『靴ひものロンド』哀しいはずなのに、誰も哀しそうに見えない。妻の夫への憎悪の激しさは伝わってくるが、30年後には元のさやに。家族それぞれの感情の発露が何かにせき止められていて、ふしぎな中途半端感が残る。

映画備忘録 11月11日

『靴ひものロンド』(2020年製作/100分/G/イタリア・フランス合作/原題:Lacci/原作:ドメニコ・スタルノーネ/監督:ダニエル・ルケッテイ/出演:アルバ・ロルバケル ルイジ・ロ・カーショ/日本公開:2022年9月9日)

 

1980年代の初頭。ナポリで暮らす4人家族の平穏な日々は、父アルドの浮気によって一変した。両親の激しい口論や父の魅力的な愛人、壊れていく母ヴァンダの姿を見つめながら、子どもたちはローマとナポリを行き来する。数年後、離散していた家族はふとしたきっかけで再び一緒に暮らすことに。それからさらに月日は流れ、アルドとヴァンダは夏のバカンスへ出かけるが、帰宅すると家は激しく荒らされており、飼い猫がいなくなっていた。

アルドとヴァンダの若き日を「幸福なラザロ」のアルバ・ロルバケルと「輝ける青春」のルイジ・ロ・カーショ、老年期を「息子の部屋」のラウラ・モランテと「ボローニャの夕暮れ」のシルビオオルランドがそれぞれ演じた。「イタリア映画祭2021」では「靴ひも」のタイトルで上映。

夫が妻に「女性と関係をもった」という一言から映画が始まる。

1980年代、90年代、2000年代と時代が移っていく。

帰宅した家を荒らしたのは、宅配の女性の仲間ではなかった。

角田光代の『愛も自由も、こんなに恐ろしいしっぺ返しとなって戻ってくる。夫婦の、家族の、いや、人間の底知れなさを思い知る』というコピーが予告編の最初に流れるが、大いに違和感。

30年間の家族の変化が夫の浮気によるものであることはわかるが、それが人間の底知れなさなのかというと・・・。

湿り気がない・・・邦画ならどろどろになる。韓国映画なら暴力的になる。

どっちにもならない。ただカットカットがよくできていて、漫然と最後まで見て愉しめた。

哀しいはずなのに、誰も哀しそうに見えない。妻の夫への憎悪の激しさは伝わってくるが、30年後には元のさやに。家族それぞれの感情の発露が何かにせき止められていて、ふしぎな中途半端感が残る。だいじなものを読み取り逃しているのかもしれない。画像2

靴ひものエピソードは父子の絆?ロンドというかジェンカは何だった?