『台湾セブンラブ』『赤い雪』ともにバットにかすりもしなかった。

いまだに1日に2,3本、映画をみる。

つれあいは「こんがらがってしまうから」と、ほとんど付き合ってくれない。

 

わざわざ郊外から1時間以上もかけて街に出てきて、映画1本を見てその日を終わりにするのはもったいないと思ってしまう。

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20代の前半、二番館、三番館で3本立て4本立てをみ続けていた時期があった。映画館の暗闇が心地よく落ち着くと思い込んでいたのは、やや病的でもあったのだろう。

 

今は少し違う。インターバルをあけながら、たいていは2本、ときに3本、ほぼ半日を映画館で過ごす。


数日前からタイムテーブルを見て、スケジュールを検討する。名画座は週決まりだが、シネコンは曜日によって上映時間が変わる。思い込みで失敗する時もある。

ときには映画館を渡ることも。時間が空けば途中で昼食をはさむ。映画でアタマがパンパンになった帰りには、店を選んで独酌(ひとり呑み)を企図する。

 

 

先日も「あつぎのえいがかんkiki」で2本。インターバル1時間でみた。


2本ともバットにかすりもしなかった。往復2時間半。大いに落胆。

用意周到、道具も身支度もしっかり固めて出かけたのに、ボーズで帰ってくる釣行のようだ。いや釣行ならば一日海を眺めているだけでも何か効用がありそうだが、映画は外れれば退屈なだけ。


『台湾セブンラブ』(2014年・台湾・116分・原題:相愛的七種設計 Design 7・公開2019年5月25日)

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6年前の映画だが「ぶっとびすぎ」である。

「愛をデザインする」をテーマに、台北の最先端?のデザイン事務所の恋愛模様をベースにした実験的なデザイン?が映像で次々と繰り出される。

テンポが速いし、先が見通せない。と、気がつくと出演者たちが「素」に戻って議論していたり。で、またストーリーに戻っていたりする。

セリフは矢のようで悪くはないし、色使いは極めて新鮮。でもついていけない。台湾映画への勝手な思い入れにしっぺ返しをされたようだ。


『赤い雪』(2019年・日本・106分・監督甲斐さやか・主演永瀬正敏菜葉菜井浦新佐藤浩市夏川結衣・公開2月1日)

メタファーと思われる事象やシーンがいくつも積み重ねられているのはわかるが、正直一人よがりだと思う。

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冒頭の漆職人の白川(永瀬正敏)の作業シーンなどとってもいいと思ったが、あとはただ重苦しいだけ。

白川の、消えた弟に関する記憶をめぐる物語。

だが、その物語が解けていかない。脚本の完成度の低さによるもの。

両親、とりわけ弟だけをかわいがる母親に疎まれた兄の心理をテーマとするのか、早奈江(夏川結衣)にネグレクトされる小百合(菜葉菜)が中心なのか。早奈江の保険金殺人事件が間に入っているのだが、これについても背景が見えてこない。小百合のバランスの悪さはわかるが、早奈江の人物像が提示しきれていない。


警察の捜査は杜撰だし、かつては早奈江と暮らしていて今は小百合と暮らす大学病院職員?宅間(佐藤浩市)の位置もよくわからない。暴力的でありながら性的関係が続いているのも。

毒婦?でネグリストの早奈江の来歴がよくわからないし、小百合自身の過去と現在、とりわけ旅館で働き、泊まり客の金庫から金を盗み、万引きを繰り返す現在の状況もよく見えてこない。エキセントリックではあるが、それだけ。

井浦新に至っては、被害者の近親であることは示唆されるが、途中で事故に遭って…。

 

ただただ画面は淡彩で暗く重い。漆が絞りだされるシーンや船の中で漆を塗るシーンなど思わせぶりだが。雪の山の中で白川と小百合が争うシーンなどリアイリティがないし、古い邦画のシーンを思わせる。画面の重さに比して、セリフが練られておらず、堂々巡りの感が否めない。

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撮り終えて編集を始めたら、あれもこれもとやっているうちに取っ散らかってしまったような印象。おおもとの脚本の精度の低さが露呈してしまっている。

豪華メンバーを配役に迎えているが、上手なのにとってつけたような演技にみえてしまうのは、物語に深みがないせいだと思う。


途中から付き合うのに飽きてきてしまった。楽しみはひとり呑みだけ。Tで八海山と焼鳥。