『ギャング・オブ・アメリカ』(原題:Lansky)・・・ランスキーの、欲望と諦念が同居する人間味の深さがいい。

一昨日、散歩の途中、二人でモクレンの木を見上げて能天気に「見たことのない鳥だね、なんだろうねえ」などと話していたら、うしろから「ツグミですよ」の声。

いつも挨拶だけはする高齢の男性。賢そうなボーダーコリーを連れている。散歩というより訓練のために連れ歩いているといった風情で、いつもリードを両手で握りバッグを袈裟懸けにして、犬と並んで歩いている。話したのは初めて。

加古川河口 ツグミの画像写真はネットから

スズメより少し大きい。10月ごろにシベリアから大群で渡ってくる渡り鳥だそうだ。3月半ばには再び大群で北に帰っていくのだそうだ。今年4話目の鳥の同定。

 

映画備忘録。

『ギャング・オブ・アメリカ』(2021年製作/120分/R15+/アメリカ/原題:Lansky/脚本・監督:エタン・ロッカウエイ/出演:ハーベイ・カイテル サク・ワーシントン アナソフィア・ロブ/日本公開2022年2月4日)

禁酒法時代から半世紀にわたりアメリカの暗黒街を支配した伝説的マフィア、マイヤー・ランスキーの人生を描いたクライムドラマ。年老いたランスキーに伝記執筆のため作家がインタビューを行い、そこで語られるランスキーの人生を、1910年代から80年代まで、時代を行き来しながらサスペンスフルに描いていく。1981年、マイアミ。作家のデビッド・ストーンは、伝説的なマフィアであるマイヤー・ランスキーの伝記を書くことになり、ランスキー本人にインタビューをする。ランスキーの口から語られる彼の人生は、半世紀以上におよぶギャングたちの抗争の記録でもあった。そしてインタビューが終わりに近づいた頃、ストーンはFBIが3億ドルとも言われるランスキーの巨額な資産を捜査していることを知る。捜査協力を強いられたストーンは、ある決断を下すが……。作家ストーンをサム・ワーシントン、年老いたランスキーをハーベイ・カイテルが演じた。監督・脚本を手がけたエタン・ロッカウェイの父親であるロバート・ロッカウェイが、実際に生前のランスキーにインタビューを行っており、ワーシントン演じる作家ストーンのモデルになっている。(映画ドットコム)

 

ハーベイ・カイテルはよく知られた俳優だそうだが、私はあまり見た記憶がない。

カイテル演じる老人ランスキーと作家のサム・ワーシントンが演じるライター、デビッド・ストーンの会話が映画の外枠をつくっている。

ランスキーの口から語られるのは壮大なギャングの世界。それと同時にすべてビジネスと割り切りながら、戦前ドイツがアメリカに送り込んだナチスの諜報部員を駆逐するために政府に資金を援助するとか、戦後イスラエルナチスの戦犯を探すための資金を援助したりする話は興味深い。ユダヤ系の人間として矜持をもち、ギャングであることと両立させる。

FBIは今もランスキーの隠した3億ドルを探しており、過去の語りとは別に現在の捜査にデビッド・ストーンが絡み、壊れていくストーンの家庭とランスキーの家庭が対照されていく。

FBIに協力してランスキーを裏切るストーンだが、FBIの捜査はランスキーを追い詰めることはできない。

 

インタビューに応えるというかたちでありながら、回想シーンは迫力があり、現在進行のドラマにはリアリティがある。

 

何よりランスキーの、欲望と諦念が同居する人間味の深さがいい。

 

邦題はよくない。洋画のタイトルのつけ方、日本だけが独特なように思える。

配給会社が客を映画館に連れてくるためだけに、刺激的でわかりやすいタイトルをつけるのはわかるが、なんというか味わいがない。

この映画も端的に「Lansky」ですべてを表している。この映画はギャングの映画ではなく、ランスキーという人間のドラマだ。