2020年度大都市部の教員採用状況と代替教員不足について。なり手は減り続け、代替教員も不足。 下がり続けているのは倍率だけではないということだ。

6月22日
朝から曇天、予報はお昼前後に雨。

10時前に地下駐車場から地上へ出たところでフロントガラスに水滴がつく。

梅雨らしい天気。梅の時期である。

 

ふたりで毎年恒例の「みなべの南高梅」を買いにスーパーaveへ。

ここは1か月前から販売告知をしてくれる。時季になると2L~4Lまでの大量の梅の箱が店内に積み上げられる。毎年20㌔を漬ける。クルマには台車を積んでいく。

 

帰途、車内が梅の香りに包まれる。

 

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横浜市川崎市の教員採用試験の応募状況が新聞発表されている。横浜市への応募人数は6年連続減の3632人(前年度比509人減)。680人の募集に対して倍率は5.3倍。この30年で2番目に低いという。


川崎市は応募者が1257人(前年比262人減)。倍率は4.1倍。応募人数、倍率ともに近年で過去最少だそうだ。


校種別でみると小学校教員の倍率が横浜市3.7倍、川崎市3.4倍。際立って低い。募集人数が多いせいもあるかもしれないが、他校種に比べると大きな開きがある。

 


どちらの記事も、「教員の長時間勤務広く知られるようになったことが一因とみられる」と分析している。原因はそれだけではないだろう。小学校では英語が必修化された。授業以外の仕事が多いのはよく知られている。苦手な種目の部活動の指導を任されることもある。道徳が教科になったそうだ。保護者からのクレーム、モンスターペアレントもいる。先生たちは忙しくて新任教員の相手などしてくれない。残業手当てが出なくてサービス残業ばかりが多い。
根拠のあるものもないものもないまぜになって、今「教員は魅力のない仕事」になりつつある。

 

横浜市のこの記事の上にもうひとつこんな記事が。

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先生が休んで補填が効かず、授業ができなかったから成績が付けられなかったという。
驚くのは市教委のコメント。「通知表が空欄になるケースは聞いたことがない」。あっけらかんとしている。産休代替等の教員の欠員を補充するのは市教委の仕事。直接責任のない文科省が云うならともかく、人事を担当する市教委が「聞いたことがない」でいいのだろうか。

 

臨時的任用教員や非常勤講師の補充が難しいのは今に始まったことではない。私が現役だったころも、校長が「どなたかお知り合いでやってもいいというという方がいらっしゃれば…」と打ち合わせで云っていたこともある。一年の途中で市教委に登録している臨時教員志望者が払底してしまい、どうにもならなくなって「現場が自分で探す」ということになる。

 


殊に家庭科や技術科は難しい。というのも、この教科免許を所得している人がもともと少ない。とりわけ技術科は少ない。そのうえこの教科、表向きは一つだが、一部共修部分はあるにせよ中身は別の教科。それぞれ授業でやったことを持ち寄って、一つの科目として観点別成績をつけなければならない。どちらかが欠ければ教科としての統一した成績にはならない。


家庭科の先生が療養休暇に入り代替の教員が来なければ授業ができず、実習もテストもできなければ技術家庭科の成績はつけられない。
これが国語や英語など複数の教員がいる場合は、代わりに授業を分担するなどしてしのぐ。これがかなりの労働強化となるのだが、なかなか省みられないのも事実だ。

 

代替教員の多くは定年退職者などにあたることが多い。新たに研修をする必要もなく、キャリアも積んでいるので児童、生徒への対応も事務仕事もスムーズだからだ。ところが近年、これが難しくなってしまった。


「教員免許更新制」である。10年ごとの免許更新が義務付けられた「更新制」が施行されたのは2009年。運転免許と違って、退職してまで大金支払い、大学に通って免許更新を行う人は少ない。代替教員の供給ができにくくなった原因の多くはこの免許更新制にある。

 

若い教員が増えている現在、産休、育休に入る教員も多い。ところが「魅力のない仕事」に就こうとする学生も少ないし、シルバー人材の払底となれば、どこに教員のなり手を求めればいいのか。
文科省は今になって慌てて、更新をしていない教員でも「特別免許」を交付するなどと云い始めている。自分で仕掛けた罠にはまってしまったようだ。

 

 

さて採用試験の倍率の低さだが、横浜、川崎に限ったことではない。採用人数の多い大都市部ではみな同じ問題を抱えている。互いに出張って行って志望者を獲得するための方策がいろいろと講じられているようだ。


しかし、売り手市場と言われる昨今、教員採用試験に合格しても採用までこぎつけられる人は多くはない。1次2次試験の合格は「即採用」ではないからだ。

自治体の教員数は教員定数法に縛られており、独自予算を出さない限り人数はきっちり守られなければならない。となるとたとえ合格しても正式採用の通知は3月になってしまう。当然学生は不安だから民間企業などから内定をもらっている学生はそちらに逃げてしまうケースが多い。

抜けた部分を順次繰り上げて採用することになれば、実質倍率はもっと下がることになる。

なり手は減り続け、代替教員も不足。

下がり続けているのは倍率だけではないということだ。

ちなみに年度末に判明する実質倍率だが、あまり目にしたことはない。