『彼らは生きていた』(2018年/99分/イギリス/原題:They Shall Not Grow Old)

神奈川近代美術館鎌倉別館の「生誕120年・没後100年 関根正二展」休館。

 

3月11日までということだったが、その11日に開催会期終了日の22日まで休館を延長するとHPに告知があった。

 

先月の終わりにMさんが一人で行ってきた。

 

鎌倉から歩くのは少ししんどいかなと思って同道しなかったのだが、話を聴くとやはり行きたくなる。

 

今度の通院日の19日に合わせて出かけようと思っていたのだが、あんのじょう休館、終了である。

 

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信仰の悲しみ(関根正二大原美術館のHPからお借りしました。

 

映画二本。どちらも見てよかったと思えた映画。

 

『彼らは生きていた』(2018年/99分/イギリス/原題:They Shall Not Grow Old

製作:ピーター・ジャクソン クレア・オルセン/製作総指揮:ケン・カミンズ テッサ・ロス ジェニー・ウォルドマン /編集:ジャベツ・オルセン/ 音楽:デビッド・ドナルドソン ジャネット・ロディック /2020年1月25日公開)

 

ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督が、第1次世界大戦の記録映像を再構築して製作したドキュメンタリー。第1次世界大戦の終戦から100年を迎えた2018年に、イギリスで行われた芸術プログラム「14-18NOW」と帝国戦争博物館の共同制作により、帝国戦争博物館に保存されていた記録映像を再構築して1本のドキュメンタリー映画として完成。2200時間以上あるモノクロ、無音、経年劣化が激しく不鮮明だった100年前の記録映像にを修復・着色するなどし、BBC保有していた退役軍人たちのインタビューなどから、音声や効果音も追加した。過酷な戦場風景のほか、食事や休息などを取る日常の兵士たちの姿も写し出し、死と隣り合わせの戦場の中で生きた人々の人間性を浮かび上がらせていく。(映画ドットコムから)

 

寅さんの映像をつなぎ合わせて、新たに寅さんの映画をつくるという試みが『男はつらいよ お帰り 寅さん』だった。

この間、柴又へ初めて訪れた時、家々に「お帰り 寅さん」という10㌢×30㌢ほどの札が貼られていた。日も暮れたころだったので、その筆書きっぽい字が映画の宣伝と気づくまでは妙に生々しく感じられたものだ。

 

「彼らは生きていた」は、すべてかつての第一次世界大戦時のフィルムと写真で構成されている。

 

戦争に行く、国を守る、年齢をごまかして15歳、16歳で出征するのを本人のみならず周囲も喜んで送り出す。

その気持ちをインタビューに答える退役軍人たちの言葉で構成する。

 

はじめはワクワクしている若者たちが、死と隣り合わせの戦場で敵と向き合う。いつしか恐怖から感情が鈍磨していくさまが描かれる。

 

フィルムの鮮明さに驚くし、これほどの克明な記録を撮っていたこと、そして保存していたことにも驚く。

 

しかし、何より驚かされるのは、これらつながりのない記録フィルムをつなげて、単なる戦争記録映画に留まらない、若者たちの諦念の吐息のようなものをしっかり表現した物語になっていることだ。

 

戦場が簡単に人を変えていく。兵士の物語。

 

人の死に無感覚になり、他人の装備品を奪っても当然と思う。塹壕の中で時には、仲間を撃つこともあり、そしてドイツ軍の捕虜を殺すこともある。またある時にはドイツ人捕虜と友情を通じ合わせることもある。

 

日露戦争の際にも、休戦時には露兵と日本兵は互いに談笑し合ったりしたという話を何かで読んだことがあるが、戦場では起きるはずのないことが起きる。

 

徹頭徹尾、老人たちのことばである。まさにThey Shall Not Grow Oldである。

 

戦争が終わり、彼らは故郷に帰ってくる。送り出すときの熱狂などどこにもなく、多くが無関心。仕事もなく、厄介者扱い。誰も戦争の話をしないし、聴きたがりもしない。

 

このシーン、とくに印象に残った。秀作である。