広島市、子ども図書館のエールエールA館への移転を撤回。しかし、中央図書館、映像ライブラリーを一体的にとらえず、分割移転も視野に。場当たり的な杜撰な計画はそのまま。

こちらではあまり報道されていないが、広島の子ども図書館移転問題に動きがあった。

このブログでも署名をお願いしてきたので、遅くなったが、わかる範囲で報告したい。

 

9月21日の中国新聞デジタル

こども図書館は現在地のまま 広島市が移転方針を撤回

 広島市中区の中央公園内にある市立中央図書館やこども図書館などをJR広島駅前の商業施設エールエールA館(南区)に移す市の計画で、松井一実市長は21日、こども図書館を移転せず、現在地に残す方針を明らかにした。

 市議会一般質問で、松井市長は、中央図書館などの再整備方針案に対する市民意見に関し「(こども図書館を)現在地に残してほしいという意見が多く寄せられた」と説明。こども図書館の移転に反対する市民から市議会に出た請願も踏まえ「市の判断とは大きく異なるが、十分に考慮する必要がある。こども図書館は(再整備方針と)切り離す」と述べた。

 中央図書館などの再整備を巡って、市は昨年11月、中央図書館とこども図書館、映像文化ライブラリーの3館をA館に移す方針を表明。一方、市議会などから「議論不足」との指摘を受け、市は今年7月に再整備方針案を示し、8月下旬まで市民意見を募集していた。市は今後、中央図書館と映像文化ライブラリーの2館について、現地建て替え▽中央公園内の移転▽エールエールA館への移転―の3案を詳細に比較した上で本年度内の整備地の決定を目指す。(余村泰樹)

 

写真入り➡ https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/217456

 

9月22日 広島ホームテレビのHPで定野議員の質問と市の答弁についてレポート。

問題がほの見えてくる。

市の方針は、反対のあった子ども図書館だけを移転計画から切り離し、中央図書館と映像ライブラリーについては、エールエールA館への移転も含めて再検討するというもの。

それに対し定野議員(市政改革ネットワーク)は、一つだけ動かせばいい、一つ残せばいいというの野ではなく、図書館の在り方そのものが問われているのだから、しっかりした議論をしていくべきとの指摘。それに対し市民局は、議論が足りていないということはない、という態度で聴く耳を持っていない。

 

市民の文化ゾーンとしてある3つの施設は全体で一つのもの。これは実際に現地に行ってみるとよくわかる。私もこの5月に現地を見て、移転の発想の貧困を強く感じた。

うるさい反対があるから、まあここはひとつぐらいは残してやるか、といった行政の傲慢さと想像力の貧困を感じる。

5-Days(ファイブデイズ)が、広島市こども文化科学館・こども図書館の命名権獲得

同じ日、中森議員(共産党)も質問をしている。これは文字起こしで。

 

(中森辰一議員)

 次に、中央図書館等の問題について伺います。

 広島市が老朽化が進む中央図書館と、こども図書館、映像文化ライブラリーの3施設を一体化し、広島駅南口の商業ビル、エールエールA館に移転するという案を打ち出して以来、市民の間で中央図書館等のあり方や施設の更新のあり方について議論がなされ、提言も行われてきています。

 広島市では商業ビルへの移転を前提とした予算が承認されましたが、その際の付帯決議に沿って検討された「広島市図書館整備方針(素案)」が7月の総務委員会に提出されました。この素案は、広島市の図書館全体について、どのように今のサービスや施設を改善するか、といったことが箇条書きで書かれています。

今年2月17日に総務委員会に報告された「広島市中央図書館等再整備基本計画(案)」では、中央図書館、こども図書館、映像文化ライブラリーの3施設全体の再整備のコンセプトで掲げた機能として42項目が掲げられていました。これは、商業ビルへの移転を前提としてそういう機能を持った施設になるというものでした。

 これに対して、その後寄せられた市民や議会等からの意見や要望を受けてのものとして、再整備で実現をめざす機能が、中央図書館だけで60項目、こども図書館で26項目が掲げられています。2倍に増えています。

 これだけのサービスの拡充を進めていくとなると、相当なスペースの広さと、人の体制を大きくしていくことが必要になります。もともと、2月の基本計画(案)も、サービスや機能の拡充を図るものになっていたので、当然、現状よりもスペースは広くなっていましたし、人の体制も強化するものだったはずです。それに加えて、さらにサービスや機能が増えるわけですから、それにふさわしい広さと体制、さらに図書・資料の充実がなければなりません。当然財政的な裏付けも必要となります。

