梅雨が明けない。
去年の日記を見てみた。
この時期、入院中だった。26日に梅雨明けとある。
「・・・着替えを理由に点滴を外してもらい、外に出てみる。久しぶりの青空。ともにすっきり。昼食はまだ三分がゆだが・・・」
この前々日に3時間半かかって胃がんを切除。それよりも点滴の「拘束感」が嫌だったようだ。
昨日、散歩の途中で、同時に3羽のカワセミの飛翔を目撃。今までにないこと。
カワウ、カモ、カワセミの3ショットも。
この2、3日、狭い庭の梅の木にシジュウカラがやってくる。電子音のようなチチチという啼き声に誘われて外を見ると、きまって梅の木の枝を渡っている。何か梅の木との来歴があるのだろうか。
あ、今もチチチが聞こえる。
今朝、友人の石毛拓郎さんから、
「7月6日、鈴木常吉さんが亡くなりました。食道がん65歳、春になったらリハビリできるので会える、との約束果たせず。彼とは四半世紀の付き合いだった。」
ネットを見てみると、昨日、事務所が発表したとのこと。
常吉さんと云っても、さほど知名度はないが、ドラマ『深夜食堂』の主題歌を歌った人といえば、膝を打つ人がいるかもしれない。
アルバム『ぜいご』に収録された「思ひ出」というなんとも哀愁を誘う曲だ。原曲はアイルランド民謡だそうだ。
何がきっかけだったかもう覚えていないが、歌声に惹かれてファンになった。それほど売れていないころだった。
CDを注文したら、本人から送られてきた。インディー版だったのだろう。サービスに別のシングルのCDもつけてくれた。
石毛さんは、アルバム『望郷』の中の「トリちゃんの夢」の詩を書いている。</p>
それを見つけて石毛さんに話した。石毛さんは、時々会うんだよ、とのこと。
そのときに、常吉さんが横浜・日ノ出町からすぐのシャンソン・バー『シャノアール』でもライブをやったことがあるとおききした。
『シャノアール』なら、常吉さんの歌はぴったりだろうなあ、次の機会があればぜひ教えてくださいねとお願いしたのが、もう10年ほど前になるだろうか。
アルバム『ぜいご』のなかに「ミノ君」という歌がある。この曲にまつわる思い出を
このブログに書いたのは、いつだったか。おととしだったかな。
ミノ君、とは、画家の美濃瓢吾さんのことで、美濃さんが浅草・木馬館(浪曲や講談の常打ち小屋)に住んで、売店でピーナツを売っていた様子などが歌われている。
美濃さんには『浅草木馬館日記』(1996年・筑摩書房)という本があって、自由で気ままな浅草の生活が軽いタッチで描かれている。
このアルバムを買ったころ、授業をもっていたあるクラスに、少し不登校気味の色白で小柄なミノ君という生徒がいた。休みがちではあるが、とりわけて男子に人気があるという不思議な少年だった。ある時授業の合間に「”ミノ君”という歌があるんだけどねえ」というと、あんのじょう「聞きたい!!」の声。
うけた。どうしてなのか意味がわからなかったけど、とにかく曲をかけると中学生が喜んだ。
他のクラスにも飛び火して、「ミノ君聴かせて!」。
そのうち「ミノ君」を口ずさむ子たちまで出てきた。
『ぜいご』の最後の曲「お茶碗」という曲がある。
歌い終わって、わずかに空白部分があり、そのあとに「咳払い」が入る。まるで尾崎放哉である。
歌手の禁忌である咳払いさえも、鈴木常吉は音楽にしてしまう。
「煙草のめのめ」はたしか北原白秋の詩。これもいい。
2:25あたりに常吉さんが出ている。セリフも。
会ったことのない人だけど、会いたかった。
なにより歌を聴いてみたかった。