ゼレンスキー大統領の日本の国会でのオンライン演説が、昨夜18時から行われた。
みなさんの印象はどんなものだったろうか。
演説は、予想された東京大空襲や原爆について言及することなく、真珠湾やチャーチルの言葉、ベルリンの壁について触れたアメリカやイギリス、ドイツでの演説に比べて、メッセージ性という点ではやや弱かったなと思った。
内容的にはロシアの仕掛けた戦争への批判、国内の惨状、原発への攻撃、国連の改革の必要性、ロシアに対するさらなる経済制裁の強化、そして日本文化への礼賛といったところで、「戦争」より「平和」という言葉を多用していた。
原発のところで原爆や3・11の原発事故について触れてもよかったし、ロシアの攻撃に対して東京大空襲に触れてもよかった。さらに言えば、北方領土についてロシアの不法占拠という視点から触れてもよかった。
アメリカを「真珠湾を思い出せ」で鼓舞し、ドイツを「新たな壁」で批判するように、日本もロシアに領土を不法に取られているではないか、と呼びかけることも十分に考えられる。
そうしなかったのは、アメリカに対する配慮だろうか。
それとも、日本に対する国際的な評価によるものだろうか。
日本文化についての言及も抽象的なもので、演説自体が強い印象を残すものではなかった。
しかし、演説に対する各党の評価は、れいわ新選組以外は、自民党から共産党までほぼ絶賛。
事前に、「画面に出た時、終わったときは総立ちで(スタンディングオベーション)」という指示が次第の中に入っていた(笑)とはいえ、予想通りのアメリカの連邦議会と同じような反応ではあった。
しかし、ほんとうにこれでいいのか?
日本の国会は、ウクライナ支持という立場を国会決議という形で明らかにしてきた。与党だけでなく、れいわ新選組以外の野党すべてが賛成した。
そのうえでのこのゼレンスキー大統領の演説の実現。
これで日本は完全にウクライナ側に立ってしまった。
同時にロシアを敵国として定めたことになる。
NATOやEUの加盟国でもなく、アメリカとの軍事同盟と言っても、ほぼ「言いなり」のポチ状態。せいぜいがG7の一員。
そんな国が前のめりに戦争当事国の一方を支持し、大統領の演説を国会で行う・・・。このことの意味はそれほど軽いものではない。
ゼレンスキー大統領から見れば、日本はアメリカ抜きには軍事的には動くことはないだろうし、NATO諸国、EU諸国と違って距離的にも離れているから、経済制裁と経済的な支援を要請する対象と認識されているのではないか。
しかしロシアから見ればどうだろうか。
いま求められているのは、ロシアが仕掛けた戦争の戦禍にあえいでいるウクライナの人々だ。
旗幟を鮮明にすることより、中立の立場を前面に出し、避難民を受け入れているモルドバやポーランドをはじめとするウクライナ周辺国に対する支援を積極的に行い、日本としても避難民をしっかり受け入れる体制をつくることだ。
それが、憲法で非戦を誓った国がなすべき国際社会への働きかけではないだろうか。
いまさらながら云うが、ゼレンスキー大統領に国会演説をさせてはいけなかった。