 この点、この素案を考えた市として、施設の規模についてどのような方向性を持っているのか、人の体制はどうするのか、財政の合意はあるのかどうか、お答えください。

 素晴らしい図書館にするために、市民や専門家を交えた深い検討が必要ですが、今回の素案もこれまでと同様、市の内部だけで検討されつくられたものです。それは、市の内部事情や場合によっては何らかの力関係が影響したのではないかという疑問が当然出てきます。

 改めて、市自体が市民に議論を呼びかけ、市がそのための議論の場を提供し、市と市民が一緒に議論して進める市民に開かれた形の取り組みが必要だと考えます。議会で付帯決議が議決された直後の第2回社会教育委員会議でも、同様の意見がありましたが、そうした取り組みはしないのかどうか、お答えください。

 昨日、こども図書館について、切り離して整理すると、市長が答弁されましたが、図書館のあり方について考えたり、こどもたちの文化について取り組んでこられた多くの市民からは、こども図書館の独自性や、平和公園に近いことが必要だ、あるいは自然環境に恵まれたいまの中央図書館・こども図書館の立地環境を大事にしてほしいという強い意見が寄せられています。

 今年2月の「広島市中央図書館等再整備基本計画(案)」にあるエールエールA館への移転を決めるまでの経緯を見ると、新たな立地場所について、中央公園外への移転建て替えとし、その移転先について広島駅周辺地区としたうえで、利用者のアクセス性から広島駅からペデストリアンデッキで接続できること、かつ経費の圧縮・工期の短縮を理由に既存ストックの活用を検討したとしています。 しかし、そんな都合のいい施設はエールエールA館しか見当たりません。その後まもなく広島駅南口開発からエールエールA館への移転の申し出があったとなると、「エールエールA館への移転ありき」だったのではないかという批判は根拠があります。

 広島市の中央図書館を古い商業ビルにもっていくのはみっともないからやめさせてほしいという厳しい声も聞きました。平和文化都市広島市の図書館として、市民が誇り、愛され、活用されるものにしていくために、少なくとも、商業ビルへの移転はやめるべきだと考えますが、市のお考えを改めてお聞かせください。

 図書館協議会でも社会教育委員会議でも、市民と一緒に議論できる場を求める意見があったと聞いています。また、これらの会議でもただ意見を聞くだけで、体系だった検討の場になっていないようです。そうであるなら、年末までに結論を出すのではなく、図書館のあり方を含めて体系だった形で市民との議論の場や専門機関での議論を重ねられるように、もっと時間をかけるべきだと考えますが、どうされるか答弁を求めます。

 次に、中央図書館は浅野図書館に沿革がありますが、浅野家が寄託している浅野文庫の約1万点の貴重な諸資料は、劣化を防ぐためとして中が見えないようにしてあります。しかし、研究用に保存するだけでは浅野家も本意ではないでしょう。デジタルアーカイブも一つですが、劣化しないための工夫をした上で、市民がそれらの諸資料を直接見ることができるようにする取り組みが大事です。本来は、独自の保存展示施設が必要ではないかと思います。ましてや、図書館の一部どころか、商業ビルの一角に保存するだけなど、とんでもないというのが浅野家の思いではなかろうかと推察します。

 他方、広島にゆかりのある文学者などの貴重な諸資料がおよそ3万点保管され、一部展示されていますが、そうした作家にゆかりのある方々が以前からそれらを専門に展示する文学館の設置を求めてこられました。市もその方向を否定してはこなかったはずです。

 そう考えると、この際、浅野家の諸資料と広島ゆかりの文学者の諸資料のための施設を併設という形で、独立した施設をつくるということも一つの方法だと考えます。

 その際は、広島の歴史から考えて中央公園内に、さらに中央図書館なども隣接して設置するべきだと考えます。

 浅野文庫と広島ゆかりの作家の諸資料、それぞれの扱いについて、市の将来的な考え方と、いま提案した独立した施設の建設について、市のお考えをお聞かせください。

 

(市民局長)

 中央図書館等の問題について数点のご質問に順次お答えいたします。初めに今回の広島市立図書館整備方針素案は、本年2月に市が報告した広島市立中央図書館等再整備基本計画案よりもサービス機能が拡充されている施設の規模や人の体制をどうするのか、また財政の合意があるのかについてです。

