『風の電話』9歳で被災して、広島に預けられた8年間からにじみ出てくるものが、モトーラ世理奈の演技からは想像できなかった。

今朝もマンションを出たところのミモザの木の奥の竹林のほうから、ウグイスの啼き声。

 

急に寒くなって、桜も咲きそうで咲かない。特に楽しみにしている境川河畔の桜の巨木。根元から6本ほどに幹が分かれている。最近、犬を連れて散歩している明るいおじさんから、オオシマザクラという名前を聞いた。

 

 桜の原種の一つ。高さは15mに達する。葉は長さ5cm~10cm程度で、先端が尖った倒卵形または楕円形で互生、細かい鋸歯を持つ。花期は3月から4月にかけ、葉の成長とともに茎の先端から数個の花をつける。花弁は白色で5弁、淡い芳香を持つ。オオシマザクラは、多くの園芸品種を生み出したサクラでもあり、ソメイヨシノカワヅザクラ河津桜)の片親でもある。伊豆大島北東部の山中にある本種の株は、1952年に、特別天然記念物に指定されている。

 

だそうだ。

 

今日も本厚木のkikiへ。先週に続いて2週連続。

 

人が集まるところへ不要不急の用事がない場合は避けるようにとのことだが、今月に入ってから3回目。どこもほとんど客が入っていない。

 

今日も156席のところに6人。濃厚接触になりようがない。

 

『風の電話』(2020年/139分/日本/監督:諏訪敦彦/出演:モトーラ世理奈西田敏行三浦友和・西田秀俊ほか/2020年1月24日公開)

 

涙は出る。

 

でも、それと映画の出来は別。

 

東北の震災がテーマの中心だが、そこに、豪雨、台風、介護、入管、差別、自殺、などさまざまなテーマが重ねられる。

 

詰め込みすぎというより、それぞれがとってつけた感が強い。

かなり無理がある。特にクルド人の入管問題。

 

 

9歳の時に津波で両親と弟をなくしたハル(春香)の、広島から大槌町の風の電話までのロードムービー

 

喪失の悲しみと再生の萌芽を各地で見つけていくという趣向。

 

広島・呉の叔母に預けられて17歳まで育ったハル。叔母が病で倒れたのをきっかけに大槌町に向かってヒッチハイクをする。

 

大槌までのヒッチハイクにもっとリアリティが欲しいと思った。

広島から埼玉まで女子高生を乗せてあげる西島も不自然だが、結局福島の被災した自宅までハルを連れていく。

 

そこでハルが、亡くなった家族の幻想を見るのも少し無理がある。

 

大槌町の自宅のあったところで、3度目の思いの爆発。

ふだんのハルとのギャップが大きく、不自然に感じた。

 

最後に風の電話に辿り着き、約10分間のモノローグになる。

 

一貫して音楽を抑え、静かな時間が演出されるのは、主演のモトーラ世理奈の個性と諏訪監督の力だと思うが、それも時にやや緊張感が切れる。

 

脇役がうまいので、気持ちを途切らせずに見られたが、全体的には今一つまとまりに欠けると思った。

 

特に9歳で被災して、広島に預けられた8年間からにじみ出てくるものが、モトーラ世理奈の演技からは想像できなかった。

 だから、ヒッチハイクにでることが、どこか映画的で、というのは作りものということだが、唐突に思えた。

子どもはあんなふうにそだっていくものだろうか。

 

死に向かい合いながら、それでも生きていかざるを得ない人々の苦しさ、しんどさを西島や西田はよく演じていると思うが、当のモトーラ世理奈からは伝わってこなかった。

 

でも、西田敏行はうますぎる。福島弁(もともと出身だが)を自由に操り、地元の人々の気持ちを代弁、新相馬節を唸るところは、出来すぎかなとも思う。

 

残念ながら、最後の10分間のモノローグも、冗長に感じてしまった。