常識的に考えて、学校が全て休校になっているのに保育園だけが「安心」なところであるはずがないだろう。現場がどれほど感染対策に労力を割いていても、多くの園児、保護者が入れ代わり立ち代わり訪れるのである。感染リスクは高まるばかりだ。離れて遊ぶこともむずかしい、園児全員にマスクをつけさせることすら並大抵のことでないことは素人でもわかる。それなのに横浜市は保育園は「安心」で、登園するかどうかは保護者が決めてくださいと云う。

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今年もコデマリが咲いた。


《タイトル》保育士感染を保護者に伝えず 横浜市は“隠ぺい”否定

神奈川・横浜市が、保育士の感染を保護者に伝えないよう、保育園側に待ったをかけていたことがわかった。

横浜市によると、神奈川区の「西寺尾保育園」に勤める20代の女性保育士は、3月30日に発熱など症状があったが、熱が下がったため、翌日から4日間勤務、その後も体調が悪かったため、4月4日以降は出勤せず、8日に感染が確認されたという。

しかし横浜市は、8日夜に報告を受けていたにもかかわらず、保育園側には、すぐに保護者には感染の事実を伝えず、保健所の調査結果を待つよう要請したという。

横浜市は、「情報操作や隠蔽(いんぺい)にはあたらない」としている。

                                                                              (FNNプライムオンライン)

このニュースは、今日15日午後13時29分のもの。

 

これに先立って今日の深更0時31分に、朝日新聞デジタルは次のように報じている。

 

《タイトル》保育士の感染「保護者に知らせず続けて」 横浜市が指示

横浜市内の私立の認可保育所で保育士の新型コロナウイルス感染が判明した際、市が保護者にはすぐに知らせないよう保育所側に求め、保育を続けるよう指示していたことがわかった。地元の私立保育所でつくる団体が「情報操作だ」などと市を厳しく批判する事態となっている。

 市によると、市内の私立認可保育所に勤務する女性保育士の感染が8日夜に判明。9日未明にかけての協議で、休みたいと主張する保育所側に対し、市は9日に通常通り開所することを指示。混乱を避けるためとして、保育士の行動調査などが終わるまで、保護者に感染者の発生を知らせないよう求めた。

 保育士は発熱などの症状があり4日から欠勤。市は保健所の助言をもとに「すぐに休まなくても感染リスクが高まるわけではない」と判断したという。

 保育所側はいったん納得したが、9日朝に感染者の発生を伝えるメールを保護者に出し、通所の判断を保護者に委ねた。結果、保育所ではこの日、子どもを預からなかったという。

 市は9日の調査で濃厚接触者を特定。その後の運営が難しいと判断し、10~18日の臨時休業を決めた。

 一連の市の対応をめぐり、約700の認可保育所などでつくる横浜市私立保育園園長会(大庭良治会長)が13日、林文子市長に対して要望書を提出。市の対応を「隠蔽(いんぺい)または情報操作ともいえるものであり、到底許されない」と強く批判したうえで「保育所が保護者へ公表することを妨げないこと」を求めた。

 また、緊急事態宣言で定められた期間中、私立保育所を「原則休み」とするよう求めた。関係者は「感染者が出たことを知らせないまま開所し、感染が広がったら誰が責任をとるのか」と指摘する。

 政府の緊急事態宣言を受けて市は8日、市内の保育所について「原則開所」とすることを保護者に通知。家庭で保育できる場合は預けないよう協力を求め、その分の保育料を減額するとしている。(武井宏之

 

横浜市と保育園園長会との間での問題だが、当然、園児、保護者、保育士など保育園に関わる人すべての問題。

 

園長会の要望書は9ページにわたる大変に緊張感の溢れる理路整然としたもの。

 

横浜市に対する要望内容は端的に二つ。

当会は、 貴市に対して、以下を 強く 要望する。
1 私立保育所の園児、保護者、及び職員の新型コロナウイルス感染 に関する情報 について、 情報操作や隠蔽ともとれる対応を直ちに止め、 当該保育所が 保護者 へ 公表することを 妨げない こと。

