映画備忘録。6月8日。
『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』2020年製作/105分/日本/監督:池田暁/出演:前原滉 嶋田久作 片桐はいり きたろう 橋本マナミ 石橋蓮司/2021年3月26日公開)
この映画、公開が3月26日。この日は金曜日。映画情報が新聞に載るのも金曜日。切り抜きをめくってみると3月26日の東京新聞は、26日に公開される6本の映画を紹介している。
『テスラ エジソンが恐れた天才』『旅立つ息子へ』『だまし絵の牙』『ノマドランド』『モンスターハンター』そして『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』。それぞれ300字ほどで紹介が書かれている。
6本のうち『旅立つ~』『だまし絵』『きまじめ楽隊~』の3つに自分で〇をつけた。みに行こうというしるし。
2か月くらいの間にこの3本をみた。満足したのは『旅立つ~』だけ。
新聞の紹介を読み返してみると、
『だまし絵の牙』は、
「・・・コメディの要素もあるが、単なるドタバタ劇ではない。タレント作家の起用など、出版界で実際に会った試みも盛り込まれ、リアルさを併せ持つ。「面白いもの」をひたむきに求める速水(大泉洋)らの姿に、苦境脱出のヒントも読み取りたくなる」
とまとめている。実際に見た感想としては、ドタバタ劇だと思った。リアリティありそうでそうでもない。安っぽい、かな。大泉洋の演技もパターン化している。
『旅立つ~』の紹介にはほとんど論評らしきところはなし。ほぼあらすじの紹介。評価は「イスラエルのアカデミー賞を総なめにした感動作」。タイトルからしてよくある「ヒューマンドラマ」かと思ったが、自閉症の父子の物語に、とりわけ父親の表情の深さに惹かれ、みた。上質の映画だった。
そして『きまじめ楽隊~』はというと、
「川の向こうとの銃撃戦を「作業」と呼び、朝から夕方まで連日作業を続ける兵士たち。食堂での昼飯休憩もある。現実離れした寓話なのだが、驚くほどリアルな一面がある。」
なんだかよさそうだし、出演する役者陣に惹かれて「みよう」と〇をつけたようだ。
実際にみてみると、きたろう、嶋田久作、片桐はいり、石橋蓮司・・・演じていて楽しいのだろうか、と思った。
セリフはすべて棒読み。みなロボットのような動きをする。「町」で起きる事象すべてが日本の、戦争の、政治の、人間のメタファーなのだろうが、決定的なことはそこにあまりユーモアが感じられないことだ。だから見ていて退屈。自分が鈍いのかもしれないが。
根岸吉太郎監督がテリー・ギリアムとカウリスマキに見せたいと評価しているが、どうだろう。テリー・ギリアムは好みではないが、カウリスマキは好きだ。確かに表情のないセリフなどはカウリスマキふうではあるが、基本的に映画に流れる思想が違うのではないかと思う。
ちなみに根岸吉太郎という監督の最近作『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』(2009年)もみたが?だった。『遠雷』(1981年)は、むせかえるような汗のにおいがする映画で、好印象が残っているのだが、コメントは腑に落ちない。
『きまじめ楽隊~』、駄作とは思わない。やろうとしていることに一貫性が感じられるし、丁寧につくっていると思う・・・でも退屈、だから映画としてはいまいち。どちらかと言えば舞台でやったほうがいいもの。
最後に出てくる長大な大砲の爆発シーン、CGだと思うがぞっとするほど原爆に酷似していてリアル。これがまたズレを感じさせた。
まあ、3本見て1本が面白かったのだから、暇つぶしに映画をみている人間にとっては十分、というところなのだが、新聞の映画紹介ってどうなんだろう。試写会に行けば配給会社からのプッシュや?があるのだろうか。読者を映画館に引っ張ってくる役割を文化部の記者が担っているにしても、もう少し中身に立ち入って記者の主観を述べてもいいのにと思う。
二人の話を聞きながら食堂のおばさんはそれぞれの茶碗にご飯を足したり引いたりする。演劇的ではあるが、映画としてはあまり面白いとは思えなかった。