私的な覚え書きは続かないが、誰かが読んでくれれば続くかもというと魂胆で始めたのだが、飽きっぽい私が何とか7か月続いた。目を通していただいた皆さんに感謝したい。

12月31日

 朝から「実家」である。といってもすでに帰るべき実家はなく、うちで実家をやっているのである。

 お昼に里帰りの7人を迎える。朝食のあとつれあいと、散歩をカットして二人でバタバタと準備にとりかかる。料理に掃除や寝具の用意などすることはいくらでもある。といっても私ができることは限られている。

 最近おぼえた太巻き細巻き、何度かつくって割合評判の良いスンドゥブ、田舎料理のこづゆ。あとはお酒のおつまみづくりぐらい。

 簡単なおせちの準備は夜からだが、呑んでしまうと動きたくなくなるので、午前中のうちにおせちの分担の松前漬けと伊達巻きはつくっておく。

 

 これから数日はおじいちゃんおばあちゃんである(じいじばあばではない(笑))。

 

 

 ブログの記録を見たら、これが100本目の投稿になるようだ。6月から断続的に3日に一度ぐらい書き込んだことになる。私的な覚え書きは続かないが、誰かが読んでくれれば続くかもというと魂胆で始めたのだが、飽きっぽい私が何とか7か月はもった。目を通していただいている皆さんに感謝したい。

 

 最近、映画のことを書いていない。『人魚の眠る家』(2018年・日本・120分・堤幸彦監督・篠原涼子西島秀俊)を11月の封切り直後にみてからだ。何度かこの映画について書こうと思いながら、結局そのままに。あまりいい印象がなかった。書けば文句だけになりそうな予感があった。でもほおっておくと忘れてしまう。ブログは覚え書き、印象だけは少し書いておこう。

 

 直後の印象は、東野・堤ワールドに簡単にはまるめ込まれないぞ、である。

 物語の枠組みはわかりやすく、エンドロールまでみてはしまったけれど、不満が残った。全体に浅いのだ。

 このあたりの線でまとめておけば、おおかたの観客は喜んでくれるだろうという安易さ、ゆるみみたいなものを感じ。結局、古臭い難病ものの域を出ていない。

 設定も演技も過剰で(西島秀俊という人、面白味を感じない。篠原涼子は過剰)人々の営みの自然さが感じられない。生活とか日常の思考ってそういうのじゃないでしょうと突っ込みたくなる。映画づくりがあまりに手慣れていて、嘘くさいのだ。ファンタジックな偶然の積み重ねの妙が東野圭吾の一面だとすれば、堤幸彦の映画づくりもその線に則ってつくられていてうまくいっているのかもしれない。

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 とにかく、みたあとの感じがよくなかった。絶賛の声がネットにはあふれているが・・・。★★

 

 この際だから、12月にみたものコメントしてしまう。

 『カエル少年失踪殺人事件』(2011年・韓国・132分・イ・ギュマン監督)

 韓国の三大未解決事件のひとつ。カエル取りに行った5人の子どもたちが行方不明になるが、捜査は難航。事件から11年後の2002年に子どもたちの白骨死体が発見されるも、手掛かりがほとんどなく迷宮入りとなった事件が題材。

 全体に張り詰めたものを感じさせるが、事件自体が迷宮入りとなっていることもあってなんだかもやっとしている。題材に付けたフレームがつくりものっぽい部分(刑事、テレビのプロデユーサー、大学教授)とリアルな部分(子どもの両親、家族)がややアンバランス。何をしようとしているのかがよくわからない。★★

 

『恋妻恐妻家宮本』(2017年・日本・117分・遊川和彦監督・阿部寛天海祐希

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 面白くないわけではない。二人の個性的な俳優が対照的なのだが、しかしこれもまた阿部寛が過剰な感じが否めない。何十年か過ごした夫婦間の問題、機微はこれほど単純すっきりではない。

 書棚の本の中から見つけた一枚の離婚届が物語を引っ張るが、ふたりの成熟した大人のやり取りがいかにも出来合いで、ドキドキしない。★★★

 

日日是好日』(2018年・日本・100分・大森立嗣監督・樹木希林黒木華

 こんなことを言っては申し訳ないのだが、井浦新主演の方の『光』を撮った監督とは思えない。今年見た映画のベスト3に数えられる。別格。

 独特のペースとリズム。脚本もいいし、樹木希林黒木華の演技はほんとうに上質。茶道の世界を描いていて、これ見よがしの高踏的な雰囲気がないのがいい。あまりうまくない鶴見慎吾までいい雰囲気。こういう映画が見られるとは思わなかった。★★★★★

