クマをめぐって

クマ対策、国も本腰を入れざるを得なくってきた。

 

【速報】政府がクマ被害対策パッケージまとめる 「緊急的」「短期的」「中期的」の3段階で生活圏からクマ排除

政府は14日、クマ被害対応するため、関係閣僚会議を開き、クマによる死者数が過去最多を大幅に更新するなど、国民の安全・安心を脅かす深刻な事態となっていることを踏まえ、クマ被害の対策パッケージを取りまとめました。

対策パッケージは、▼緊急的な対応、▼短期的な取り組み、▼中期的な取り組みの3段階に分けられています。

緊急的な対応では、▼既に着手している警察によるライフル銃を使用したクマの駆除などに加え、▼新たに自衛隊や警察OB等に協力を要請し、駆除にあたる人材の確保を進めるとしています。

また、短期的な取り組みでは、▼ガバメントハンターと呼ばれる狩猟免許を持つ自治体職員の人件費や資機材などを支援するとした他、▼誘因物の撤去や、▼電気柵による防護の強化を図るなどとしています。

さらに、中期的に取り組むこととして、▼ガバメントハンターの育成や、▼クマの個体数の削減、人の生活圏からの排除に向けたガイドラインの改定などをおこなうとしています。 政府はこれらの対策のため交付金などによる速やかな支援を実施するとしていて、クマの駆除などに要する経費については特別交付税措置を講じるとしています。 

                       (yahooニュースから)

 

13日の東京新聞の記事が興味深かった。

クマ出没対策「国から相談は全くなかった」と大日本猟友会佐々木洋平会長…打ち出される政策に募る疑問

2025年11月13日 
 
 クマの被害が深刻化し、捕獲にあたる各地のハンターの負担が大きくなっている。東京でも西多摩で目撃が相次ぐなど、人の生活圏へのクマの接近はもはや山間地だけの問題ではない。求められる対策は何か。都道府県の猟友会で組織する「大日本猟友会」の佐々木洋平会長(83)や識者に聞いた。(山田雄之、中川紘希)

自衛隊出動「銃器を持たず出没地域に…危険だ」

 「国はクマに対し、さまざまな緊急対策を進めているが、相談は全くなかった。果たしてうまくいくのかという疑念がある」。7日、一般社団法人「大日本猟友会」(東京都千代田区)の一室で東京新聞こちら特報部」の取材に、佐々木会長はこう語った。
 大日本猟友会は、銃猟やわな猟の狩猟免許を持つ約10万人で構成する。趣味の団体である一方、農業被害や市街地で出没があると対応にあたる。クマについて本年度は9月末までに昨年度1年間を上回る約6000頭を駆除したほか、イノシシ・シカも年間計100万頭以上捕獲してきた。

警察官によるクマ駆除の懸念を語る佐々木洋平会長=東京都千代田区大日本猟友会

 佐々木氏は、自民党のクマ被害緊急対策プロジェクトチームの5日の会合に出席し、クマ対策での自衛隊派遣に私見として「反対」を表明した。改めて理由を尋ねると、「彼らは銃器を持たず、撃退用スプレーを携行するぐらいでクマ出没の可能性がある現場に近づく。危険だ」と指摘した。
 自衛隊法に基づき、隊員の任務が箱わなの運搬や設置といった「後方支援」に限られることにも触れて、「中国やロシア、北朝鮮と日本を巡る国際情勢が緊迫している中、国防を担う自衛隊がすることなのか。大災害なら理解できるが、反対だ」と繰り返した。
 13日からは警察官がライフル銃を使ってクマを駆除できるようになり、秋田、岩手両県で実施に臨む。これについても「反対ではない」と前置きしつつ、首をひねる。「クマは時速60キロで向かってくる。撃つのは、コンマ何秒の世界。猟友会は日ごろからシカやイノシシを撃ち、緊迫した状況の場数を踏んでいる。警察官が少しの訓練で対応できるのだろうか」

◆緊急銃猟制度 ハンターたちが責任を問われかねない

 とりわけ今、猟友会のハンターたちの懸念が高まっているのが、9月から始まった「緊急銃猟」制度だという。改正鳥獣保護管理法が施行され、市町村の判断で市街地での発砲が認められるようになった。従来は現場の警察官の命令がなければ原則発砲できなかったが、クマ出没の増加などを受け、予防的かつ迅速に対応するために新設。今月11日現在で発砲に至ったのは東北地方を中心に21件に上る。
 佐々木氏は、ハンターが撃って跳弾や流れ弾による人的被害が出た場合の責任の所在が「明確ではない」と主張する。改正法は、物損の場合は委託した市町村が賠償責任を負うと定めるが、人的被害が出た場合に刑事責任を誰が負うかは捜査・司法当局が判断する。

自動ドアから消防署内に侵入したクマ=10月20日秋田県湯沢市で(湯沢雄勝広域市町村圏組合消防本部提供)

