『坂の上のアポロン』昭和の雰囲気を出そうとしているのに、登場人物がみなあまりに今風。だから映画の中の空気がリアリティを欠いているというか。鼻の奥がツーンとなるようなしみじみとした懐旧、郷愁感は感じられない。久しぶりに残念な映画だった。

10月9日
久しぶりにTSUTAYAへ。見逃している映画を探しに。なんだかレンタル化の回転が速くなっているような気がする。ついこの間みた『ゲティ家の身代金』(5月25日公開)『ザ・スクエア思いやりの聖域』(4月28日公開)が“新作”で出ている。私は本厚木の映画.comシネマや新百合ヶ丘のアートセンター、黄金町のジャックアンドベティなどのいわゆる2番館(今では1.5番館に近いときも)に行くことが多いが、ものによってはここらで上映されるのとほぼ同じような時期にレンタル化されていくようだ。


 しかしこの2本は決して早い方ではない。TSUTAYAの新作のサイトを見ると、8月公開どころか9月公開というものもレンタル化されている。公開1か月でレンタルに。
つくった以上、なんとか資金を回収しなければならないということか。同時にネットの映画サイトにも売ることになるのだろう。
 この日は3本借りた。新作?だから値段も高い。

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 『坂の上のアポロン』(日本・2018年・120分・監督三木孝浩)。新聞の日曜版の「新作DVD紹介」の欄が絶賛。タイトルのセンスの良さもあってつい手を伸ばしてしまった。だまされやすい性格。

 三木監督の作品では『くちびるに歌を』(日本・2015年・132分)を全く期待をしないで時間調整のためにみたのだが、時間もかなり長く酷評が多かったわりに、私は飽きることなく最後まで楽しめた。で、柳の下の泥鰌と思ってみたのだが、正直がっかり。原作は漫画らしいが、ストーリーの流れも設定も通俗的でありきたり。み始めて20分ほどでつれあいと顔を見合わせてしまった。結末まで簡単に見通せてしまうし、実際、ほとんど予想は外れなかった。


 少し楽しめたのは、ジャズのセッションのシーン。文化祭のロックグループの発表の途中で停電が起き、場をつなぐ形で主人公二人がピアノとドラムでセッションするシーン、モーニンなどなつかしい曲。でも演奏はそこそこいいのに、周囲の反応の演出が古臭い。ひねりなさすぎ。演奏が終わるとどこに向かっていくのかわからないが(夕日ではなかった)、ふたりで「走る」のが意味不明。

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 教室での授業中、主人公二人が、かたや机を鍵盤にして叩くのに鉛筆二本のドラムで応じるのもよかった。ただこのシーンも周囲の反応含めてリアリティなし。

 レコード屋の地下(この設定、意外過ぎてすごい)で、中村梅雀のベース、ディーンフジオカのトランペット、そしてドラムとピアノのセッション、これもいいのだが、ディーンフジオカが東京の学生運動から脱落、失意の帰郷中というのがよくわからない。だいたいディーンは大学生には全く見えない。とってもきれいな女の子と再会して二人で東京に?戻っていくのもなんだか。
 もう1シーン。部隊が佐世保なので米兵がよく来るバーのような店で、米兵とけんかになりそうなところで主人公がドラムを叩き始める。周りはなごんで米兵も喜ぶ。なんだかキレがない。
 時代考証としては昭和の雰囲気を出そうとしているのに、登場人物がみなあまりに今風。だから映画の中の空気がリアリティを欠いているというか。鼻の奥がツーンとなるようなしみじみとした懐旧、郷愁感は感じられない。久しぶりに残念な映画だった。
 それでも最後までみてしまったのだたが、中には半分までもみられなかった映画もある。最近では『ミンヨン 倍音の法則』(2014年・日本・140分・監督佐々木昭一郎)。タイトルは素晴らしいが、思い込みを延々と見せられそうで。

野のなななのか』(2014年・日本・171分・監督大林宜彦)。奇を衒いすぎだと思った。

 それもあって大林の最新作『花筐』(2017年・日本)はみていない。檀一雄の原作を読んでみたが、これを大林が撮ると思うとげんなりしてしまった。

 二作ともいい作品だよという方には申し訳ないのだが。

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f:id:keisuke42001:20181012091045j:plain花筐の1シーン