『アイアンクロー』あの鉄の爪のフリッツ・フォン・エリックにこんなバックグラウンドが。『辰巳』すごくいいのにストーリーの奥行きがないのが残念。

2024年5月の映画寸評③

<自分なりのめやす>

お勧めしたい   ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

みる価値あり   ⭐️⭐️⭐️⭐️

時間があれば    ⭐️⭐️⭐️

無理しなくても  ⭐️⭐️

後悔するかも   ⭐️

 

㊺『アイアンクロー』(2023年製作/132分/G/アメリカ/原題:The Iron Claw/監督:ショーン・ダーキン/出演:ザック・エフロン ジェレミー・アレン・ホワイト ハレン・ディキンソン ホルト・マッキャラミーほか劇場公開日:2024年4月5日)

                          5月24日 kiki  ⭐️⭐️⭐️⭐️ー

 

日本でもジャイアント馬場アントニオ猪木らと激闘を繰り広げ、鉄の爪=アイアンクローを得意技としたアメリカの伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックを父に持ち、プロレスの道を歩むことになった兄弟の実話をベースに描いたドラマ。

1980年代初頭、元AWA世界ヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリックに育てられたケビン、デビッド、ケリー、マイクの兄弟は、父の教えに従いプロレスラーとしてデビューし、プロレス界の頂点を目指していた。しかし、世界ヘビー級王座戦への指名を受けた三男のデビッドが、日本でのプロレスツアー中に急死したことを皮切りに、フォン・エリック家は次々と悲劇に見舞われ、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになっていく。

次男ケビン役をザック・エフロンが務め、三男デビッド役を「逆転のトライアングル」のハリス・ディキンソン、四男ケリー役を配信ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」で第80回ゴールデングローブ賞主演男優賞(テレビ部門ミュージカル・コメディシリーズ)を受賞したジェレミー・アレン・ホワイトがそれぞれ演じた。米プロレス団体AEWのマクスウェル・ジェイコブ・フリードマンが製作総指揮、元WWE王者のチャボ・ゲレロ・Jr.がプロレスシーンのコーディネーターを務め、それぞれレスラー役で劇中にも登場。監督は「不都合な理想の夫婦」のショーン・ダーキン

 

小さい頃、テレビで見た鉄の爪フリッツ・フォン・エリックは恐ろしいレスラーだった。その彼にこんなバックグラウンドがあったとは。

4人の兄弟とフリッツとその妻。皆、それぞれに家族愛を持ち続けているが、兄弟は純粋にお互いが好きで、健康なライバル心も持っている。母親は愛情は持っているが、今ひとつ打ち解けない。フリッツは大変な自信家で功名心の塊、不全感を払拭するために子どもたちを徹底的に引き回す。兄弟はそんな両親に対し、愛情を持ってはいるが、心底信頼はしきれていない。それに合わせていくつもの不運、4人のうち一人は病死、一人は自殺、一人はバイクの事故・・・「呪われた一家」という風評が被せられる。

 映画はそれに立ち向かった一家を克明に描いてはいるが、過大な描写ではなく、極めて等身大。激しい感情のぶつかり合いも抑制的。次男のケビンがうちに抱えて屈託していく様子が痛ましい。フリッツの内面、葛藤はあえて描かれない。

 ラストシーンだったか、亡くなった兄弟が天国で出会うシーン。ベタだが、小さい頃に亡くなった長男がそのままの姿で出てくるところがグッとくる。

それぞれが鍛え上げられたカラダで繰り広げるプロレスシーンは迫力がある。

 

㊻『辰巳』(2023年制作/108分/日本/脚本・監督:小路紘史/出演:遠藤雄弥 森田想他/劇場公開日2024年4月20日) 2024年5月24日 kiki ⭐️⭐️⭐️+

 

2016年公開の長編デビュー作「ケンとカズ」で注目を集めた小路紘史監督が自主制作で完成させた長編第2作で、希望を捨てた男と家族を失った少女の復讐の旅路を描いたジャパニーズノワール

裏稼業で生計を立てる孤独な男・辰巳は、元恋人である京子の殺害現場に遭遇し、その場にいた京子の妹・葵を連れて逃亡する。最愛の家族を奪われた葵は、姉を殺した犯人に復讐することを決意。犯人を追う旅に同行することになった辰巳は生意気な葵と反発し合いながらも、彼女を助けともに過ごすなかで、ある感情が芽生えてくる。

「ONODA 一万夜を越えて」の遠藤雄弥が主人公・辰巳、「アイスと雨音」の森田想が葵を演じ、ドラマ「全裸監督」の後藤剛範、「無頼」の佐藤五郎、「わたし達はおとな」の藤原季節が共演。2023年・第36回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品。

映像の迫力はかなりのもの。それぞれの演技もいい。監督の技量の高さが伝わってくる。

ただ、ストーリーに奥行きがなく、単調。

ヤクザ組織がバックにあるようだが、実態が全く見えない。

同じところで撮ったシーンが多く、深みがない。

予算の問題もあるだろうが、もったいない感じがした。

予算があれば脚本自体がもっと広がりを持つのではないか。

遠藤雄弥は吸引力の強い役者。森田想、楽しみな役者。

藤原季節、冒頭だけ?もっとみたい役者。