 環境省の担当者は「緊急銃猟に限らず、刑事責任は最終的に裁判所が判断する。もっとも緊急銃猟で発砲できる条件として安全確保措置があり、通常は刑事責任を問われることはないのではないか」と話す。一方、佐々木氏は「現場レベルで警察に尋ねれば『きちんと事件処理する』と答える。銃刀法違反で免許が剥奪されるリスクもある。ハンターたちからは『とても緊急銃猟なんてできない』との声が多く上がっている」と強調した。
 緊急銃猟は「対症療法に過ぎない」とする佐々木氏。国は狩猟免許を持つ自治体職員「ガバメントハンター」の確保支援も打ち出しているが、「猟友会は高齢者が多く、若い人たちは兼業している。担い手になれる人は少ないのではないか」とみる。
 クマをはじめ鳥獣の出没が頻発し、ハンターの担う負担は増している。それでも「社会貢献しよう、市民の暮らしを守ろうとの思いで、命を張って活動している」とその思いを代弁し、「自治体ごとに差がある手当の金額を『専門家待遇』として一律化し、練習する射撃場の整備などハンターの育成環境も整備してほしい」と訴える。

◆東京都内でもクマによるケガ人

 観光シーズンを迎える11月もクマの出没は相次いでいる。新潟県湯沢町では7日、温泉旅館の駐車場で男性がクマに襲われてけがをした。札幌市円山動物園では9、10日、北海道に生息するヒグマの足跡が複数見つかった。被害の増加を受け、日本郵便は6日に秋田県の一部地域で集配を見合わせるなど各方面に影響が出ている。

東京都内のクマ目撃情報などを伝えるウェブサイト「TOKYOくまっぷ」。西多摩に集中している

 首都圏も人ごとではない。東京都の「都ツキノワグマ目撃等情報マップ~TOKYOくまっぷ~」によると、今年の目撃、捕獲などは12日時点で244件に上る。8月下旬には奥多摩町で釣りをしていた男性がクマに襲われけがをした。都の担当者は「冬眠前にクマは餌を探して動き回るため警戒している」と話した。
 目撃情報が例年より増えているという日の出町の担当者は「人家に近いエリアまで来ている印象だ」と懸念する。町職員によるパトロールでは、10月末から住民にクマへの警戒をアナウンスしながら巡回しているという。
 埼玉県でも本年度のクマの目撃・痕跡情報が127件(10日時点)と昨年度の108件を既に上回り、知事が会見で注意喚起した。神奈川県は丹沢山地を中心に本年度、例年並みの54件(同)が確認されている。
 ちなみに千葉県はクマが生息しない本州唯一の県とされ、国の出没情報のまとめなどでも対象外だ。クマの生態に詳しい東京農業大の山崎晃司教授はこの理由を「高い山がないなど環境がクマに適していない。大都市に囲まれ他県から流入することも考えられない」と説明する。

◆23区にクマが出没する可能性も「ゼロではない」

 ただし千葉を除けば、クマの生息域はこれまで以上の広がりが指摘される。山崎氏は「東京では山の際までクマが分布している。山深い奥多摩町檜原村だけでなく、山に隣接する青梅市や八王子市などの市街地に出没する可能性が高まっている」と述べる。さらにクマは身を隠せる場所を好む習性があり、川の両側に茂る木に沿って移動する場合がある。「多摩川沿いを移動し、世田谷区など23区に迷い込む可能性もゼロではない」と都市部への接近に警鐘を鳴らす。

林道で目撃されたツキノワグマ=2022年、岐阜県高山市

 首都圏の住民に「今までクマが生息していない場所だからといって油断してはいけない。ごみを外に放置せず家庭菜園は早めに収穫するなどクマを寄せ付けない対策を」と呼びかけた。
 石川県立大の大井徹特任教授(動物生態学)も「人里周辺の森林への生活域の拡大と定着が進行中だ。秋にドングリ類が凶作の年、クマが新たに生活場所を求めて市街地に迷い込む可能性はある」と危ぶむ。「首都圏は地方より人口密度が高く交通量も多い。外出制限、避難、交通の遮断などが行われ、混乱は大きくなる。緊急銃猟が行われれば安全性の確保、判断が難しくなる」と話した。
 クマ被害だけでなく他の野生鳥獣による農作物などの被害も深刻化しているとして、行政に対し「捕獲を行うだけでなく、他の捕獲従事者の指導や個体群の管理、被害を防ぐための計画立案などを行う野生動物管理の専門家を各都道府県に置くべきだ」と求めた。

◆デスクメモ

 佐々木会長はブナやミズナラなど実のなる国有林が多く伐採されてきた経緯を挙げて「クマが安心して生活できる楽園をつくってあげることも大切だ」と話したという。自衛隊や警察官の派遣は緊急対応に過ぎない。専門家の知見を入れて長い目でみて共生の環境づくりを図ってほしい。(恭)

 

 

秋田に法事で帰省している友人とのやりとり(抜粋)。

 

きのうお寺の法事を済ませて帰宅すると、玄関脇4〜5メートルの所に熊の糞が一つありました。初めてのことでした。緑がかっていて、柿の種が2個見えました。

隣家の人にも見せ、隣の柿の木の様子も見に行きました。
木の下のあちこちに熊の糞が7〜8個あり、今年も複数回きていることがわかりました。
木に登ったらしく、太い枝が三本折れてました。

