上野学園の残業代不払い請求訴訟。提訴はお金をかえせという以上の思いがなければできないこと。労働者としての尊厳をかけて提訴するのだ。

私立学校での労働問題、またまた。

 

上野学園中学・高校の教職員24名が学校法人上野学園に対して総額2億円の未払い残業代の支払いを求める訴訟を起こした。

 

あの上野学園、ピアニスト辻井伸行さんが出た大学を抱える学校法人。石橋メモリアルホールが有名。その石橋何とかさんが創業者。

 

2年程前に経営悪化が報じられたのを憶えている。第三者委員会がつくられ、石橋慶晴理事長以下創業者一族に高額な報酬を払い続けたことや勤務実態のない理事長の母に報酬を払い続けたことが原因とされ、学園側は損失分を理事長らに請求すると文科省に報告した。

 

文科省は、大学への補助金を一部カット。経営側は所蔵していたバッハの自筆楽譜などを売買するなどしたという。身を切らずに偉人たちの残した宝物を売った。

 

いろいろな政争が繰り広げられる中、新体制となった学園側が旧理事長への請求を放棄、どういうわけか返還請求はしないことになったという。巻き返しがあったのだろう。

経営改善を求めた教職員代表の声楽家などを解雇、これも係争となっている。解決したとの報道は見ていない。

 

一方で学園側は資金不足を理由に、教職員の残業代の支払いを拒否しているとのこと。

 

もともと経営悪化の原因は、高額報酬のほかにファミリー企業への業務委託で高額な契約を結んでいたこともあったという。清掃業者などを一族の誰かが設立して、そこと学園側が業務契約をするという、いわば一族で学園を食い物にするというやり方。

 

自分たちのものを自分たちで使って何が悪い、というよくある同族会社の乱脈ぶり。

 

教職員の解雇や残業代不払いで訴えられるなど、学校法人としてはみっともない体たらくだが、24人の不払い残業代は均等計算しても830万円にもなる。大変な金額。これを放置してきたということは、労基法など論外の労務がなされてきたということだ。

 

いまだにこんな企業(学校)がlこの国にはあるのだ。

 

私立の学校には変形労働時間制をかたちだけ援用して、正規の残業代を長期休業中に「時間で返す」ところもある。法律通りに変形労働時間制を導入すれば破綻することが分かっているので、ふんいきだけ変形労働時間制を借りるのだ。

 

どちらも経営の思惑は、残業代を払いたくないの一言に尽きる。

払いたくないのなら、残業をなくせばいいのだが、その努力もしない。自発性、創造性という言葉で計測可能な教育労働を計測しようとしない。

 

仕事をしながら闘う裁判のしんどさは想像以上のものがある。私も、自分の裁判、あるいは事務局として何度か経験しているのでよくわかる。

ふつうに仕事をしている人間が裁判に訴えるというのはよほどのことだ。提訴するだけでもお金はかかる。弁護士費用もばかにならない。

それでも、提訴するのは、お金をかえせという以上の思いがなければできないことだ。労働者はみな、労働者としての尊厳をかけて提訴するのだ。

 

日本では労働問題はなかなかニュースにならない。夏に1か月以上のストライキをやり抜き、労使交渉に持ち込んだ佐野SAのケイセイフーズの労働組合が11月8日、ふたたびストに突入した。会社側の反撃に対する対抗ストだったが、会社側が代替要員を送り、事実上ストは破られた模様。厳しい闘いとなっている。

 

労使交渉はそのくらいめんどうである。ドロドロの泥沼になることも多い。それでも逃げずに生活をかけて闘う人たちがいる。

 

マスコミは労働者の闘いをしっかりと取り上げてほしい。ストライキは労働者の当たり前の権利だということを伝えてほしい。

この国からいつの間にか労働者が消えてしまって、消費者の動向ばかりが伝えられるようになった。