9月の記事

『原民喜 死と愛と孤独の肖像』(梯久美子)生きるために身を売り、文を売るというのではない、書くことそのものが生きることというところまで突き詰めた人生は、読んでいて息苦しくなるほどだ。

梯久美子『原民喜~死と愛と孤独の肖像』(岩波新書・2018)を読んだ。原爆の詩人原民喜の伝記である。 梯の著作は、少し前に『狂う人「死の棘」の妻・島尾ミホ』(2016年)を読んだ。島尾敏雄の妻島尾ミホという人物の、複雑で迷宮のような怪奇さに正面から…

『愛しのアイリーン』リアルではあるのにリアリティはない。常に動いているのにどこか「静」のところがある。不思議な映画だが、印象に残る、なかなか忘れられないという点では、面白い映画だと思う。

前号で書いたように、ひょんなことから『愛しのアイリーン』(日本・2018年・137分・監督吉田恵輔・主演安田顕)をみた。“ひょん”と云っても、いくつかのブログで触れられていて「みよう」と思っていた映画なのだが、評判はいろいろ、『寝ても覚めても』優先…

検察側の罪人、重々しいばかりで、???がひっきりなしに浮かんでくる集中できない映画だった。

ららぽーと横浜TOHOシネマズで『サニー』と『寝ても覚めても』が間1時間ほど置いて二本続けてみられる。『サニー』はともかく『寝ても覚めても』はそれほど集客力があるとは思えない映画だけに、ラッキー。そのあと長津田の行きつけの居酒屋が新規出店したお…

『バーフバリ伝説誕生』(インド・2015年・138分・監督S・S・ラージャマウリ)『バーフバリ王の凱旋』(インド・2017年・141分・監督S・S・ラージャマウリ)を続けてみた。休憩時間を入れて5時間。み始めて1時間も経たないうちに「帰ろうかな」と思った。

『バーフバリ伝説誕生』(インド・2015年・138分・監督S・S・ラージャマウリ)『バーフバリ王の凱旋』(インド・2017年・141分・監督S・S・ラージャマウリ)を続けてみた。休憩時間を入れて5時間。み始めて1時間も経たないうちに「帰ろうかな」と思った。 す…

お彼岸が近づくにつれ、ヒガンバナが増えていくような気がする。23日で昼夜の長さが同じになるが、同じにというよりどんどん日が短くなってきているようだ。

境川河畔にも時々冷たい風が吹くようになった。 河川敷やちょっとした空き地に、気がつくとヒガンバナ(曼殊沙華)が目立つようになった。草が刈り取られたあとに、3~40㌢ほどの高さでまっすぐに細い軸を立てている。白いものもある。ヒガンバナというもの…

リドリー・スコット、81歳。クリストファープラマー89歳。次はどんな映画を撮るのだろうか。

『ゲティ家の身代金』(アメリカ・2017年・133分・原題:All the Money in the World・監督リドリースコット・出演ミシェル・ウイリアムズ・クリストファー・プラマー) 監督リドリー・スコットは今年81歳になる。私が見た彼が監督したいちばん古い映画は『…

今、学校現場に最も欠落しているものは何か。そして必要とされるものは何か。すさまじいスピードからいったん降りて、考えてほしい。そうしなければ現場の“ほうれん草”は腐り続け、K先生の問題のような心ない“事故”が連発されることになる。

7月に東京の労組の通信に書いた原稿が掲載されたので転載する。 テーマは以前にも少し触れたことがある”セクハラ冤罪事件”についてである。 字数の制限があるため、詳細については省いてある(処分当時の詳しい分析について知りたいという方は、雑誌『現代思…

市民としての当事者性の違いと言えばいいのだろうか。徴兵も軍隊もないに越したことはない。しかし、徴兵も軍隊もない“平和”が、戦勝国であるアメリカや、沖縄の犠牲の上にあるとしたら、その“平和”を喜んで享受していいのだろうか、

『30年後の同窓会』(アメリカ・125分・原題:Last Flag Flying 監督リチャード・リンクレイター)をみた。海兵隊の同期の3人の物語だが、しみじみとしたいい映画だ。でも〈同窓会〉というのは違うのではないか。邦題のつけかた、気に入らない。どう訳せばわ…

力士が大型化しているだけに、けがが多いと聞く。朝弁慶に照ノ富士、捲土重来、まさに土煙を巻き上げるように土俵に復帰を期してもらいたいものだ。

大相撲も今日で7日目。なかなかじっくり見ることができない。忙しいわけではないのだけれど、こまごまとしたことに時間を割かれている。幸いにも前半戦はほとんど波瀾はなかったから、後半戦が楽しみではある。 郷土の力士服部桜はというと、今日午前中にす…

今、私たちが即座に現地の様子を映像で見られるのと違って、130年前の明治の人々こうした絵一枚から被災の状況を想像するしかなかった。災害はいったいどんなふうに人々の心に刻まれたのだろうか。

9月8日の最後のところで、横浜・関内ニュースパークの“新聞が伝えた明治―近代日本の記憶と記録”という企画展で見た磐梯山噴火の速報について触れた。 私は、画家山本芳翠が描いた噴火のシーンは、裏磐梯から見たものだと書いた。爆発と言えば裏磐梯と思い込…

“日本勢”とか“日本出身力士”とか言わずに、明確に日本人と言い切ってみること。その時に感じる違和感があれば口にして、互いに矯めつ眇めつ微に入り細に入り、その感性を吟味検討してみることだとあらためて思う。

急に気温が下がった。散歩に出ようとして玄関のドアを開けると微風がひやっと吹き抜ける。久しぶりの感覚だ。深呼吸をする。西の丹沢には厚い雲がかかっているが、北の方に青空がのぞいている。 境川の復路でカワウが羽を広げているのに遭遇。羽ばたくという…

『ザ・スクエア思いやりの聖域』・・・随所に出てくる移民、難民と思われる人々は、歓迎されるべき存在として描かれてはいない。ではどんな人々が歓迎されるべき存在なのか。そもそも歓迎するされるって?

『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年・スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作・原題:“Turist”・118分・監督リューベン・オストルンド)をみたのは3年ほど前になるが、映画の印象は薄れていない。 トマスは妻と二人の子どもとともにフレ…

セリフが少なくて長回しのカメラ、映画の中に流れる空気が穏やかで静かなところがとってもいいと思った。無味無臭のようでいて、気がつくと“ああ、いい匂いだったねえ”という感じ。

遅まきながら『四月の永い夢』(日本・2017年・93分・監督中川龍太郎・主演朝倉あき)をみた。 セリフが少なくて長回しのカメラ、映画の中に流れる空気が穏やかで静かなところがとってもいいと思った。無味無臭のようでいて、気がつくと“ああ、いい匂いだっ…

ボランティアに出掛けられるほどの体力もなく、みていることしかできない身であるが、せめて目をそらさずに気持ちを切らせずにとは思っているのだが。

夕方、少し涼しくなったので、切手を買いに近くのコンビニまで出かけた。コンビニはマンションの敷地内にあるのだが、サンダルを履いてプラプラと歩くと5分ほどかかる。途中、中庭を通る。 数本の百日紅、盛りが終わって花を落としているのに気がついた。そ…

小説『カトク』を読む。コンプライアンスを無視して業績を上げてきたいくつもの会社がどのように法律をすり抜けていくか。それを支える社員、経営者の独特の論理が、城木自身の痛恨の来歴と監督官としての労働実態が重ねて語られるため、単なる勧善懲悪に陥らず、深みのある小説になっている。

新庄耕の『カトク』を読んだ。文庫本で864円はやや高めだが、“文庫書下ろし”であることを考えれば妥当なところかもしれない。 カトクとは厚生労働省に3年前に設置された「過重労働撲滅特別対策班」の略称。配属されるのは労働基準監督官だが、労働条件の是正…

ヴァイオリンとピアノが互いに闘いながら結びつき、これでもかこれでもかと迫力のある音と強い思念がこちらに伝わってくる。

2日、日曜日。 西国分寺の『三百年古民家の温もり りとるぷれいハウス』で佐藤卓史(P)・松本紘佳(Vn.)のデュオリサイタルをつれあいと聴きに行く。 西国分寺へは、最寄りの駅南町田から田園都市線で溝の口、徒歩で武蔵溝ノ口からJR南武線に乗り換えて府…

厳しい環境の中で生きている子どもたちは、この国にもたくさんいる。子どもの貧困率15%というのがこの国の実態だ。さまざまなハザードを抱えながら、親を支えきょうだいを支えて生きていかざるを得ない多くの子どもたち、疲労と無表情が皮膚と心の内部に浸透してしまってそのまま固化している子どもたち。  試されているのは私たち。彼らにどのような思いをもった視線を送ればいいのか。そんなことを考えた映画だった。

8月半ばに、季節はめぐり秋が近づいたなどと記したが、何ということはない、相も変わらず厳しい残暑が続いている。希望的観測という言葉があるが、まさにそれだったようだ。いや早く涼しくなってほしいという熱望的観測であったか。今となっては暑熱に焦が…