隣家では苗代で芹を育ててますが、その穂先も初めて食べられていました。糞の緑のでの原因でしょうね。

近隣の人たちは、熊の出没についてなんだかのほほんとしているのか、あきらめているのか、話していて気持ちが噛み合わないことがあります。
日の出の頃そして暗くなってから外出しなければ平気、とでもいう雰囲気を感じます。そんな風に思わないと農作業なんかやってられないのかもしれないけど。

市役所の農林整備課(熊対策)に連絡すると、担当者たちは猟友会と熊の捕獲に
出かけているのでと、代理が対応。
いま、そういう案件が急激に寄せられているが、糞だけでは動けないから「いまのところ、注意して過ごしてください、としかいえません」とのアリガタイお言葉。

警察にも報告しましたが、いま現在そこに熊が居座っていなければ出動してないし、熊関係は農林整備課が主体なので、そちらに連絡してほしいとのこと。

そこで、両方に、もっと近隣の情報を集めてまた連絡するので、その集積によって警戒区域として対応出来ないのかと聞くと、農林整備課は、可能かもしれないとのこと。
警察は、いまやどこでも似たような状況なので、情報だけでは行けない、と。そしてあちこちに話を飛ばして、不用意な言質を取られないようにしてました。


それにしてもこの集落の人たち(や行政)の諦めに似た静観ぶり、新たな現実へのヴィヴィットな対応のなさ(というか思考放棄)、まあ、自分もそんなもんかも知れないけどね。
時々、自然との向き合い方に関してここの人たちはプロだなぁと思い、翻ってオノレの浅薄な意識を省みることもありますが、クマ問題については、まずいなと思います。
現場からは、以上です(笑)

 

私の返信

なるほど、そういうことなんですね。「渦」の中にいる人々と外側から見ている人とのちがいでしょうか。正常性バイアスというか、どうしても事態を過小評価しがちですね、現地の人は。
朝晩しかクマは来ない、というのがまさにそれですね。お寺の法事は早朝でも深夜でもないのでしょうし。
こうして外側の人とのずれが生じてしまう。外側の人、と言っても「渦」を内在しているだけにこのずれは感情的なものも含めてなかなか解消しない。
老父母が動けなくなった、さあどうする?といった時の現地の子どもたちと都会の子どもたちのずれにも似ているのかもしれないし、現地の人はどっかで「普段いないくせに」「何も知らんくせに」というのもあるかもしれません。
また行政や警察は、個人個人にしてみれば、俺だってうちに帰ればクマ被害があるんだぞという気持ちがある。震災の時の避難所のクレームとも似ていますね。
こうして見てみるとやっぱり、くま被害は自然災害そのもの。直接なんの関与もしてない私などは、「お前なぞ高みの見物だろう!ガタガタ言うな!」と言われそうです。
とにかく被害が出てからでは困ります。オオカミ老年になって注意喚起に努めてください。勉強になりました。

 

言葉足らずだったので、少し補足させてください。
玄関横の熊糞は夜のものらしく、柿の木と反対側の隣家の人が「きのうはなかったけど、今朝あったよ」と教えてくれました。

今日も近隣の人たちと話し、熊はぼくが思っている以上に昔から出没していて、日中に目撃した人もかなりいました。
ただ、それなりの距離があったり熊が逃げていったりで、人身に被害なくきたようです。貴兄のいう『クマとの緊張感ある「共存」』が、それなりに成立していたのかもしれません。
ただ、今やかつての距離は取れなくなったことが、意識できていない。
慣れからくる弛緩と、貴兄の喝破した「正常性バイアス」によるものと思います。

でも、外側から渦の中に入るや、ぼくなどは知らず知らずのうちに馴れ合っていきそうなので、「オオカミ老年たれ」との貴兄の檄、身に染みます。

 
 
私の返信
 
やはり、以前のクマと人間の関係は変わりつつあるということですね。
 
「クマと人間はお互いの息遣いに耳を凝らし、距離を置いていたと思います。
山に一人ででかけて、草むらの中を歩むとき近くで小枝の折れる音がしたり
すると一目散に走って山を下りおりたものでした。」((秋田・仙北市田沢湖在住の友人)
 
という関係はもう難しくなってきているのでしょうね。
 
政府がようやく動き始めましたが、相変わらずゴテゴテで後手後手の印象が否めません。
自分たちの政局だと、知恵や権謀術数を張り巡らすのですが、遠い地方のクマに対しては、
遅恵や健忘術数になってしまいます。
 
それにしても、この「自然災害」、今年限りどころか放っておくと通年で大変なことになりそうですね。
いずれ「地方」が少しずつ範囲を広げることになり、都会に住む人間にとってもクマへの恐怖は人ごとでなくなりそうです。
気をつけてお帰りください。12月にまたおしゃべりしましょう。

干し柿をつくろう(11月3日)

11月14日 干し柿になるのだろうか