をもってして、図書館来訪者のための自然環境と言えるのか。さらに窓のない建物で、どのようにして猿猴川河岸を眺めるのか。あまりにナンセンス極まる考えに、市民として恥ずかしさを禁じ得なかった。さらに、担当者の「猿猴川を望む南側に、壁を壊して窓を作る」との発言に至っては、素人でさえ驚愕する、きわめて奇怪なものとしか思えない。そもそも、ビルに窓を開ける大工事は、建物の強度に影響はないのか、ほかのテナントに影響はないのか。補強費用、テナントへの営業補償は整備費に含まれていないため、追加費用の発生可能性があるのではないか。疑問は膨らむばかりである。

 

■ 問題8)整備費用について

 「仮施設なし現地建て替え(新築・耐用年数60年)」は113.5億円(内建設費は112.5億円)。「エールエールA館への移転(改修・耐用年数40年)」は99.8億円。その差は14億円程度。エールエールの不動産取得費のうち、「33.6億円は土地代であり資産になる」との意見もあるが、これは土地の一部の権利であり、実際は「死に金」。さらに、閉架書庫の設置場所、営業補償、浅野文庫移転先など不明な点が多く、追加費用なしの整備費用かどうか、不透明のままである。さらに、2月の整備案では、他都市の例をもとに、「現地建て替え」の場合の施設建設費は90億円と見積もられていた。なぜ、今回は22.5億円増えたのか。こども図書館の移転断念で、さらに整備費は減っているはずのところ、この増額は、どこにその根拠があるのか。データの開示は必須である。

 

■ 問題9)「子どもエリア」の取り扱いについて

 「こども図書館は、現地に残るから、それでいいのでは」との声も聞こえてくるが、そもそも手狭であって増床の必要性があるにもかかわらず、それらを無視した「現地残存」には、大きな問題がある。加えて、今回の整備案との関係性が明確でないことから、「こども図書館」の今後に不安がぬぐえない。今回の図面によると、整備後の「子どもエリア」の当初案は2,000㎡、今回案は3,300㎡となっており、「こども図書館」が現地に残ることになったにもかかわらず、移転先の「子どもエリア」面積拡大の意図するところは、何であろうか。「子どもエリア」に配置する人員は、どこから? 書架に並ぶ書籍は、どこから? 広島の子どもの本に関する基幹・中枢図書館であり歴史ある「こども図書館」の本来の機能を損なうような「子どもエリア」であってはならないと、関係者として強く危惧している。

 

問題10)移転ありきの姿勢について

 今回、市から3案の比較資料が議員に届いたのは、総務委員会の2日前(12月12日)であった。議員らが「資料を精査・検討する十分な時間を与えないための手段」と思われても致し方がない。さらに、議員にも資料公開がなされていない段階で、12月6日にメディア各社は、エールエールA館に移転が決まったかのような報道を行った。これらは、市民として、どのように解釈したらよいのであろうか。

 また、市は、総務委員会で様々な意見が出たにもかかわらず、内容の検討・修正を行うことなく、比較検討案決定を翌日HPに掲載した。これでは、付帯決議案を重く受けとめているとは言い難い。それほど急いでエールエールA館に図書館を移転させなければならない理由でもあるのだろうか。「市の第三セクター赤字経営救済」「中央公園内に音楽専用専門ホールを作る場所の確保」など、巷でささやかれる事案が存在するとしたら、市民がこれを、「移転ありき」と受け受け止めるのも、自然な成り行きではある。これらをもって、市はその姿勢を問われていると考えるべきではないか。

 

 

■ 問題11)市民意見について

 市は「パブリックコメントで市民の意見を聞いた」としているが、この市民意見の結果では、「現地建て替え」が圧倒的多数であった。これらの意見は、どこに消えたのか? パブリックコメントを、あたかも「聞きましたのアリバイづくり」に利用したとしたら、これほど市民を愚弄した話はない。市当局と市民の信頼関係があってはじめて、市の将来に寄与する施策の実行が可能ではないか。

