『ナチスバスターズ』日本では私のように「ナチス」がタイトルに入っていればとりあえず見ておこうかという人が一定数いるため、こういう邦題になったのだろう。1941年の独ソ戦を背景にした「マカロニウエスタン」。ポスターのつくりがいかにもいかにもだ。

映画備忘録。12月24日。

ナチスバスターズ』(2020年製作/99分/G/ロシア/原題:The Red Ghost/監督:アンドレ・ボガテイレフ/出演:アレクセイ・シェフチェンコフ他/日本公開2021年12月3日)

 

第2次世界大戦下、極寒のソ連の地を舞台に、「赤い亡霊」と呼ばれるソ連の狙撃兵とナチスドイツ軍との戦いをサスペンスフルに描いたロシア製戦争アクション。1941年の冬。ソ連に侵攻したドイツ軍兵士の間で、「謎のソ連狙撃兵がドイツ兵を次々と射殺している」という噂が広まっていた。ドイツ兵はその正体不明の狙撃兵を「赤い亡霊」と呼び、いつ狙撃されるか分からない恐怖に怯えるようになっていく。同じ頃、部隊とはぐれてしまった5人のソ連兵たちが無人になった村にたどり付き、休息を取ろうとしていた。そこへ敵のドイツ軍部隊が現れ、5人は捕まっている味方を救出しようと戦いを挑むが、多勢に無勢で全滅の危機に陥る。その時、どこからともなく飛来した銃弾が次々とドイツ兵を倒してゆく。その銃弾こそ「赤い亡霊」が放ったものだった。

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邦題を直訳すれば、ナチスをやっつける者たち。

たしかに農場を舞台にみなでドイツ軍と戦うのだが、映画の中心は「赤い亡霊」ひとり。その意味では原題の『The Red Ghost』がそのままぴったりくる。

 

日本では私のように「ナチス」がタイトルの中に入っていればとりあえず見ておこうかという人が一定数いるため、こういう邦題になったのだろう。

 

ここにはホロコーストもなければユダヤ人差別もない。

いわば、1941年の独ソ戦を背景にした「マカロニウエスタン」。ポスターのつくりがいかにもいかにもだ。

 

社会性、思想性がない代わりに映画としてはうまくできている。

冒頭と幕切れに、ヒットラーの物まねをする役者とドイツ兵のかかわりを置いて、つかみと締めをしっかり作っている。起承転結がはっきり。

 

ソ連兵士たちは、女性も含めて(彼女は妊娠していてドイツ兵に包囲されたときに出産までする)知力も経験もあるかなりの老兵や酒好きだが戦闘能力の高い兵、強くないけど知恵のある兵など人物造形が深く魅力的。劣勢でもチームワークで闘っていくソ連兵の勇気と胆力を十分に描いている。ロシアでは拍手喝采だろう。プーチンが喜ぶ映画だ。

「赤い亡霊」は、ふしぎなことに人間的な面は全く見せず、セリフもほとんどない。アフガニスタンでのランボーマカロニウエスタンでのクリントイーストウッドはもう少し色気があったのだが。画像1

 

延々と続く戦闘シーンは迫力がある。

ドイツ兵の冷徹さを象徴するようなドイツの将校は、風呂に入っているときに戦闘が始まる。酷寒の中裸で闘い続けるシーンを、はたしてリアリティーというかどうか。ロシアではどんなふうに上映されたのか。日本では「ぼかし」が入っているぶん、少し笑えたが。