6月30日Amazonプライムビデオで
『ノマドランド』(2020年製作/108分/G/アメリカ/原題:Nomadland/原作:ジェシカ・ブルーダー/監督:クロエ・ジャオ/出演:フランシス・マクド―マンド デヴィッド・ストラザーン リンダ・メイ他/2021年3月日本公開/400円)
「スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、「ザ・ライダー」で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。
映画ドットコムから
という説明を読んでも、これが自分の見た映画か?と思ってしまう。説明は間違ってはいないが、合っているとも思えない。こんなふうに言葉で説明してしまうと、そこから抜け落ちてしまうたくさんのものがこの映画には詰まっている。今までにあまり見たことのない不思議な映画だ。フィクションとドキュメンタリーの境界を越えたところに成立する映画。
フランシス・マクド―マンド デヴィッド・ストラザーンの二人以外はすべて素人、本物のノマドの人たちだという。本物を演じている、そのすごさに圧倒されていたのに、みな実は本物だった。あたりまえのことだけれど、本物がそのまま演じれば本物に見えることなどありえない。本物を演じようとする中に生まれる演技の深さが本物に見せてくれるものだ。彼らが発する一つひとつの言葉がもつ陰影は、重く深く響く。
現在のアメリカという国のありようを旅するノマドを通して描いている、と言ってしまうと、これもまた違うような気がする。ケン・ローチのような社会派的なものではなく、登場してくる人物の思索の深さが見るほうに染み出してくるような独特の感覚。
クロエ・ジャオ監督は82年生まれの北京出身の女性監督。何が、何をどうすればこんな映画の世界を描くことができたのだろうか。カウリスマキにもダルデンヌ兄弟にもない透徹した独特の叙情と哲学性を感じる。
久しぶりにすごい映画をみた。映画館でみたかった。
アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞の3部門を受賞。アカデミー賞がこの作品を選ぶのもすごいことだ。
リンダ・メイ
久しぶりに週刊文春を買う。立花隆追悼14頁追悼保存版と銘打たれている。
一気に読んだ。これだけかい?という思い。立花の評伝を書く人はいないのだろうか。
大島康徳さんが6月30日に亡くなっていた。70歳。大腸がん。東京新聞の一面下の連載『この道』が続いている。野球の話がめっぽう面白かった。今、がんの話が続いてる。
7月2日、第76回の後段部分を引用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
がん患者はね、誰だって頑張っているんですよ。直りたいと努力しているんです。でも、体力が衰えているのに無理して手術を繰り返したり、頑張りすぎて帰って寿命を縮めて、普通の生活ができなくなる。それはよくないことです。
僕は怠け者の一面もありますから、医師にこう言います。「ニ週間に一回の抗がん剤治療を三週間に一回にできませんか」「あの飲み薬、飲んだ後、つらくなるので、やめてもいいですかね」
がん患者としては優等生ではないのでしょうが、医者とコミュニケーションが取れるのであれば、相談して、自分にあった抗がん剤治療を進めてもいいのではないかと思います。もちろん、徹底的にがんと闘う人がいてもいいと思います。大事なことは、勝つことではなく、負けないこと。自分らしくがんと向き合うことではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー