福島原発かながわ訴訟、横浜地裁国と東電の責任を認め、原告152人に対し4億2千万円の支払いを命じる。

 昨日20日、11時過ぎ、横校労のMLにHさんからのメール「判決が出ました。勝訴! / 垂れ幕 被害者にやっと春! 賠償水準大きく前進! 法の庭 八分咲きなり寒の梅!」。横浜地裁に多くの組合員が駆けつけた。

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 この訴訟、東京電力福島第一原発の事故で神奈川県内に避難をした60世帯175人が東京電力と国を相手取り、約54億円の賠償を求めた集団訴訟(略称:福島原発かながわ訴訟)である。

 中平健裁判長は東電と国の責任を認め、原告152人に対し、計約4億2千万円を支払うよう命じた。賠償額こそ求めた額には全く満たないが、これで千葉地裁以外の5つの裁判同様、司法が国と東電の責任を認めたことになる。

 

 他に大きなニュースがなかったことが幸いしたのか、昨日からテレビでは各チャンネル何度もこの裁判の映像を流している。

 その都度、訴訟団長の村田弘(むらた・ひろむ)さんの様子が映しだされる。元朝日新聞記者。退職して福島・南相馬市小高区に帰り、農耕生活中に東日本大震災に遭遇、原発事故により横浜市に避難、神奈川訴訟の団長として訴訟を支える。その傍ら、横校労組合員のいる中学校で講演を行ったりもした。

 

 画面で見る村田さん、とつとつとした話し方はいつもと変わらない。喜びにあふれというより、少し疲れて見える。8年間の闘いに思いを馳せれば、飛び上がるような喜びよりも、自ずとしみじみとした感慨がわいてきているに違いない。

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横断幕、左から2人目が村田弘さん


 組合員とのつながりから、村田さんが機関紙『横校労』に連載を続けて足掛け4年になる。
原発棄民に抗う』と題された連載は、毎回原稿用紙6枚ほど。第1回(2015年5月号)の末尾に村田さんはこう書いている。

 

福島原発災害は、原因も責任も、そして何より、どれだけの被害をもたらしたかの究明もなされないまま、国の政策と時の流れの中に葬り去れようとしている。これに抗う人々の姿を通して、国家の宿啊ともいうべき「棄民の構造」の一端をリポートしたい。」

 とその執筆意図を明らかにしている。

 その連載も最新号(2019年1・2月号)で30回となった。その末尾も紹介しよう。

 

『「私たちは、原告の仲間6人を見送りました。無念の思いを抱いて亡くなられた人々の墓標を背負い、子どもたち、孫たちに希望をもって生きられる世の中を引き継いでいかなければなりません」。最終陳述で、私は3人の裁判官の向かってこう述べた。いかなる判決が出されようとも正義が実現されるまで闘いは続く、という意思表示のつもりだった。
人間の尊厳を忘れた政治状況の下で、混迷する社会。その陰で踏みにじられ続ける原発事故の被害者の人権。「福祉を守る自治体の政治と、司法の正義がこの混迷を脱する道ではないか」という公害研究の第一人者、宮本健一・大阪市立大学名誉教授の言葉(『戦後日本公害史論』あとがき)を胸に、私は2月20日の判決を待つ』。

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 何も付け足す言葉などない。はっきりしているのは、闘いがこれで終わりではないということだ。国や東電は控訴するだろう。

 どこまで司法の正義が貫かれるのか、見定める義務が、私たちにはあると思う。