病院の話②

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パセリも元気に育っている

病院話の続き。

 

先日の診断を受けて、3月12日に入院した。予想だにしなかった心臓カテーテル検査である。

7時半ごろに家を出る。いい天気である。1時間半ほどかかって9時過ぎに病院に到着。

受け付けを済ませてすぐに点滴室へ。PCR検査である。

検査は、テレビでよく見る鼻に綿棒のようなものを突っ込むものかと思っていたのだが、ここでは唾液による検査。

試験管のようなものに1㌢ほどの分量の唾液を入れろという。マジックの手書きで黒い線が引いてある。

泡まじりの唾液はすぐに1㌢を超す。たわいもないものよと思って看護師のところに持っていくと、泡ではだめだという。ちゃんとした水分で1㌢ないと検査ができないのだそうだ。

それから15分、あちこち顎のあたりを押さえてなんとか1㌢を確保。9時半。

結果判明まで1時間半ほどかかるという話。ロビーで本を読む。飽きるとコンビニ散策。本を読む。飽きるとTully's coffeeで暇をつぶし、また本を読む。

予定の11時になっても携帯は鳴らない。11時半になってもうんともすんとも言わない。まさか陽性?それとも忘れられている?12時、まだだ。あまりの暇さに入口の検温の様子を見る。顔を画面の枠の中に入れて計測するのだが、三者三様。少し気分がまぎれる。

12時20分。携帯が鳴る。陰性。入院手続きをしてくれという。

書類を出して4階のHCU、心臓センターへ。しかし、満床とのこと。9階の角部屋へ。

「角」と言っても角張ってはおらず、窓は湾曲していて大きい。見晴らしがよい。東海道線が見える。その向こうに湘南モノレールが見える位置関係だが、目を凝らしても見えない。

3人部屋。私が入って3人に。ベッドにはカーテンが引かれていてどんな患者さんかはわからない。

隣の人は食事をしている。病院食である。

私のところには、検温、血圧、点滴の入口用の注射に看護師が来るが、昼食はないらしい。

若い看護師。注射器の針をこともなげに刺すが、かなり痛い。ここ数年にない痛さ。カテーテル用の特別の注射か?と思ったら、何も言わずに針を抜いていなくなる。

数分後、別の看護師が来て「入れなおしますね」。

痛くない。下手だったということか。特別なのは針じゃなくて看護師のほう。

13時。

昼食抜きの検査なのだから、すぐにお呼びが・・・。来ない。

 

点滴が始まる。生理食塩水。隣の患者さん、年配の男性の方だが、退院するという。

軽装で軽く手を挙げて「お大事に」。

部屋を出て30秒後、戻ってきて、カードをテーブルに。

「60ぐらい残っているから使って」

テレビのカード。1泊の予定だから買うつもりがなかった。ありがたくいただくことに。

 

15時。待ちくたびれたところに来たのは、昼食。トレイには「遅食」と書いた紙が貼ってある。

検査が遅れていて、私の番はまだ来ないとのこと。そこで「遅食」の配膳に。初めて聞いた言葉。

お迎えが来たのは、16時20分。いよいよ冠動脈にカテーテルが入る。

 

看護師2人に付き添われてカテーテル室の外の待合。問診、血圧測定のあと、ここでまたウエイティング。1時間後、ようやく処置用のベッドへ。

一日に行う心臓カテーテルの検査や治療の数はかなりの数になるようだ。患者によって容体は異なるから、白内障の手術のように「ハイ次、ハイ次」とはいかないようだ。

 

出てきたドクターは、この間の総長さんではなかった。若いイケメンのドクター。

あとで見てみたところ、循環器のドクターだけでも15人ほどいる。大変な大所帯。

総長が問診をし、判断をしたら、それを受けて若いドクターが処置をするようだ。難しい手術は総長がするのだろうか。

 

手首に麻酔の注射。仰向けになっているから見えるのは天井だけ。

と思っていたら、1㍍四方の機械が顔の前に覆いかぶさってくる。

「赤田さん、入れていきますよ」「手が熱くなります」

微妙な違和感。

覆いかぶさっているのはレントゲン。ドクターは血管に入っていくカテーテルや造影剤をレントゲンに映しながら見ているようだ。

時々、ドクターの手が指に当たる。これが何度かあったのだが、その瞬間、ふっと気持ちが楽になる。緊張していること、不安に感じていることに気が付く。

30分ほどで「そろそろ終わりますよ」の女性の看護師の声。ホッとする。

 

すこしぼうーっとするが、歩いて部屋に戻る。

カテーテルが入った手首はきつく圧迫されている。2時間ほどかけて緩めていくのだそうだ。

 

夕食を食べ、コンビニで買った馳星周の文庫本『蒼き山嶺』を読む。2016年に単行本で出た小説。

馳星周は若いころにたくさん読んだ。『不夜城』をはじめ、新宿を舞台にしたものなど、ずいぶん楽しませもらった。ついこの間『少年と犬』で直木賞。読んでいないが、こういうのを書くようになったんだと少し意外だった。

『蒼き山嶺』に登場するのは、大学時代の山岳部の3人の仲間たち。20年を経て一人は山岳ガイドに、一人は警視庁公安部の刑事に。そしてもう一人はプロの登山家となり、K2で遭難。前者二人が山で偶然出会って・・・遭難したプロの登山家によく似た女性が登場して・・・。

 

目くるめく展開の面白さについつい夜更かし。

20時ごろ、病棟に上がってきたドクターの見立てを聞いた後の重い気分を紛らせてもらった。

 

朝、窓の外は雨でくもっている。豪雨になるという予報。

Mさん、今日はクルマで来てくれるという。10時ごろにもう一度二人でドクターの話を聞く。

 

来週、再入院。冠動脈2か所にステントを入れる。

病名は無症候性心筋虚血。無だの心だの虚だの禅のよう。気分が重くなる。

要するに自覚症状はないけれども、心筋に血が十分に通っていない状態ということだ。

50代初め、仕事が込んできたりすると、よく胸が苦しくなったり、顎が痛くなったりしたことがあった。今思えばあれが「虚血性狭心症」だったようだ。

悪化することなく、おとなしくしていると治ったので、あまり気にしないでいた。

あれから10数年、加齢とともに動脈硬化も進み、冠動脈が狭まって虚血状態になっていたということだ。

血液サラサラ用のバイアスピリンにエフィエントを処方され、月末29日に入院、治療をすることに。

 

先週、病院のエントランスを入るときには考えてもいなかった結果だが、自覚症状のないまま心筋梗塞となったり、脳梗塞となったりすることを考えれば、はやめに対応を取っておくことが最善の対応なのだろう。手がないわけではないのだか、と思い定めた。

 

雨がひどくなって、保土ヶ谷バイパスはトラックの水しぶきが激しくかかる。

明後日はMさんの?回目の誕生日。明夕、近くの隠れ家的な焼肉屋を予約していたことを思い出した。気分がすっと軽くなる。現金なものである。