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『鈴木家の嘘』(2018年・日本・133分・野尻克己監督・岸部一徳原日出子

 「長男の死によって巻き起こる家族の混乱と再生を、ユーモアを交えてあたたかく描いたドラマ。鈴木家の長男・浩一が突然亡くなった。そのショックで記憶を失ってしまった母・悠子のため、父・幸男と長女・富美が嘘をつく。それはひきこもりだった浩一が部屋の扉を開き、家を離れ、世界に飛び出していったという、母の笑顔を守るためのやさしい嘘だった。」という惹句と予告編が観客をミスリードしていると思う。

 あちこちにちりばめられたユーモアがそうさせるのだろうけれど、笑いをとろうとしなくても十分にみられる映画。安っぽい笑いを全部カットして、よけいなシーン(これが多い。90分で十分)をつなげれば上質な映画になるのになあと見ながら考えた。

 というのもこの映画「家族の混乱と再生」といった紋切型の「一丁上がり」にとどまらない。

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 突然の家族の自死を残された家族はどう受けとめられるのか、受けとめられないのかというきわめて重い問いをしっかりフィルムの中に刻んでいる。

 自死する加瀬亮演じる浩一の演技はとっても不穏でかつ不可解さが十分に表れていて突かれるものがあった。その死を受け止め切れない父親幸男役の岸部一徳も、セリフより些細な動きでその不安定な感情をよく表現している。妹役の木竜麻生は、人生で初めての死の不条理に混乱する繊細な感情を新体操の演技も含めて全身で表現している。

 母親役の原日出子も、家族の嘘に騙される単なるあっけらかんとした母親ではなく、浩一の自死を自分のものとして受けとめようとする哀切さがあった。随所にみられるセリフのない情景描写も映画全体の雰囲気になじんでいて、盛り上げている。

 暗い映画になってしまうかもしれないが、観客の胸に迫る名画となる可能性があったのではないか。営業を考えれば、こうしたつくりになってしまうこともわかるが、もったいないなと思った。★★★★

 

散歩する侵略者』(2017年・日本・129分・黒沢清監督・長澤まさみ松田龍平

 地球を征服するために降り立った宇宙人が、地球人の感情の概念(例えば家族とか勤労精神とか)をそっくりそのまま奪い取ってしまう、という設定が面白い。人間がどれだけのものに蹂躙され屈託して生きているのかを反転させて見せてくれる。松田龍平、好演。

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残虐な殺人事件に激しい戦闘シーン、どれも作りものっぽいところが丸見えなのがかえっていい。残るのは人間の面倒くささかな?予想に反して楽しめた。★★★

 

『光』(2017年・日仏独合作・102分・河瀨直美監督・永瀬正敏水崎綾女

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 さすがに稀代の名監督、途中まではひきこまれた。常連俳優の永瀬正敏がいい。見えることと見えないこと。視覚を奪われた人間とのかかわりから見えてくるもの・・・。後半、なんだか面倒なことにしてしまったような。眠くなってしまった。

自分好みで言えば、こねくり回して抽象化するよりも、視覚障碍者と健常者との関係、男女の屈折したリアルなシーンが重なっていく方がいいと思った。しかしそれではあまりにストレートか、などと考えながら見た。河瀨監督の演出の力だろう、出ている役者さんたちが皆一味違うなあと思った。★★★★

 

『クリミナル 二人の記憶を持つ男』(2015年・英米合作・113分・アリエル・ブロメン監督・ケビン・コスナー

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 CIAのエージェントのビリーが任務中に死亡した。ビリーは、米国の核ミサイルを遠隔操作するプログラムを開発したハッカー「ダッチマン」の存在を唯一知る男。国際テロ組織も躍起になってダッチマンのあとを追う。CIAは何としてもダッチマンを確保するためにビリーの記憶を生きている人間に移植する手術を検討する。移植先の人間として選ばれたのが、凶悪犯で死刑囚のジェリコ。人間らしい感情をもたないジェリコと知的で愛情深いビリーのふたつの人格がジェリコの中でせめぎ合う。

 SF的な発想で陳腐なものになりがちなところをケビン・コスナーの奥行きのある演技と息もつかせぬアクション、そして観客にさまざまな思考を迫る設定で陳腐にならず、それどころかリアルな物語となっている。おもしろかった。★★★★

 

