『グレイト・インディアンズ・キッチン』教員である夫とリタイアした義父。二人に埋め込まれた差別の心理を、言葉よりただただ行動を追うことでていねいに描き出している。

映画備忘録。4月5日。

グレイト・インディアンズ・キッチン』(2021年製作/100分/G/インド/原題:The Great Indian Kitchen/脚本・監督:ジョーベービ/ニミシャ・サザヤン スラージ・ベニャーラムード/日本公開2022年1月21日)

 

ある一組の夫婦の姿を通して、インドの中流階級に根強く残る家父長制やミソジミー(女性嫌悪、女性蔑視)を鋭く描き、インド本国でも女性観客の支持を得て、口コミで話題と評判が広がった一作。インド、ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚する。夫は由緒ある家柄の出身で、伝統的な邸宅に暮らしている。一方、中東育ちで教育もあり、モダンな生活様式になじんだ妻は、結婚して夫とその両親とが同居する家で暮らしはじめるが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める。(映画ドットコム)

 

 

現状に対する批判的な視点を前面に出さず、インドの中流階級の生活を客観的に淡々と描いていて迫力を感じた。スマホを普通に使っているから、現代が舞台であることは間違いない。それにしてもいまだにこれほどの宗教生活をつづけているのかと驚かされる。

脚本は監督が担当。優れている。

 

キッチンを中心に、料理から後片付け、排水、ゴミ出しまで、これでもかとそのディティールを追う。画像2

 

キッチンには食事以外の時には顔を出さない教員である夫とリタイアした義父。二人に埋め込まれた差別の心理を、言葉よりただただ行動を追うことでていねいに描き出している。

家父長制や女性蔑視を支えているのは、男性だけではない。

実家の母親や夫の叔母?ら女性は、男中心の生活の枠組みを疑わず、旧来の家族像を守り続ける。

新婚の妻だけが「家」の中の夫の在り方に少しずつ疑問を感じていく過程が、キッチンだけでなく性生活の差別性をも通して描かれる。

 

 

ダンスの教師になりたいというささやかな妻の願いは、女には不似合いなものとして否定されていくが、家を出て自立したと思える妻の心情が、インド映画の常套表現である素敵なダンスシーンで表現されていて、小気味がいい。

 

いい映画だった。画像4