2 令和2年4月7日に発出された 新型 インフルエンザ等対策特別措置法に基づく 緊急事態宣言において緊急事態措置を実施すべき期間として定められた期間中、私立保育所を原則休園とし、 例外的に、 医療や介護、ライフライン、食料 品や日用品の販売、金融や物流などの 市民 の生活に関わりの深い事業 に携わる保護者 に関しては、申出により特別に保育を継続 して提供 する体制とすること。

要望書全文 ↓

http://www.yokohama-she.org/files/1/1586762940_0.pdf

ここから先、分量的にはかなり多いがぜひ目を通して見てほしい。

保育園として園児を預かるということがどういうことか、現場の覚悟がひしひしと伝わってくる。

 

わたしには東電福島第一原発事故当時、吉田所長が東電本社に対して怒りをぶつけたのと同じものを感じた。

正しい情報を住民に伝えよ、ということだ。

 

敵は新型コロナウイルスであるのに、味方から弾が飛んでくる。

現場は生きるか死ぬかのぎりぎりのところで闘っている。園児も保育士も守らなければならない。感染を隠蔽して、万一感染の蔓延となった場合、役人に責任など取れるはずもない。

慰撫しておさまることなどウイルスにはありえないこと。現場の実情をしっかり把握し、感染被害の広がらないように対処するのが監督官庁のなすべきこと。そのうえで感染リスクを少なくするために、情報操作や隠ぺいを廃し、正しい情報を住民、保護者に伝えることが肝要だ。

 

二つ目の休園に問題についてだが、横浜市は「緊急事態宣言の発出に伴う保育所等の利用について 」という保護者宛ての4月8日付の文書では、次のように保護者に伝えている。

全文 ↓

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shisetsu/000000000.files/0001_20200408.pdf#search=%27%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%B8%82%E3%80%8C%E7%B7%8A%E6%80%A5%E4%BA%8B%E6%85%8B%E5%AE%A3%E8%A8%80%E3%81%AE%E7%99%BA%E5%87%BA%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E4%BF%9D%E8%82%B2%E6%89%80%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%27

一部を抜粋すると、

日頃から、保育・教育施設の運営にご協力いただき、ありがとうございます。
令和2年4月7日付で政府による「緊急事態宣言」が神奈川県に出されました(期間:令和2年4月8日から5月6日まで)。神奈川県知事からは、「県民の外出の自粛」が要請されていますが、保育所等の使用制限等は要請されていません。
市内の保育所等は原則開園とし、保育が必要な方については、引き続き保育所等を利用していただけますのでご安心ください。
一方、新型コロナウイルス感染拡大防止に取り組む必要があることから、ご家庭等での保育が可能な場合には、令和2年4月9日から5月6日までの期間の登園や延長保育の利用を控えていただくなど、ご協力をお願いします。

 

要するに、県から「保育所等の使用制限は要請されていない」を根拠に、「安心」をうたっているにすぎない。現場の実態からの「安心」ではないことが最大の問題である。

 

常識的に考えて、学校が全て休校になっているのに保育園だけが「安心」なところであるはずがないだろう。現場がどれほど感染対策に労力を割いていても、多くの園児、保護者が入れ代わり立ち代わり訪れるのである。感染リスクは高まるばかりだ。離れて遊ぶこともむずかしい、園児全員にマスクをつけさせることすら並大抵のことでないことは素人でもわかる。

この文書を読むと、保護者としてはどうしていいかわからないというのが正直のところだろう。

 

登園自粛要請では職場は休めない、休園となって初めて休める保護者がほとんどである。

 

横浜市は、登園させるかさせないかの下駄を保護者に預けることで、責任を回避している。保育園を所管する行政としての責任放棄である。

 

何より行政としての主体性がどこにあるのか、ということだ。

 

無責任。県が云ったから?県は、国が云ったから?

 

自分の子どもが通う保育園からこんな文書がきたら、自分はどう感じるのか、というごく当たり前の想像力が欠けている。