『もみの家』・・・監督があわてていない。セリフのないところ、言いよどむところ、などがとっても自然。みる側に「考える時間」「想像する時間」を与えてくれる。行間とか余白を大事にしているなと思った。監督のセンスがとってもいいと思った。

4月7日午後、田園都市線と地下鉄ブルーラインを乗り継いで阪東橋。

 

田園都市線ではあまり感じなかったが、横浜を北から南へ走る地下鉄のなかは、なんだか居心地の悪さを感じる。客同士が知り合いであるはずもないのだが、どこか空々しく他人を遠ざけている空気を感じる。咳込みでもしようものなら、きつい視線が飛んでくるかもしれない。

 

少し時間があったので、近くの大岡川へ。

カモではなく、カモメが10数羽、浮かんでいる。

ジャック&ベテイあたりだと、河口から2,3㌔だろうか。

 

いつも散歩する境川は江の島まで20数㌔。まれに1,2羽はぐれたようなカモメを目にすることもあるが、ふだんはまず見ない。

 

いつ、映画館が休館になるか分からないので、いくつか見たい映画をピックアップ。

ブルク13(桜木町)では、『三島由紀夫×東大全共闘50年目の真実』『暗数殺人』

シネマリンでは、『アリジゴク天国』と『ルートヴィヒに恋して』

ジャック&ベテイでは、『もみの家』と『愛国者に気をつけろ 鈴木邦男』 

新百合が丘アートセンターでは、『プリズンサークル』

厚木キキでは、『9人の翻訳家 とらわれたベストセラー』

 

見たい映画は、情報×場所×上映時間(長さでなく)・・・・で決める。

 本日の入場者数、『もみの家』4人、『愛国者に気をつけろ』10人。

このまま営業を続けられるのかどうか。

 

『もみの家』(2020年製作/105分/日本/監督:坂本欣弘/主演:南沙良/2020年3月20日公開)

 

志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で数々の新人賞を受賞した南沙良が主演を務め、心に悩みを抱え不登校になってしまった少女が支援施設での出会いや経験を通して成長していく姿を描いた人間ドラマ。心に問題を抱えた若者たちを受け入れて自立を支援する「もみの家」に、不登校が続いて半年になる16歳の本田彩花が入所した。心配する母親に促されうつむきながらやって来た彼女に、もみの家の主である佐藤泰利は笑顔で声を掛ける。そこで暮らす人々との出会いや豊かな自然の中で感じ取った大切な何かに突き動かされ、彩花は少しずつ自分自身と向き合うようになっていく。もみの家の経営者・佐藤を緒形直人、佐藤の妻・恵を田中美里が演じる。監督は「真白の恋」の坂本欣弘。(映画ドットコムから)

 

これを読んで見に行こうとは思わない。

 

”人間ドラマ”というのがいけない。”人間ドラマ”じゃない映画なんてない。

この国では、実際の学校とは関係なく、教育はいつも感動とともにあるものだ。

勘弁してほしいけど。

 

富山を舞台に一年間かけて撮られた作品。ご当地もの。富山県教委推薦。でも、監督が住んでいるというのは、ちょっとすごい。1作目も富山が舞台。みていないけれど。

 

同じ系統とは云えないけれど、

ついこの間、『子どもたちをよろしく』という大変な駄作を見てしまった。

『風の電話』にも、入り込めなかった。

 

なのに見てしまったのは『愛国者に気をつけろ 鈴木邦男』と上映時間が続いていたこと、いつも映画選びの参考にするブロガーの方の評価が、それほど悪くなかったこと。

 

 

予想通り、東京から来た彩花が地元の獅子舞に取り組むなど、ご当地ものの雰囲気満載だし、不登校の再生を請け負うありがちな教育物語だし、会話はつくりモノっぽい。ストーリーもほとんど先が読める。こうなるんだろうなあ、と思っているとちゃんとそうなる。逆に、激しくぶつかり合ってその後分かり合う、というわかりやすいうシーンもほとんどないのだが。

 

いいよその辺は、と思うところも多いし、何より登場する子たちがみな素直でいい子たちばかりだ。ねじれ方、いじけ方も素直?

もみの家に来なければならなかった背景すらなかなか想像できない子たちだ。

 

映画からは、小さな家の中で若者たちが密集して生活する「におい」や鬱屈のようなものが感じられない。

10代から20代の男女が一緒に生活していて、性の問題にも一切触れらていない。

 

ところが不思議だけど、最後まで飽きずにけっこう愉しみながらみた。定石通りの映画なのに・・・。なぜかと考えて見ると、

 

ひとつは、演出の妙、というか、間がとってもいいこと。監督があわてていない。セリフのないところ、言いよどむところ、などがとっても自然。みる側に「考える時間」「想像する時間」を与えてくれる。行間とか余白を大事にしているなと思った。監督のセンスがとってもいいと思った。

 

もうひとつは南沙良という女優。演出なのかそれとも自然な感情の発露なのか、わからないが、演技が目が離せないというか、内面的に惹きつけるものをもっていると思った。雰囲気のある女優。これをうまく引き出したのも監督の功績。

 

南は全編ほとんど出っぱなしだが、一年間続いた撮影の中で、彼女自身が、現実的にかなり揺れ動いたのではないか、そのままとは云えないけれど、それが十代後半の不安定さと壊れものっぽさ、それに意外な強さのようなものに結び付いていると思った。

 

彩花にからむ地元のおばあちゃん役の佐々木すみ江という女優、この映画を最後に去年2月に亡くなった。91歳。達者というのはこういう人のことを言うのだろう。演じていることを人に感じさせない。

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もみの家は、富山にある自立支援施設「はぐれ雲」がモデルとのこと。1987年開塾。

 

入会時(入寮時)150,000円、月額154,000円。それ以外にも保護者負担経費として毎月10,000円程度を預かる。面接料3,000円。

 

映画のイメージとは全く違う。システムとして出来上がった自立支援塾。学校よりもっと教育的。ここで不登校になる子ども、たいへんだろうなと思う。