 

■ おわりに

以上の疑義を持つ私たちは、市長と市議会議員全員および市議会選挙立候補者に、この件に

ついて「公開質問状」を届けるべく、準備を進めています。「公開質問状」の結果は、市長及び

市議会議員選挙に際して、市民の投票行動の参考の一助になるものと考え、当会のツイッターhttps://twitter.com/kodomoHiroshima)、グループメール、印刷物配布などの方法で一般公開する予定です。ご注目ください。

 

 

資料④ 12月15日に出された広島文学資料保全の会、池田さんのメッセージ    

 

  「中国新聞」報道の「広島文学資料館を検討」について考える

 

中国新聞(22・12・13)は、広島市中央図書館移転にかかわり、所蔵する「文学資料3万点」を別途「文学館の整備」も視野に検討する旨の報道を行った。

 事実、広島市の市民局から市議会総務委員会への提出資料(22・12・14)では、移転先とされる広島駅前商業施設エールエールA館の(現在地とエールエールA館との比較検討と言いながら)積極的意味を強調しているが、なんのことはない、「移転ありき」が透けて見える。

 よく考えていただきたい。

 築23年の困窮している中古物件の買い取りを「広島駅という公共交通の節足点、アクセスの容易、利用者の利便性、来館者の増加を期待ができる」などと、現在地と大差ない「差」を隠蔽し、「平和」の名のもとに天下に恥を晒そうとしている。

 総務委員会に提出される「資料」によれば、エールエールA館での見取り図では、図書館建設の基本である肝心の「所蔵庫」の位置は不明であり、移転での概算整備費99億8千万円の試算そのものが崩れるという杜撰さは目を覆うばかりである。

 では、「比較検討(案)」についての「文学資料」にかかわる個所を見てみよう。

 

─なお、「広島ゆかりの作家の文学資料については、まずは広島を知る」エリ   ア内において、その保管・管理及び活用を図るための専用コーナーの設置等の措置を講じることとし、その後、措置の拡大等の取り扱いについて別途検討することとする。」としているが、図書館の再整備後において更なるサービス拡充を図る際に、図書館とは別に文学館などを設けることについて検討すべきものと考える。

 

 この作文は、一般市民を納得させるための空手形を盛り込んではいる。たしかに、「図書館とは別に文学館など」と記述されているが、あくまで「検討すべき」と逃げ、まったく裏付けのない内容に留めている。

 あくまで「検討」であり、さらにその「検討」も「更なるサービス拡充を図る際に」と、曖昧糊塗にし、遠い彼方に追いやり、総務委員会を乗り切る詐術としての表現にすぎない。

 今まで、私たちの「文学館の要求」を避わすために設けた中央図書館内の「広島文学資料室」(1987年開設)は、どのように説明されてきたのか。

 歴代の市長は「拡充」を言い続け実に35年経過している。(広島市は、この空手形に正面から向き合い市民に報告する義務がある)しかも、資料収集予算は、ゼロであり、「拡充」の文字が空しく響く。

 私たちはこの間、市民局長、中央図書館館長、公明党共産党議員などに、このまま推移するならば、原民喜峠三吉文学資料の引き揚げることを縷々表明してきた。

 その効果があったのであろう。ありがたく「文学館など─検討すべき」との文言を入れ取り繕い、その場しのぎで乗り切る策に出てきた。

 さらに、「浅野文庫」については、「動かすことには同意できない」とのことで─広島市はかなり苦境に立たされており、あえてこのような「文言」を加えたのであろう。

 なお、「文学資料」は今後も増えれば―別の文学館の設置も検討、と触れたと報道は伝えるが、財政的裏づけはまったくなく、甘言を弄したにすぎない。

 

*あえて、広島市は、「文学館」も博物館法にいう「博物館」が存在しない空疎な「平和」都市だ。

 

                  2022・12・15

                      広島文学資料保全の会・池田正彦

 

資料⑤ 12月26日付の中国新聞社説