萩生田大臣の『修学旅行にGoToを』は、国策推進のために「他人のふんどし」を使って、学校や児童、生徒を効率よく利用しようという試み。この呼びかけでまた現場はいらぬ問題を抱え込むことにならないか。

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グランベリーパークのくまの親子(散歩の途中で)


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大変な分量だから、毎回は読まない。

気が向いたり、気になることがあるとさかのぼって見てみたりする。

 

フォローしているTwitterで、GoToトラベルと修学旅行の関連がツイートされていた。

それで11月4日の萩生田文科大臣の定例会見を見てみた。すでにテキストになっている。

 

記者)
 Go Toトラベルの関係で伺うんですけれども、観光を主目的としない旅行が除外される方針が出されていますけれども、今後ですね、修学旅行、積極的に使ってほしいというふうにおっしゃっていたと思うんですが、同じように、対象からいずれ外れていったりとかしないかというので不安を持たれているところもあるみたいなんですけれども。何かもう、政府の方で擦り合わせができているようであればお願いします。

大臣)
 このGo Toトラベルを始める前からですね、学校の修学旅行は、このGo Toトラベルの対象にしてほしいということで、国土交通省観光庁としっかり擦り合わせをして始めましたので、将来的にも、修学旅行が外れるということはございません。安心して使っていただきたいと思います。で、あの、色んな自治体がですね、文科省のメッセージも受けて、知恵を出していただいていることに感謝したいと思います。一度中止をした自治体が、改めてですね、旅行会社などとも検討しながらですね、日程を短くしたり、場所を近くにしたりしながら、何とか、代替の修学旅行を実施していただいている事例をたくさん聞いておりまして、繰り返しになりますけど、3月31日までが学期なので、仮に、卒業式が終わった後であってもですね、6年生や中学3年生、ぜひ、修学旅行に代替するようなイベントをですね、やって、集団活動の総仕上げをしていただきたいなと、そう期待をしています。

事前に質問を出しているのだろう、大臣は立て板に水を流すがごとしだ。この後のやりとりはなし。とりあえず言っておこうということだ。

 

GoToトラベルが会社の出張など観光目的外の利用がなされることに対し、国交省などがストップをかけ始めている。

修学旅行も観光目的とは言えないということから、記者は「いずれ対象から外れて」いくのではないかという危惧があっての質問だったようだ。

 

萩生田大臣は、関係省庁としっかりすり合わせをしているから、修学旅行がGoToから外れることはない、いったん中止したものでも代替行事として、卒業式のあとでもいいから実施してほしい、と云うのだ。

 

なんだか萩生田大臣、いつもだけれど、いい人みたいに見える。

でも、そうだろうか。

 

これって国策推進のために「他人のふんどし」を使って、学校や児童、生徒を効率よく利用しようという試みではないのか。

 

GoToは、コロナで冷え込んだ経済を1兆1千億円以上をつぎ込んで、各地にどんどん観光旅行をしてお金を落としてほしいというものだ。

 

一方でブレーキ(自粛)をかけながら、アクセルも同時に踏むという綱渡りのような国策。

 

その中に修学旅行を置いてみる。

修学旅行の目的は観光か?

実質的にそうなってしまう学校もないわけではないが、修学旅行は学習指導要領(特活)の一環である。勉強の一部だ。

 

それを文科大臣が「目的は別として、せっかく使える予算があるんだから、うちも便乗させてもらえるよう話をしておいたから」と、したり顔で云うのだ。

 

一年以上も前から事前学習に取り組み、時間をかけて準備してきたものを、この春、苦渋の決断で断念した学校が多い。

 

学年4クラスならば人数は最大160人だ。5クラス以上ならば200人を超える。

そんな集団が、首都圏からバスや新幹線に乗って移動、目的地までかなりの移動時間を要して向かうことに危惧と不安をおぼえないわけにはいかない。

万一、コロナを発症したらクラスターとなることは間違いない。

 

自分たちだけでなく、行先にも迷惑をかけることになる。そのうえ、100人の生徒には健康上の問題を抱えている生徒も少なくない。

何度も何度も議論をしたうえでの決断だったはずだ。

 

それがここにきて、短くしてもいいから、近くてもいいから、GoToを利用して!と文科大臣が言うのだ。

 

お金が安くなる、それなら検討してみようかとなるだろうか。それほど現場が見識がないとは思いたくない。

 

いったい全体、これはお金の問題だろうか。

 

GoToを利用して出かけて、万一のことがあっても、文科省は責任などとるはずもない。

出かける責任は当該の学校にある。

 

しかし「やらない」と決めたものでも、「いやいやぜひGoToを利用して」と大臣が言えば、気持ちが揺らぐ。子どもはもちろん、保護者も大臣がああ云っているなら行かせてあげたい、くらいの意見はたくさん出るだろう。

 

全国的に「修学旅行が(ほとんど)ない」という、たぶん戦後一度もなかった事態にあって、

「出来れば行かせてやりたい」は、人情である。

 

しかし、何か、不慮の事故で中止したわけではない。コロナ禍は終わったわけではないのだ。冬に向けて大きな第三波も予想されている。インフルエンザだってある。

 

そんな時に目的外使用の予算で「さあどうぞどうぞ」は、学校や生徒のためというより、どちらかといえば、経済を回すという国策を優先させた非情な呼びかけではないのか。この呼びかけでまた現場はいらぬ問題を抱え込むことにならないか。

 

他省の予算に便乗して、現場の決断を揺らがせるようなことをしてはならないと思う。

 

卒業式が終わってからでも?よく云うとおもう。

 

現場がどんなところか分かっていない人の発言である。

これから3月にかけて学校がどんな異様な状態になっていくか。入試に関わる異常な事態だけでなく、卒業式すら今春同様どうなるか分からない状態。授業の中身だって終わっちゃいない。来年に、というわけはいかない。

 

予算はありますからどうぞどうぞ、は、管轄省庁としての、その大臣としての見識のなさを露呈した発言だと、私は思う。

 

萩生田大臣のいい人ぶりの発言は、しっかり眉唾をつけて聞かなければならない。