 広島市立図書館整備方針素案は、付帯決議に沿って新たに整備することになる中央図書館について、整備候補地の比較検討を行う際の市民からの意見等を反映するために策定したものです。

 新たな中央図書館として発揮すべきサービスや機能と、それに必要となる施設の規模等については今後、整備候補地を確定する際に、整備計画や概算事業費等で、また人の体制については新たな中央図書館の運営が決定されるまでにお示しすることになると考えております。

 次に、市が市民に議論を呼びかけ、そのための場を提供し、市民と一緒に議論して進める取り組みが必要だと考えるかどうか、また年末までに結論を出すのではなく、図書館のあり方を含めて体系だった形で、市民や専門機関の議論に時間をかけるべきだと考えるかどうかについてです。

 中央図書館等の再整備に当たっては、先ほど定野議員にご答弁しましたとおり、すでに市民や関係団体から意見を聞きするとともに、本市の審議会の専門の委員等と意見交換を行うなどしてきているところです。

 本市としては、付帯決議に沿って作業を進め、既に成立している関係予算が年度内に執行できるようにしていく必要があると考えております。

 次に、平和文化都市広島の図書館として、市民が誇り、愛され、活用されるものにしていくために、少なくとも商業ビルへの移転をやめるべきだと考えるかどうかについてです。

 昨日の本会議において、市長が宮崎議員にご答弁しましたとおり、新たな中央図書館は、他都市の先進的な図書館の機能も取り入れながら、次世代を担う若者を含む多くの市民や広島広域都市圏内の住民、国内外からの来訪者にもサービスを提供できるよう、機能の充実を図ることとしており、今後、付帯決議に基づき行うこととしている整備候補地の比較検討の中で、新たな中央図書館にふさわしい整備場所を決定することになると考えております。

 最後に浅野文庫と広島ゆかりの作家のそれぞれの資料の扱いについて、市の将来的な考えはどうか、またこれらの資料のための施設を中央公園内に中央図書館に隣接設置してはどうかについてです。

 浅野文庫の古文書等については、広島の文化伝統を後世に伝えることができる貴重なものであることから、その保存環境の確保と活用については、浅野家の意向を確認しながら、今回の再整備方針とは別に検討してまいります。

 また、広島ゆかりの作家の文学資料等についても、資料を寄贈していただいた方などと直接お会いして意見をお聞きしているところであり、引き続き十分に保管管理を行うとともに、活用を図るための方策について検討していく必要があると考えております。

 

【再質問】

(中森辰一議員)

 図書館の問題は、私は総務委員会ですので、引き続き議論させていただきたいと思っています。

 それからついでに言いますけど、移転の予算は年度内に執行しなければいけない、今はそういう議論をしていないと思いますので、これはこだわるべきではありません。

 

中森議員は、

(1)移転計画のなかで市民の要望も含めて市が提起したコンセプトを実現するために は、相当の予算、人員配置、具体的スペースの確保が必要と思うが、具体的な数字で示してほしい。

 

(2)素案は市の内部だけで考えられたもの。市の内部事情や何らかの力関係が現われたものではないのか。これ尾から市民との共同で計画を練り直していくつもりはないのか。

 

(3)この間の経緯を見ると、エールエールA館への移転ありきだったのではないかということが見えてくる。平和文化都市の中央図書館を古い商業施設の中に転することには強い反対の声がある。これについて市はどう考えているのか。

 

(4)市民と専門家との体系だった議論をすすめることが必要。そのためにもっと時間をかけるつもりはないか。

 

(5)朝の文庫の資料1万点、原爆に関わる資料3万点が中央図書館に保存されている。

現在の中央図書館に隣接する形でこれらを所蔵、公開するための新たな施設をつくるつもりはないか。

 

私(赤田)の雑駁なまとめだが、中森議員の質問を読むと、この問題の全体像、広島市の行政のずさんと市民の思いのすれ違いぶりがよく見えてくる。

 

これに対する市の答弁には、全く熱が感じられない。これでは、国際平和文化都市広島の名が泣いてしまう。

 

移転断念の日、テレビ新広島(TSS)が

「どう変わる?中央公園の再整備 こども文化科学館、こども図書館は…広島市」というミニ特集。

 

その中で

広島市は「こども図書館」と併設している「こども文化科学館」のリニューアルに合わせて隣にある「青少年センター」の機能の確保も考慮しながら整備していきたいとしています。 今回「こども文化科学館」について、詳しくみていきたいと思います。