不能犯』(2018年・日本・106分・白石晃士監督・松坂桃李沢尻エリカ

 松坂桃李はつくりすぎ。沢尻エリカの演技はもうどうにもならない。原作が漫画ということもあるのだろうが、設定がそもそも無理がありすぎる。映画の中に入って行けない。★★

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ペンタゴンペーパーズ』(2017年・アメリカ・116分・原題The Post・スティーブン・スピルバーグ監督・メリル・ストリープトム・ハンクス

「巨匠スティーブン・スピルバーグ監督のもとで、メリル・ストリープトム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした社会派ドラマ。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年、政府がひた隠す真実を明らかにすべく奔走した人物たちの姿を描いた。リチャード・ニクソン大統領政権下の71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズがスクープし、政府の欺瞞が明らかにされる。ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主に就任していた女性キャサリン・グラハムのもと、編集主幹のベン・ブラッドリーらが文書の入手に奔走。なんとか文書を手に入れることに成功するが、ニクソン政権は記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求。新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目にあうことが危惧された。記事の掲載を巡り会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見は対立し、キャサリンは経営か報道の自由かの間で難しい判断を迫られる。」

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 何と言っても脚本が素晴らしいと思う。50年前の再現を70年当時の雰囲気を二人の名優が見事に表現している。説明を省いているので、流れを追うのが私には難しかった。自分の理解力を別にすれば、史実に忠実であろうとすると、かえって物語としてはわかりにくくなってしまうのかもしれない。★★★★

 

『悲しき獣』(2010年・韓国・140分・ナ・ホンジン監督・ハ・ジョンウ/キム・ユンスソク)

 「中国、ロシア、北朝鮮に国境を接する延辺朝鮮族自治州の中国側に住むグナム (ハ・ジョンウ) はある日タクシー運転手の仕事を解雇され、韓国に出稼ぎに行った妻からの送金もない。窮地に瀕したグナムは借金返済のため犬商人で地下社会のボス、ミョン (キム・ユンソク) に持ちかけられた請負殺人の依頼を承諾し、韓国に入る。」(Wikipedia

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 朝鮮族に対する差別については初めて知った。全編荒れた画面と激しいカメラワークが迫力。ひたすら妻と自分を取り巻く事実を追うために韓国内を動き回るグナムのあとを追い続けるサスペンス。途中で、はてこれは何の映画だったっけ?ということもあった。そのぐらいグナム、ミョンの追いつ追われつのアクションが凄い。死んだと思った妻は結局死んではいなかった。細かい部分が、これも理解力不足で追い続けられなかった。★★★

 

ボヘミアン・ラプソディ』(2018年・アメリカ・135分・ラミ・マレック

 ららぽーと横浜で時間がちょうどよかったのでIMAXでみた。大音量だが、クリアで全くうるさくなく愉しめた。

 とにかくこの映画、演奏シーンがすばらしい。圧倒された。

 レミ・マレックという人のフレディのコピーがすごいとは聞いていたが、たしかに。でも、たぶんコピーではない、フレディが家族にメアリーを紹介する場面?でのhappy birthday to meがゾクッとした。フレディの複雑な感情が込められた演技と歌、いいシーンだと思った。

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 音楽のシーンに比して物語の方は、しかし浅い。フレディの出自の問題、家族、とりわけ父親との関係、メアリ―との関係、ポールブレンター、クイーンの挫折と再生、エイズ、どれも中途半端な感じがした。メアリーとの関係はともかく、ポールブレンターとの関係など私にはよくわからなかった。メアリーと付き合っていながらポールに惹かれていくのはどうしてなのか?ポールが悪役の役回りをしているだけにそのへんが全く見えず、そのポールが一つの軸となって後半生の物語が形成されていくが、単純化しすぎているのではないか。フレディの最期を看取ったというジム・ハットンとの関係もそれだけ?取ってつけたような感じを受けた。

 父親との軋轢、葛藤がライブエイドの前に解けたようにも見えたが、父子の間の和解としては安易。ああいうシーンはいらないし、ライブエイドの画面を見ている父親の表情だけでよかったのではないか。

 フレディのもつ破天荒さの裏の突き詰められた孤独のようなものが源泉となって、人とつながられるための音楽が生み出されていくとすれば、表に現れる音楽だけで十分ではないかという気もする。

 

 20年近くも前に友人からもらったフレディのソロアルバム「ベストオブフレディマーキュリー」を引っ張りだしてきて聴いている。★★★★★

 

 

 皆さんにとって2019年が素晴らしい年になることを祈っています。