広島旧陸軍被服支廠保存問題、1か月で署名16000名、パブリックコメント1400件を超す。パブコメは明日が締め切り。

f:id:keisuke42001:20200115150211j:plain

2020年1月9日付朝日新聞朝刊

広島市の旧陸軍被服支廠の保存について朝日がようやく全国版で取り上げた。

広島県原爆被害者団体協議会(被団協 坪井直理事長)が要望書を県に提出。

広島商工会議所の池田晃治会長が年末の定例記者会見で個人的見解としながらも「文化的価値や平和を伝える遺産として非常に重要」と発言。

現地を訪れた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の片淵須直監督は「(この建物は)僕たちのものでなく未来の人たちのものだ」と発言。

 

全面保存の呼びかけが広がっていることを報じている。

 

県は「平和の観点も大事だが、安全対策はより大事」として「建物の価値は1棟を保存すれば残せる」としている。

県はホームページ上でパブリックコメントを募集しているが、明日が締め切り。

 

東京では、ヒロシマ連続講座を2016年から続けている竹内良男さんが、19日(日)に保存を願う懇談会野方と武蔵大学永田浩三さんをお呼びして「被服支廠の今・・・」という講座を、26日(日)には毎日新聞の栗原俊雄さんと東京都歴史教育協議会会長の東海林次男さんをお呼びして「戦争遺跡の保存を考える」という講座を開催する。

 

何度も書いたが、これほどの規模で被爆当時のかたちをそのまま残す被爆遺跡は他にはない。1万7千㎡という敷地の広さに建つ4棟は築107年。

内部は手つかずのまま放置されてきた。1昨年、実際に内部に入ってみたが、これを壊してしまうのは歴史への冒涜だと思う。原爆投下後に救護所となったここは、峠三吉の原爆詩集所収「倉庫の記録」が描く当時のさまのまさに現場そのもの。

全面保存をして、資料の展示と証言者の話や映像資料などを視聴できる場所としてほしい。

信じられないことに、広島を訪れる子どもたちや観光客がゆっくり坐って話を聴ける施設が広島にはない。

原爆資料館はいつも人であふれかえっているし、ホールはあるにはあるが、事前の予約が必須。春・秋の修学旅行の季節には確保は難しい。

一つの学校で少なくとも5,6人の証言者の方の話を聴く、そういう場所は信じられないことに広島にはないのだ。

せめて「屋根付き」の、日差しや雨などを避けられる場所をつくってほしいと要望もしてきたが、実現はしていない。

今回の被服支廠は県(3棟、残りの1棟は中国財務局)のもの。これに対して松井・広島市長は、「さらなる議論が必要」との見解を示してきた。

政令指定都市と県が仲が悪いのはいずこも同じだが、せめてこの問題、行政と被爆者団体でテーブルが囲めないものか。

 

昨日の記者会見で、湯崎・広島県知事は「全棟保存した場合、活用策を含めると80億円では収まらず、容易に費用を捻出できない」と発言。

金がないから保存できないではなく、意義があるから保存したい、しかしお金が足りないというのなら、工夫によってお金は集まるのではないのか。

 

いったん壊してしまったら、永久に元には戻らない。

何とかして保存の方向に向かってほしい。

パブリックコメントが1400件を超えたと湯崎知事が会見で伝えている。

これほどのパブリックコメントが1か月の短期間で集まったことに知事は「過去最高のレベルということで関心の高さがうかがえる」としたが、さてこの関心の高さをどう行政として受け止めるのか。右から左へ流す案件でないことは確かだ。

f:id:keisuke42001:20200115155318j:plain

原爆の爆風でへこんだ鉄窓