 

としてなぜか子ども図書館問題はわきに追いやられて…。

 

これに対し、考える市民の会の中澤晶子さんは、

「市長の方針だと、リニューアル後のこども文化科学館は縮小される方向と思われます。この報道では、「全面リニューアルすることが決まっています」と書くだけで、

現在、リニューアルについての市民アンケートが行われていることに触れていません。

「リニューアルに合わせて最先端技術をテーマにした内容が取り入れられる予定です」と、リニューアルの内容まで決まっているような書き方は市民参加を妨げる中途半端な記事だと私は思います。」としている。

 

同じマスコミでも、バイアスのかかり方がかなり違う。「大本営」発表を中心とするのかどうか。

 

最後に、「考える市民の会」のコメント


広島市こども図書館」の移転撤回について(ご報告)

 長く厳しい暑さの夏も終わりを告げ、朝夕の涼風に秋を感じる季節となりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。いつもご支援いただき、ありがとうございます。

 さて、マスメディアの報道でご存じの通り、広島市議会において「広島市こども図書館」の駅前商業ビル・エールエールA館への移転が撤回されました。広島市議会 9 月 21 日一般質問で、自民党・市民クラブ所属議員の「整備素案にある、こども図書館を切り離して考えるとはどういうことか」という質問に対する市長答弁で明らかにされたもので、「広島市こども図書館」は、移転や建て替えではなく、現在の建物を利用し、耐震化と機能の充実を図るとの方針が示されました。
エールエールA館への移転が撤回されたことにつきましては、市民運動として一定の成果があったと考えます。これは偏に、署名、賛同、イベント参加などを通して、関心をお寄せくださった全国のみなさまのご協力の賜と厚く御礼申し上げます。
 しかしながら、この度の方針では、従来通り、移転整備に特化した審議会は設置されず、隣接する「広島市中央図書館」(市の基幹図書館・広島ゆかりの貴重な文学資料も多数所蔵)「映像文化ライブラリー」の移転計画はいまだ継続中であり、行政はエールエールA館移転を諦めている様子はありません。「こども図書館」にしても、手狭であり設備も古く、耐震化するだけでは、50年先にも子どもたちにとって希望の持てる理想の図書館、とはならないのです。当初、「こども図書館を、この豊かな緑の地から切り離し、駅前の中古商業ビルの上層階に移転するのはありえない。決め方も民主主義のルールに反している」との思いから始まった活動ですが、私たちはこの活動を通じて、市民はもとより、全国の図書館関係者や子どもの本に関わる作家・画家などの協力を得、ネットワークを構築し、日ごろ縁遠かった市議会にも足を運び、多くを学ぶことができました。その結果「中央図書館・映像文化ライブラリー・こども図書館は、丹下健三氏が構想した『平和の軸線』上の文化ゾーンとして一体的に捉え、まちづくりの観点からも平和公園から続く平和と文化の発信基地として整備されるべきである」との考えに至りました。

 従いまして、私たちは、こども図書館の駅前移転が撤回されたことに決して満足せず、他の団体と協働し、理念なき中央図書館等の移転に反対し、世界に誇れる文化と平和の発信基地としての図書館群を緑ゆたかな中央公園内の地に誕生させることを強く望むものです。みなさまにおかれましても、引き続き関心をお寄せいただき、お力添くださいますようお願い申し上げます。
ありがとうございます。
               こども図書館移転問題を考える市民の会

 

丹下健三氏の構想した「平和の軸線」は、異例穂と原爆ドームを結ぶ線上にさまざまな平和にまつわる建物を構築すること。

映画『ドライブマイカー』の1シーンで知られることとなった環境局中工場の建物もその線上にある。これについてはこのブログでもふれた。

 

最後に、中澤晶子さんからのメッセージ。

 

みなさま

いつもご支援いただき、ありがとうございます。

昨日も市議会を傍聴しましたが、行政は「うるさいおばさんたちが、

めんどうな反対をしているから、こども図書館だけは残してやろうではないか」という

態度があからさまでした。

これを受けまして、添付の通り、ご報告申し上げます。

どうぞご一読いただき、今後ともよろしくお願い申し上げます。

みなさまのお知り合いで、署名にご協力くださった方々に拡散いただけると幸いです。

取り急ぎ

                         中澤晶子

 

広島市広報紙 市民と市政 4月15日号 広島の子どもと共に40年

建設当初の建物。