9月に見た『鳩の撃退法』に次のように書いた。
「この男が書いた小説(ウソ)を見破れるか?」という惹句は本編にはあまりかかわりがない。この作家は、若い編集者とともにどろなわで小説を書いているに過ぎない。はじめこそ、なんだ?何だ?と思わせるが、あとは何が何だかとっ散らかってしまってまとまらず終わってしまったという感じ。題材的には芝居の方がいいのかもしれない。
で、原作を読むと書いた。
けっこうしんどかった。上下の文庫本で合わせて1100ページ。段落の少ない文章の上、時制がよく変わる。ページを繰って前の部分を読み直すことも多かった。
映画同様、クスっと笑わせてくれるところはあるのだが、小説もやっぱり映画ほどではないにしてもとっ散らかって終わっているように思えた。
一番は「鳩」=偽札と倉田の関わりが最後までよくわからなかったこと。
部分的に面白いところはあるのだが、布石が解かれていくような快感はないし、読み切ったという達成感もない。糸井重里のように「感じが良くてかっこいい」とはあまり思えなかった。
私の理解能力、小説を読む力が弱いのかもしれない。
桐野夏生続きで、惰性で『だから荒野』(文庫版2016年)を読む。
これは2015年に単行本(2012年)NHKがドラマ化。全8回を見た記憶がある。主演が鈴木京香だったし。他の出演者は杉本哲太、高橋一生、泉谷しげる、品川徹。
原作も長編だが、ドラマをNHKのHPをもとに思い出してみると、いわゆる脚色がかなりされていて、原作にはないエピソードがふんだんに含まれていたことがわかる。原作を大胆に膨らませている。
連続ドラマにするために、全体の山場と回ごとの山場が設定されているために、物語が重層的になっていて、つい引き込まれて毎回見てしまったのを覚えている。
『鳩の撃退法』も、8回ほどの連続ドラマならば、面白いのではないか。
うらぶれた直木賞作家の津田伸一が、現実に自分の周りで起きている事態を小説にしていくうちに、現実と原稿用紙が交差し、抜きつ抜かれつしていく。
全体を通すテーマが「鳩」=偽札であることから、毎回のドラマが何人もの魅力的な登場人物によってつくられていくとすれば、そんなドラマ見てみたい。