『椿の庭』(2020年/128分/日本/監督・脚本・撮影・編集:上田義彦/出演:富司純子富司純子・シム・ウンギョン・鈴木京香・チャン・チェン/公開2021年4月)映画の中心は、そうした一つひとつの家具、これが本当に素晴らしい。また部屋のしつらえ、配置なども。そして季節が変わるごとに表情を変える庭。気がつけば、富司純子演じる絹子さんもまたその一つとなって見つめられ、消えていく。対照的なのは孫娘の渚のシム・ウンギョン。枯れて消えていく家と庭と絹子さん、それに巻き込まれていくかに見えながらそこからすっくと立ちあ

映画の備忘録

7月6日

『椿の庭』(2020年/128分/日本/監督・脚本・撮影・編集:上田義彦/出演:富司純子富司純子・シム・ウンギョン・鈴木京香チャン・チェン/公開2021年4月)

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最初の5分みて、ラストまでもつかな?と思った。写真家らしいという言い方が適切かどうかわからないが、かなり思い入れのある映像が続いたからだ。

 

庭に椿が咲き誇る一軒家。長年連れ添った夫を亡くした絹子は、夫と子どもたちとの思い出が詰まったその家で娘の忘れ形見である孫娘の渚と暮らしていた。夫の四十九日を終えたばかりの春の朝、世話していた金魚が死んでしまう。金魚は椿の花で体を包まれ、庭の土へと還っていった。庭に咲く色とりどりの草花から季節の移ろいを感じ、家を訪れる人びとと語らいながら、過去に思いをはせながら日々を生きる絹子と渚。

                         映画ドットコムから

 

ストーリーはないに等しいし、ストーリーを追っても何も見えてこない。

長い間住んだ家と庭、一つひとつの事物が夫婦の人生。レコードプレーヤーから流れる

ブラザースフォアの「トライ トゥ リメンバー」から二人の時代がわかる。

映画の中心は、そうした一つひとつの家具、これが本当に素晴らしい。また部屋のしつらえ、配置なども。そして季節が変わるごとに表情を変える庭。気がつけば、富司純子演じる絹子さんもまたその一つとなって見つめられ、消えていく。対照的なのは孫娘の渚のシム・ウンギョン。枯れて消えていく家と庭と絹子さん、それに巻き込まれていくかに見えながらそこからすっくと立ちあがってでていく清冽さのようなものがこの役者の特質だと思う。

『サニー 永遠の仲間たち』(2012)『怪しい彼女』(2014)「新感染 ファイナルエキスプレス』(2017)『新聞記者』(2019)『架空OL日記』(2019)とみてきたが、存在感が増していると思う。いい役者だ。

富司純子はもういうことなし。絹子さんではなく、純子さんそのもの。76歳。着物と立ち居振る舞い、凄みを感じさせる。

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ただ、チャン・チェンをあえて出演させた理由がよくわからない。

チャン・チェンは15歳の時にエドワード・ヤン監督の『ク―リンチェ少年殺人事件』に出ている。1991年につくられたときには見ておらず、2017年にデジタルリマスター版でさ再映になったときに見た。236分、むずかしいところもあったが、唸った。チャン・チェンは印象的。それ以後、台湾のトップスターとなるが、見たのはこの映画が初めて。彼でなければならなかった理由があるのだろうが、私にはわからない。

明らかに外国人である彼が税理士であり、田辺誠一不破万作に売買を持ち掛け、上手に使い続けてくれると絹子さんには言いながら、実際には家は解体されてしまう。

世間ずれしていない税理士、彼がこの映画の独特の雰囲気をつくりだしているということか。

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ラストまでもつかな?と書いたが、引き込まれた。

ただ、最後の家の解体場面やバスのシーンなどいるのかなとも。金魚のメタファーも少し入れ込みすぎのよう。でも、でもだ。悪くない映画だ。忘れにくい映画だ。

 

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