政権追従の広島市に対し、独自路線の長崎市。その長崎市に対し、西側諸国のG7(日本を除く先進7カ国)とEU(欧州連合)が脅しをかけている。
記事によると、まず駐日英大使がイスラエルを招待しないことに対し問題視する立場を表明、7日にはアメリカ大使館が欠席を表明。さらに仏独カナダ大使館が「遺憾」「残念」と表明。結果的に明日の長崎市平和式典にはアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、カナダとEU大使が欠席することに。
各国は「式典が政治化された」としているが、そうだろうか。
広島市がパレスチナを招請しなかったことは「政治化された」ことにならず、 長崎市がイスラエルを招請しなかったことが「政治化された」こととなるとしたら、それは理屈に合わない。
ロシアのウクライナ侵略に対し、NATOを中心に西側が支援を続けており、一方中東ではアメリカがイスラエルを大きく下支えしている。東西関係に中立はなく、それぞれどちらかに偏っている。
問題は、広島も長崎も世界でたった2発の核爆弾の攻撃を受けた都市であること、20万人以上の民間人が犠牲になった街で行われる二つの平和式典に対し、原爆を使用した当のアメリカはもちろん、連合軍としてそれを容認した西側諸国が、現在の世界情勢を理由に欠席することは許されない。平和式典出席は、彼らに課された義務だ。「政治化」しているのは明らかにG7やEUだ。
どの国も国内にイスラエル支持、不支持の激しい対立を抱えている。その大きな根拠は、ハマスが先制攻撃を仕掛けたとはいえ、その後の容赦ない反撃(それまでの数十年のパレスチナに対する攻撃、侵略の延長線上にある)により4万人近い民間人、子どもたちが殺戮されていることを忘れてはいけない。
ロシアに対する避難同様イスラエルに対しても厳しい国際的指弾はがなされるべき。
林官房長官は、「式典に誰を招待するかは主催者の長崎市で判断することであり、政府としてコメントする立場にない」としているが、自民党内から「各国と調整する努力をしてこなかったのはお粗末だ」(朝日新聞)との批判もあるという。確かにイスラエルを招待しないという長崎市の決定は7月31日。十分に各国高官との調整の時間はあった。長崎市の判断を尊重するのなら、政府は親しい?G76カ国に対し、政治化させず粛々と出席すべしとの調整を行うべきだったのではないか。被曝都市とはいえ、一地方都市が矢面に立つようなことをさせるのは、政権そのものの無能さを露呈したものと言えるのではないだろうかた