不急の110番通報が全体の2割。ゴキブリが出たというだけでなく、室内で不審な音を聞いたという独り暮らしの老人が110番することはないだろうか。頼るのが警察しかないいう人もいるだろう。152万件の不急の110番通報には、だれにも不安を訴えられず致し方なくかけてしまった人たちの数も含まれるのではないだろうか。

1月13日

今日、成人の日。

詳しくは読まなかったけれど、yahooニュースに成人式発祥の村、という記事があった。

3日に村で成人式が行われ、とっても「温かな式」だったという趣旨の記事だ。

 

10年ほど前から各地の成人式が報道されるようになった。

 

ド派手なコスチュームに身を包んで、係員の制止も聞かず、壇上に上がり、身勝手な行動を繰り返す若者たち。若者は派手さと乱調ぶりを競う合うようにみえた。

 

最近はそういう報道がほとんどない。

 

最近、沖縄の若者たちは、みんなが集まって汚れたところを掃除をしているという小さな報道があった。

 

ニュースをつくる人たちが、若者が静かに掃除をしている姿より、壇上で暴れまわっている方が絵になると考えるのはわからないではない。

 

では、「温かな成人式」は?

成人式発祥の村、だからこその記事だろう。単にほのぼのとした成人式など報道する側からすれば、犬がひとを噛んでいるの例えのようにインパクトがないからだ。

 

どうして「荒れた成人式」の報道が好まれるのか。

 

つい先日、110番通報のうち、不急なものが2割もあったという記事があった。

 

家の中にゴキブリがいる、今日は何日ですか、酔っぱらって帰れないからパトカーで送ってほしい、信号を設置してほしいなどの不急の110番通報があったという。記事のまとめは、そんな場合、警察相談用番号に電話してほしいという記事だった。

 

 

ニュースをつくる側も、読む側も、そんなまとめにはあまり興味がないのではないか。

実は、極端にピンボケな110番をした人たちをどこかで半分こけにしながら笑っている、というのはうがちすぎだろうか。馬鹿じゃないの?そんなんで110番するなよ、という具合に。

 

記事には、

「同期間の受理件数は829万9775件で、前年同期間より5万9937件少なかった。緊急の対応が不要な通報は、前年同期よりも7万9179件少ない152万4542件だった。」

 

不急の通報が8万件近くも減っていることや、不要な通報の詳細な分類は報道されず、ただただ極端でおかしな110番通報だけが取り上げられる。

 

どこかに壁があって、その壁の向こう側には非常識な人たちが住んでいて、その人たちが非常識な行動で公に迷惑をかけている。

 

成人式で暴れる若者たちも、自分たちとは地続きでないところに住んでいて、無法な乱痴気騒ぎを繰り返している。

 

生活保護を貰っている人たちの中には、働けるのに働かないで、お酒を飲んだり、パチンコばかりしている人たちがいる、といった批判のたぐいの話と、これはよく似ている。

 

あわてていて、間違って110番通報してしまうことはないだろうか。

私は、妻が明け方に産気づいた時119番通報をしてしまったことがある。非常識な若者だったことは認めるが、慌てていて判断力が鈍っていたことも事実だ。

 

ゴキブリが出たというだけでなく、室内で不審な音を聞いたという独り暮らしの老人が110番することはないだろうか。頼るのが警察しかないいう人もいるだろう。152万件の不急の110番通報には、だれにも不安を訴えられず致し方なくかけてしまった人たちの数も含まれるのではないだろうか。

 

誰しもがそこそこの生活ができて、間違いを犯すことなく生活していければ、それに越したことがない。

しかし、若者たちの中には成人しても仕事がなく、正規の仕事を求めても非正規の不安定な仕事しかない若者たち。

それでも成人式だとなれば、まっすぐでまとうな?道を歩む人たちとは違うかたちで、おれたちだってここで生きてるよって表現したくなる気持ちはわからないでもない。

 

地域によって失業率や経済格差が大きいこの国の現状を冠上げずに「そっち側」を笑うことは、格差を容認し、固定化しようとする人たちにとっては都合のいい話だ。

 

生活保護費を違法にかすめとるごく少数の人たちの裏に、貧窮して爪に火をともすように生活している人たちがたくさんいること、違法な人を見つけ出して罰することよりもそうした人たちを支えるのが行政の大きな役割であることは触れられず、生活保護Gメンのような取り組みが報道される。

 

自分の中にも、記事を面白がる面がないとは言えない。でも、時々そんな自分にうすら寒さを感じることもたしかだ。