けさは、橋をわたってすぐのところでカワセミが止まっているのを見つける。じっくり見ようとするとたいていすぐに飛んでいって行ってしまう。
いつもは、水面すれすれをかなりのスピードで飛び去るのだが、今朝は向こう岸に短いフライト。セミが隣りの木に飛びうつる様に似ていた。
シジュウカラをよく見る。小さな姿も、声も飛び方も幼く見えて可愛い。
アカデミー賞、『パラサイト 半地下の家族』4部門受賞とか。
悪いとは思わなかったが、私の中では最高点はつかなかった。
『ジョーカー』のインパクトには及ばない。
話は変わる。
区の図書館から、上西充子さんの『10代からのワークルールこれだけは知っておきたい『働くことの決まり』(1~4)(旬報社・2019年)を借りて、ざっと読んだ。
うすい本なので買えばいいと思うのだが、値段を見てびっくり。4冊で12320円もする。
酒肴に比すればどうということはないのに、酒は借りるわけにはいかないから、というよく分からん理由で図書館で借りる方を選んだ。
久しぶりに区の図書館まで足を運んだ。
足を運んだは、不正確だ。原チャリで行った。
図書館まで4.5㎞。通常の国道を走ると信号が十数個。ところが八王子街道目黒の交差点以南の境川沿いの東岸を走ると信号は2個。ノンストップで図書館までいける。
いつも散歩する田園都市線と交差する河畔も同じ境川、東岸は町田市、西岸は大和市に属する。どちらも徒歩と自転車だけが通行を許されている。
ところが、藤沢・江の島方面に向かう下流の、相鉄線と交差する区間は、東岸は横浜市に属していて、こちらはクルマが走れる。
海軍道路や鎌倉街道の抜け道になっている。
話がわき道にそれた。
『10代からのワークルール』。よくできている。
1巻 ワークルールってなんだ?
2巻 こんなときこそワークルール! アルバイト編
3巻 こんなときこそワークルール! 就活・就職編
4巻 ワークルールでつくる豊かな社会
90年代以降、キャリア教育といわれるものが学校の中に入ってきて、働く喜びとか生きがいばかりが強調されてきた。
政府や企業にとって都合のいい言説ばかりが流されてきたということだ。
キャリア教育の一環である職場体験学習。
生徒にとっては、授業をやらずに教員の眼を逃れて「外」に行けるけっこう楽しみな一日。
しかし教員は、このたった1日の職場体験のために、数か月前からの事業所との交渉、打ち合わせ、事前準備、事後指導などに忙殺され、それまで以上の超過勤務をしなければならなかった。
私も主務者として担当したことがあるが、その煩雑さと時間がかかることといったらなかった。
生徒の感想は、まずその仕事の大変さに言及し、それでも頑張って働いている人たちへの驚きと感謝ばかりが語られ、賢い生徒はそこから働く喜びや生きがいに話をもっていく。
働く中で起きる理不尽なことへの指摘はほとんどない。
「実際に仕事をしてみて、矛盾点や改善点などについて気がついた事を挙げてみる」
などということは、事業所との関係ではなかなか提起できない。
指導する側の視点に「ワークルール」という発想がないのだから、生徒はおかしいなと思っても、口には出さない。
だから
「これでいくらもらえるんですか?」
「休憩時間ってなにやっているんですか?」
「そんなに安い給料で生活できるんですか?」
「ずっとこればかりやっているんですか?」
「パワハラ、セクハラはありませんか?」
「パートの人は同じ仕事やっているのに給料安いんですか?」
「この仕事をこれからやり続けようと思ってるんですか?」
「やめたいと思ったことはありませんか?」
「仕事をしていて一番嫌なことは何ですか?」
など、率直で、家庭でときに口の端に昇るような話題は出てこない。
一日の体験で感動する生徒はいるけれど、一方にこの仕事にだけはつきたくないという生徒もいるはず。仕事の量と質、それと給料のバランスくらい中学生にだってわかる。
職業に貴賎はないけど、やりたいやりたくない好きな仕事嫌いな仕事は間違いなくあるってこともね。
こういう言い方を私はついついしてしまうのだが、学校では好まれない。感情的で前向きでないからだ。
この4冊は、私のように後ろ向きではない。むしろ前向きに問題解決に向けて書かれている。
全国の学校図書館に最低3セットずつ入れてほしいくらいだ。
もう1セット、職員室にも必要だ。
月45時間年360時間のタダ働きOKという労働現場にいる人たちが教えるキャリア教育がいかに空疎なものであるか、分かってほしいからだ。そして上西さんが10代の人たちに語りかけている次のことばを身をもって受け止めてほしいと思うからだ。
『ワークルールは、「知っている」「理解している」だけでは、トラブル解決のために役立てることはできません。使用者からの理不尽な行為にたいして、ワークルールを自分のものとしてどう生かすかのかが大切なポイントです。したがって、皆さんには、本書を通して、そうしたワークルールの考え方や活用方法を学び、体得していただければと思います。』(「はしがき」から)