『ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに』サーロー節子さんという人の存在感、ある種のカリスマ性、魅力が詰まった映画だ。よどみなくというのとは少し違う、説得力のある英語。毅然としたたたずまいと強い視線。近くでこういう人を見たことがない。稀有な人。

22日(木)藤沢のかかりつけ医の受診日。

ずいぶん久しぶりに伊勢佐木町のシネマリンに行く。

狭い劇場なので、閉所気味のわたしは苦手なのだが、去年から座席指定ができるようになったというので、さっそく予約する。チケットは番号ではなく、スマホQRコードをコピーして持っていく方式。

 

二本続けてみる。

 

ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに』(2019年/82分/アメリカ/原題:The Vow from Hiroshima/監督:スーザン・ストリクラー/製作:スーザン・ストリクラー 竹内道/日本公開2021年4月17日)

 

集客が見込めないのだろう、ロードショーは全国8館だけ。残念。関東では渋谷と関内。あとは京都、大阪、広島など。

 

2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO核兵器廃絶国際キャンペーンICAN)」の発足当時より、同団体を代表して国連や国政会議で被爆者としての体験を伝え続けてきた日本人女性・サーロー節子の活動を追ったドキュメンタリー。13歳の時に被爆し、300人以上もの学友を一瞬にして亡くしたサーロー節子。その後カナダ人と結婚してトロントに移住し、全世界へ向けて平和活動を続ける彼女を、4年間にわたって密着取材。さらに、被爆2世である本作のプロデューサー・竹内道が、節子との出会いを通して自身の家族の被爆の歴史に目を向け、被爆2世としての自分を見つめ直していく姿を描く。(映画ドットコムから)

 

サーロー節子さんという人の存在感、ある種のカリスマ性、魅力が詰まった映画だ。よどみなくというのとは少し違う、説得力のある英語。毅然としたたたずまいと強い視線。近くでこういう人を見たことがない。稀有な人。

 

映画はサーローさんの来歴を被爆から追うが、あえてその心情に踏み込まない。ひたすら前へ進み、ノーベル平和賞受賞講演まで突っ切るのだが、その裏には夫との関係や子どもたちとの関係など、長い間にはさまざまな桎梏があったはずだ。もちろん、被爆者としての苦しみが最初にあるわけだが、カメラはひたすらにサーローさんの強い視線を外さずに追い続けている。意図的なのかどうかはわからないが、編集自体が日本的な湿っぽさを感じさせない。

 

その代わりと言っては何だが、偶然、通訳としてであった竹内道さんの家族探しの面もあって、映画に深みが出た。被爆者が「語らないこと」の意味、「語らないことで家族を守った」母のことをサーローさんがそのまま肯定するシーンが印象的だ。

 

核兵器禁止条約から逃亡を続けている日本政府にとっては、国民に見せたくない映画だろうが、世界はこういうふうにして動いているということを学ぶためには格好の材料だ。評判が評判を呼んで上映が広がってほしい映画だ。