「もっきり」

 天気予報は一昨日から雪の話題ばかり。


 関東南部の平地でも数㌢の積雪というので、朝から待っていたのだが(ヒマである)その兆候は全くなく、ただただ曇天。そのうち津田沼に住む長女からLINEで積雪の動画が伝えられる。夕方には雪だるまをつくる子どもたちの様子も。

 

 清瀬の友人Mさんのところはどうだろうと暇に飽かせてメールを送ると、マンションのベランダから撮った写真が送られてくる。

 戸建ての家々の屋根に雪が積もっている。清瀬津田沼も横浜より緯度が高い、ということか。しかし海浜幕張近くに住むHさんのところは「ほとんど降っていない」。

雪雲の動きのせいか?

 

 夕方、雪らしきものがちらつくが、すぐに雨に。夕食前に閉めたカーテンを就寝前に少し開けて庭を見ると、ようやく?雪の薄化粧。このぐらいだと風情がある。

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 今朝の散歩、快晴。気温0℃。無風。

 境川河畔の散歩道の植え込みの上に雪が融けずに残っている。

 

 

 キセキレイとオオサギを見かける。キセキレイは尾の下の方が黄色い。オオサギはくちばしが黄色い。オオサギはその長いくちばしで私たちが見ている1分ほどの間に2匹の小魚を捕まえ呑み込んだ。

f:id:keisuke42001:20190210101953j:plainオオサギ

 

 昨日、つれあいがミカンを輪切りにしてテラスの手すりと庭の樫の木の枝に挟んだ。

 風邪で受診したかかりつけのP医院の庭に、同じようにミカンが置いてあって、つがいのメジロがきていたからだ。

 

 p医院は、以前に書いたかもしれないが、エントランスは、庭に面した全面の窓の一部がスライドして入るようになっている。

 入るとそこが受付で、待合室なのだが、この待合室から池のある庭が丸ごと見える。

 並びに診察室があるから,I医師に血圧を測ってもらいながら、何気なく窓の外を見ると、ここでもメジロが見えるのだ。


 それで「うちでもやってみよう」ということになった。

 

 1時間ほどのち、訪問鳥があった。おおぶりのヒヨドリである。やっぱり、である。

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ヒヨドリ

 というのもこの間、漬物にする白菜を同じ手すりに干していたのだが、けっこうな量を食べて大量の糞をしていった輩がいた。ヒヨドリである。同じヒヨドリかどうかはわからないが。

 

 今日のヒヨドリは、周囲を警戒することなく、只管ミカンをついばみ続ける。時間にして10分以上もとどまっている。鳥としてはかなり図々しい方だ。個体差ではなく、ヒヨドリ自体が警戒心が薄いのか。

 結局ミカンをあらかた食べつくしてしまった。みると、樫の木の方のミカンは地べたに落ちている。
 

 夕方まで待ったが、メジロはおろかムクドリさえ来ない。食欲旺盛で集まるとうるさくて仕方がないヒヨドリの独壇場。
 

 鳥は庭を選ぶが、人間は鳥を選べない。メジロシジュウカラのような小ぶりの鳥たちを見たいが、いつのことになるか。

f:id:keisuke42001:20190210102044j:plainメジロ

 

 つづいて酒の話である。
 

 8日。久しぶりのAさんTさんSさんとの4人の会。前回は、Sさんが急に来られなくなり、3人でフランス料理を食べた。
 

 今回の会場は長津田の寿司居酒屋S。
 

 コートを脱いでマフラーといっしょにたたんで腰を下ろしたその正面に「もっきり 栄川 390円」とある。

 笑みが浮かんでくるのが、自分でもわかる。


 店長のYさんと酒の話をしたのは3週間ほど前。

 

「もっきり」という文化が東北にはある。客へのもてなしは一般にお茶だが、酒の文化の濃い東北地方では、たいていは男の客に対して、もっきりといってコップ(枡)一杯の酒をこぼさんばかりに、つまり盛り切りにして出すという風習がある。「お茶より酒でしょう」である。ものの本によると北海道から東北にかけての文化だという。

 

 出てくるお酒は大吟醸とか純米とかいうものではなく、醸造用アルコールと水あめが入ったいわゆる本醸造、地酒。冷やしもせずお燗もせず、常温で供されるのが常だ。
 クルマがまだ普及しない時代、互いに何かと用事をつくって、あるいは用事がなくても「顔を出す」ことが隣近所親戚縁者同士の潤滑油だったころの話だ。

 

 だから、私がそんなふうにもてなされたことはない。そんな時代に思いをはせながらひとり勝手に「もっきり」と声に出して云って、自分で注いで呑んでいるだけなのだ。

 

 店長Yさんは酒を呑まない。前回の訪問日に、出身地が近いということもあって、酒呑みのセンスについて酔いに任せて蘊蓄を傾けた。よくいる困った客である。そのときに「もっきり」の話をしたようなのだ。

 

「おもいきりやりましたね、Yさん。値段も安い!量も多い」
大ぶりの筆でおおきく書かれたもっきりの文字。200cc入りのコップは桝に入り、注ぎこぼされる。栄川は可もなし不可もなしの会津の地酒である。


「次の日から始めました。評判いいですよ。けっこう出ます」

 

Yさんの中で何かピンとくるものがあったようだ。
日々、酔客の顔を眺めていると、何が好まれ好まれないか自ずと分かってくるところもあるのだろう。思い付きがヒットするときもあれば空振りのときもあるに違いない。「もっきり」はさしずめ二塁打ぐらいにはなったのではないだろうか。

 

「すみません、もっきりください」

初めて声に出して「もっきり」を注文した。