見逃し映画の覚え書き④『運び屋』『ファイティン』『サニー32』『ハードコア』『きみの鳥はうたえる』

6月25日

梅のヘタを取って2日目。もう梅酢が上がった。透き通った黄金色の白梅酢だ。

梅ジュースづくりもあわせて、朝からMさんの作業が続く。

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見逃し映画の覚え書き④


『運び屋』(2018年・アメリカ・116分・原題“The Mule”・監督クリント・イーストウッドブラッドリー・クーパー・2019年3月公開)★★★★

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 時間があわずに見逃した1本。87歳の退役軍人で家族をほおりっぱなしの人生を送ってきた思い込みの強い老人。クリント・イーストウッドの演技が演技にみえない。それほどのリアリティー。セリフ一つに顕われる意固地さとユーモア、家族への思い、そんなものが、彼が声にして出すと自然と深い陰影がついて伝わってくる。みていて「こんな映画がみられて幸せだな」とつくづく思う。テーマはあえて言えば「家族」ということになるのだろうが、テーマ性などどうでもよい。こちらの気持ちを映画に同期させる感覚。クリント・イーストウッドはどこまで行くのだろう。

 

『ファイティン』(2018年・韓国・108分・原題“Champion”・監督キム・ヨンワン・主演マ・ドンソク・2018年10月公開)★★★

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マ・ドンソクは『殺されたミンジュ』『新感染ファイナル・エクスプレス』でみたが、あくの強い俳優。本作では生後すぐにアメリカに養子に出されたアームレスリングの選手を演じている。チャンピオンを目指すも若いマネージャーに誘われ韓国に。母の住んでいた家を訪れるが、母はすでになく、「妹」家族が住んでいる。
裏社会もかかわるアームレスリングの大会が開かれ…。


すじは想像からほとんど外れず、スポーツものの王道をいっている。怪力のマ・ドンソクと妹の娘・息子のからみがかわいらしいし、「妹」との微妙な気持ちのゆれもいい。楽しく見られた。

 

『サニー32』(2018年・日本・110分・監督白石和彌・出演藤井赤理・門脇麦ピエール瀧・2018年2月公開)★

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ポスターはいい出来なのに。

白石和彌という監督は、最近では『虎狼の血』『彼女がその名を知らない鳥たち』がかなりよかった。『止められるか俺たちを』は今一つだったが、ちょっと古くて『凶悪』などもよかった。しかし本作はどうしたことだ。ひどい。最後までみられなかった。

 

『ハードコア』(2018年・日本・124分・監督山下敦弘・出演山田孝之佐藤健荒川良々・2018年11月公開)★★★
コミック『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』(作・狩撫麻礼、画・いましろたかし)の実写映画化。
山田孝之が主演とプロデュースを務めたのだとか。私は山田と荒川のからみが見たくてレンタル。そうしたら佐藤健がいい味を出していた。いちばんの役者は、「ロボット」。ぶっ飛んだ映画だが、楽しめた。

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クワイアットプレイス』(2018年・アメリカ・90分・原題“A Quiet Place”・監督・主演もジョン・クラシンスキー・2018年9月公開)★★★★

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 「…音に反応して人間を襲う「何か」によって人類が滅亡の危機に瀕した世界で、「決して音を立ててはいけない」というルールを守り、生き延びている家族がいた。彼らは会話に手話を使い、歩くときは裸足で、道には砂を敷き詰め、静寂とともに暮らしていた。しかし、そんな一家を想像を絶する恐怖が襲う。」(映画ドットコムから)


彼らを襲う「怪物」は、後半姿を現すが、既視感のあるもの。気持ち悪いが、動けば人間がつくったものとわかる。その程度。前半のまだ姿を現さないシーンでの音に対する恐怖感がすごい。

 

聴覚障害のある娘と父親の気持ちのずれが怪物との戦いに影を落とす。ホラー映画ではあるが、それにとどまらない深みのある映画。夫婦だそうだが両親役を演じたジョン・クラシンスキーとエミリー・ブラントの演技がみもの。

 

『君の鳥はうたえる』(2018年・日本・106分・監督三宅唱・出演柄本佑染谷将太石橋静河・2018年9月公開)★★★★★★


やっぱりちゃんとスクリーンで見るべきだった。原作は読んだけれど、時間があわずに見られなかった。


いい映画は原作を越える。独特のカメラワーク、セリフの少なさと込められたもののうらはらさ、心象と画面の絶妙な一体感、音楽が入るタイミングにも驚かされた。DVDで見ているのに、睡魔は全く襲って来ず。終わってほしくないなあと思いながら最後まで。函館が舞台だし、もちろんそこは日本なのだが、この映画、日本であることなんてあまり意味はないんだな。ヨーロッパの傍流?の国、首都でないひなびた田舎町、あるいは台北シンガポールやソウルではないどこかの地方の小都市、背景の「街」と対照的な「適当」なかつ「誠実」な若者が生きてうごめく映画だ。

クラブでの佐知子(石川静河)のダンス、どう表現すればいいのかわからないが、映画の流れの中でのダンスの絶妙なフィット感、ああいうシーンが苦もなく撮られている。カラオケボックスでの佐知子の独特のバージョンの「オリビアを聴きながら」も同様。映画の中で踊ったりうたったりしてしまえば、ミュージカルででもない限りわざとらしくなるのは避けられない。それなのにこの映画は歌もダンスも映画の中にはまりすぎるほどはまっている。

 

石橋静河のもつ雰囲気、謎の女でもなんでもない、かといって普通とは言えない女の子。石橋の中から湧き出たものと演出から出てきたもの。どっちでもいいが、とってもいい。静雄(染谷将太)が身にまとう独特の空気、いつもどこか移ろう視線がいい。なにより柄本佑!惚れたな。こういう役者になったんだ!

 

元気が出るような映画ではないけれど、見終わったのは夕方だったが、なにかからだの中に熱いものが充填されたような心地よさを感じた。これってまだ若いてことか?

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